社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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キャリア採用した社員が能力不足で、解雇したいなら?


2010年6月24日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「キャリア採用※した社員が能力不足で、解雇したいなら?」を解説します。


※ キャリア採用とは

○ 管理職の採用

○ 特別な技術、資格のある技術者などの採用

○ 実績のある営業職

などで、一般採用よりも給与の高いものを指します。

 

これに関して、ある社長から次のご相談を受けました。

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経理部長を採用したのですが、期待したスキルがありません。

解雇したいのですが、できるのでしょうか?
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キャリア採用の社員は「即戦力」として採用されます。


しかし、

「期待したほどの戦力ではなかった」

「スキルが低いのに気がつかず、入社させてしまった」

などの声をよく聞きます。


例えば、部長職を採用するならば、

一般社員レベルの人物を採用することはあり得ません。


しかし、実際に仕事をさせてみたら、

そこまでの能力は無かったということもよくあります。

 

しかし、「即戦力」の基準というものは不明確であり、

その捉え方には主観も入ります。


「即戦力」に関して明確にできる部分の基準でも

明確にしていない会社も多いでしょう。


だから、「期待したほどではなかった」という主観だけでは、

当然に解雇はできません。


合理的な解雇でなければ、不当解雇となります。 


だからこそ、最低でも「期待する基準」を明確にしておくべきですが、

具体的にはどうしたらいいのでしょうか?

 

新卒採用や一般採用では見られませんが、キャリア採用の場合、

○ 肩書き

○ 職種

○ 責任の範囲

などを「詳細に」決めて、雇用契約を結ぶ必要があります。


なぜならば、トラブルになった場合、

この基準の範囲で期待値を満たせたかどうかがポイントになるからです。

 

たとえば、下記の判例があります。


<フォード自動車事件 東京高裁 昭和59年3月>

○ 人事経験の長い社員が人事本部長として採用された

○ 業務のレベルが極めて低く、就業規則の解雇理由に該当と判断

○ 人事本部長としての採用なので、解雇した

○ 社員は「不当解雇だ」として訴えた

○ 東京地裁は「解雇権の濫用にあたらない」と会社が勝訴

○ 社員は上告した


そして、高裁の判断は

○ 他の職種、または、下位のポストに配置換えをする必要無し 

○ 肩書きに応じた業務レベルかどうかという基準でOK

として、「解雇を有効」とし、第二審も会社が勝訴したのです。

 

これと似た判決もあります。


<持田製薬事件 東京高裁 昭和62年8月>

○ マーケティング部長として採用

○ 勤務状況、勤務態度がマーケティング部長のレベルではないと判断

○ 会社は解雇し、本人は裁判所に訴えた

○ 東京地裁、東京高裁ともに「解雇は有効」と判断


ちなみに、後者の判決でも

○ 他の職種、または、下位のポストに配置換えをする必要無し 

○ 肩書きに応じた業務レベルかどうかという基準でOK

ということを判断根拠としました。

 

これが一般採用ならば、「能力が期待値に届かない」という理由で、

「いきなり解雇する」ことはできません。


まずは、降格、配置転換などによる段階を踏むことが必要になります。


しかし、キャリア採用の場合は「いきなり解雇する」ことができるのです。

判例もこの考え方を支持しています。

 

最初の「経理部長にスキルが無かった場合の解雇」

というご質問に戻りましょう。


この会社は一般採用もキャリア採用も同じ雇用契約書を使用していました。


つまり、「肩書き」「職種」「責任の範囲」を

明確にしていなかったのです。


「経理部長として期待するスキル」が不明確だったのです。

これは「労働契約違反かどうか」が不明確ということなのです。 

 

もし、この会社が経理部長をいきなり解雇すれば、

不当解雇と言われる可能性があります。


だから、この会社は下記の段階を踏む必要があります。

(1)最初に話し合い、期待している業務レベルを明確にし、伝える

→ 「肩書き」、「職種」、「責任の範囲」を書面にして渡す


(2)様子を見る期間を設ける


(3)業務レベルの改善が無ければ、降格、配置転換

→ 一般的には、この段階で自主的に退職することが多い  


(4)就業規則の解雇事由に該当するレベルならば、解雇

 

この会社はキャリア採用と一般採用につき、

同じ契約書を使用していました。


だから、キャリア採用の人が期待値に届かなくても

○ いきなり解雇できない

○ 一般職と同じように段階を踏まなければ解雇できない

○ キャリア職としての高い給料を支払い続けなければならない

となってしまうのです。

 

だから、特別な人(=給料の高い人)を採用する場合には、

きちんと雇用契約書を分けておく必要があるのです。


そして、そこに「肩書き」「職種」「責任の範囲」を

明確にしておく必要があるのです。

 

経歴がどんなにすごくても仕事は実際にやらせてみないと分かりません。

前の職場でも肩書きは高くても、使えなかった可能性もあります(重要)。


しかし、多くの会社が

○ 形式で判断し、失敗している

○ 雇用契約書も分けていない

という状況の中で苦しんでいるのです。


こういう事態に陥らないためにも、

キャリア採用する雇用契約書は分けておくべきなのです。


どんな会社でも管理職、資格者などを採用することがあります。

こういう場合はご注意下さいね。

 

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