社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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降格を実行する時の注意点とは?


2009年8月27日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今日の1分セミナーは

「降格を実行する時の注意点とは?」を解説します。


例えば、部長に抜擢したものの、器不足のため、

課長などに降格させることがあります。


ちなみに、昇格するための基準を定めている会社は多くあります。

しかし、降格についての基準がある会社はそれほどありません。


なぜならば、これは「降格 → 給料の減額 → 法的な問題」

となる可能性があるからです。


当然、根拠無しに「降格、給料の減額」は「法律上」許されません。

だから、この降格の基準を明確にしないとトラブルになるのです。


では、具体的にみてみましょう。

例えば、会社は「期待を込めて」Aさんを

「課長」から「部長」に昇格させました。


しかし、部長となったAさんは期待に応えることができません。

つまり、能力が不足していたのです。

結局、会社はAさんを課長に戻しました(=降格)。

 

ちなみに、この降格は

【ミスをしたための「懲戒処分」としての降格】ではありません。

単なる人事の発令です。


つまり、部長から課長になっただけです。

そして、「役職が下がった = 給料も下がった」にすぎないのです。

 

ここで、参考となる判例をご紹介します。

<星電社事件 平成3年3月 神戸地裁>

○ 社員が成績などを理由に「部長職」から「一般職」に降格された

○ 納得いかないと主張

○ 「降格の無効」と「減額された給料の支払い」を求め、裁判


結果として、裁判所の判断は

○ 成績の不良などで人事権を実行するのはOK

○ 役職の変更に伴い、それ応じた給料となるのもOK

として、社員の訴えを退けたのです。


つまり、

○ 人事権としての降格はOK

○ 役職による給料の減額もOK

としたのです。 

 

ここでの大きなポイントは

降格が「懲戒処分なのか」、「人事権の行使なのか」ということです。


ちなみに、言葉の定義は

○ 懲戒処分・・・懲戒事由に該当し、制裁として降格

○ 人事権の行使・・・会社が人事を発令して降格(=単なる異動)

となります。


もちろん、懲戒処分としての降格をするには、

就業規則での根拠(=降格の基準)が必要です。

そして、これに該当すれば、制裁として発動するだけのことです。


逆に、人事権の行使をする場合、

社内規定(=人事制度)に人事権の行使をするルールが必要です。


それは、

○ 業務内容と給料をリンクさせる

○ 役職に対する業務内容を明確にする

ということです。


具体的には、

「部長職・・・月給50万円」ではなく、

「部長職・・・月給50万円(基本給35万円、部長手当15万円)」

とするのです。


こうすれば、降格時に下がる給料が「部長手当分」となるのです。


さらに、職務を明確にすることも必要です。

具体的には、

○ 何が部長の仕事なのか

○ 何をすれば、職務を全うすることが出来るのか

ということを明確にしておくのです。

 

いかがでしょうか。

皆さんの会社では「降格に関する基準」を定めていますか?

ここは多くの会社で定めていない部分になります。


しかし、現実問題としては

「部長にしたけど、その器ではなかった」ということはよくあります。


もちろん、これを放置したら、組織のバランスに影響します。

だから、言いにくいとしても、実行せざるを得ない場合もあるのです。

 

いつもは就業規則の話を解説していますが、

社内規定としての人事制度も【法律上の根拠】となります。

だから、ここも整備しないといけないのです。

 

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