社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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アルバイト禁止と懲戒処分の基準


2010年7月15日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「アルバイト禁止と懲戒処分の基準」について解説します。


最近、次のご質問がありました。

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ここ数年、わが社では昇給はなく、賞与も縮小ぎみです。

そのため、会社に無断で土日にアルバイトをする者がいます。


当社の就業規則では「会社の承認を得ないで他に就職」すると、

懲戒処分の対象になる旨の規定があります。


この者に解雇などの懲戒処分をすることができますか。
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不景気の影響もあり、複数の職業を持つ人もいます。

実際に、このようなご相談は複数の会社から頂きます。


多くの会社では、兼業を禁止していますが、

これは法律で禁止されているわけではありません。


法律ではなく、就業規則等で禁止しているのです。

ただし、公務員は国家公務員法、地方公務員法で兼業が禁止されています。

 

そのため、アルバイト等の兼業を禁止するなら、

就業規則には次のように記載をする必要があります。

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従業員は以下に掲げる業務専念義務に関する事項を守らなければならない。

○ 会社の事前の許可なく、他社に雇用されるなど、

報酬を得て第三者のために何らかの行為をしないこと。

ボランティアなどの公益的行為であっても、

会社の勤務のための精力が分散されると認められるときは、

会社の事前の許可を得なければならない


○ 会社の事前の許可なく、勤務時間中に政治活動、宗教活動、

業務に関係のない放送、宣伝、集会、又は文書画の配布、回覧、

掲示その他これに類する活動をしないこと。


○ 勤務時間中は許可なく職場を離れ、若しくは責務を怠る等の行為

をしないこと
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最近は労働時間の短縮や厳しい雇用状況の下、

社員の生活防衛から副業やアルバイトなどを認める企業もあります。

しかし、まだまだ少数です。


大半の会社は兼業は「禁止」または「許可制」にしています。


そこで、就業規則で兼業を禁止したり、

許可したりする場合の規定の効力が問題となります。

 

そもそも、なぜ兼業が禁止なのかというと


○ 精神的、肉体的な疲労回復の妨げ

→ 慢性的な疲労があると、良い仕事ができない


○ 会社の経営秩序の問題

→ ライバル会社と掛け持ちで仕事をされたら、情報が流出してしまう


などの理由からです。

 

これに関して、参考となる判例を2つご紹介します。


<永大産業事件 大阪地裁 昭和32年11月>

○ 守衛として勤務する社員が匿名で別の会社に勤務

○ 二重就労が発覚し、会社は懲戒解雇

○ 就業規則では、兼業は「禁止」と記載

→ 懲戒処分の対象になる(ひどい場合は解雇)

○ 解雇され、社員は「不当解雇」と裁判を起こした


そして、裁判所の判断は

○ 二重で働くことで疲労が蓄積する

○ 疲労が蓄積すると、就業時間内での健康面でのリスクがある

→ 就業時間内に倒れるなどのリスクがある

→ このリスクが高いと、会社が補償する義務の負担も高まる

ということで「解雇は有効」としたのです。

 

<小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月>

○ 勤務時間「外」にキャバレーで働いていた社員が解雇された

○ 就業規則では、他社での勤務は「許可」が必要と記載

→ 懲戒処分の対象になる(ひどい場合は解雇)

○ 解雇され、「解雇は無効」と裁判に

という状況です。


そして、裁判では

○ 就業規則に記載された「許可制」は妥当

○ キャバレーでの勤務はアルバイトの域を越えるもの(長時間)

とし、「解雇は有効」となりました。

 

前者の判例では、

○ 就業規則に「兼業禁止」が定められていたこと

○ 社員の健康面からの、社員自身のリスク

○ このリスクが実現したときの会社のリスク

を根拠に「解雇は有効」と判断されたのです。


後者の判例では、

○ キャバレーでの勤務は会社の対外的信用を落とす可能性がある

○ 日中の業務に支障が出る可能性もあり、会社の秩序が保てない

を根拠に「解雇は有効」と判断されたのです。

 

ただし、注意点があります。

判例は、就業規則に定めた兼業禁止の効力を認めつつも、

これに制限を加えています。


なぜなら、勤務時間外の行動はプライベートであり、

本来は自由だからです。


したがって、就業規則を形式的に考えると懲戒処分の対象であっても、

○ 職場秩序に影響していない

○ 業務に特別の支障が出ない程度のもの

であれば、懲戒処分の対象にはならないのです。


だから、就業規則にどんなにがっちり書いておいても、

最終的には、「軽度の兼業はOK」となってしまうのです。


つまり、程度問題なのです。

 

最初のご質問に戻ります。


土日のアルバイトが長時間で業務に支障が出ていれば、

懲戒処分の対象となる可能性があります。


しかし、単発のアルバイト、土日のどちらかで「数時間程度」であれば、

懲戒処分の対象とするのはやり過ぎでしょう。


「何時間程度ならOK」という基準はありませんが・・・。

 

さらに、注意するポイントがもう1つあります。

それは働く会社が違っても、労働時間は通算されるということです。


例えば、

○ A社での労働時間・・・8時間

○ B社での労働時間・・・3時間

となっていた場合には注意が必要です。


なぜならば、B社は

【A社での就業時間を加味した残業手当】

を計算しなければならないのです。


これをご存じない方は多いので、覚えておいて下さいね。 

 

このように、兼業については色々と面倒なこともあります。


禁止する場合、許可する場合、

色々なことを事前に想定して、就業規則などを作る必要があるのです。


ただし、大切なことは形式ばかりではありません。


○ 法律などによる正しい知識を就業規則などに反映させること(形式)

○ 現実の職場では、形式を離れた視点からも考えること(運用)

が大切なのです。


多くの会社は「形式」を整えることに注力し過ぎています。


もちろん、これは「リスク回避」という意味では重要なのです。


しかし、「就業規則を作れば、どういう状況でも会社を守れる」と 

勘違いされている方も多いのが現実です。


そうではありません。

形式を整えることはレッスン1で、

本当に大切なのは、運用というレッスン2以降なのです。


これを理解せず、就業規則だけを整えるということは意味が無いのです。

覚えておいて下さいね。

 

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