社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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アルバイトをしている社員を解雇できるか?


2011年2月15日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「アルバイトをしている社員を解雇できるか?」を解説します。


これは以前にもお伝えした内容ですが、今日は別の角度からお話しします。


ある社長から

「社員がアルバイトをしているのですが、解雇できませんか?」

とご質問がありました。


この件について詳しくみてみましょう。


まず「アルバイト = 二重就職」となります。

しかし、二重就職は「一般の会社では」法律で禁止されていません。


これに対して、公務員は

〇 職務に専念する義務

〇 民間企業からの隔離

という意味から副業が法律で禁止されています。


とはいえ、多くの民間企業でも二重就職を禁止しています。

これは公務員と同じで「職務に専念して欲しい」ということです。

 

そして、二重就職を禁止するには就業規則に記載する必要があります。

具体的には以下の条文となります。
-----------------------------------------------------------------------
従業員は、以下に掲げる業務専念義務に関する事項を守らなければ

ならない。

〇 会社の事前の許可なく、他社に雇用されるなど、報酬を得て第三者

  のために何らかの行為をしないこと。

〇 ボランティアなどの公益的行為であっても、

  会社の勤務のための精力が分散されると認められるときは、

  会社の事前の許可を得なければならない
-----------------------------------------------------------------------

また、解雇する場合は上記の条文とは別に、

懲戒処分の規定を明確にしないといけません。


しかし、明確にさえしてあれば、いきなり解雇できるのでしょうか?


例えば

〇 実家が農家の場合、稲刈りなどの繁忙期に手伝う

〇 業務終了後、スーパーでアルバイトをする

などのケースで、すぐに解雇はできるのでしょうか?

 

二重就職が解雇に該当するかどうかの基準は

(1)労務提供義務

(2)競業避止義務

(3)秘密保持義務

のいずれかを破った場合に解雇が可能です。


それでは、順番にみていきましょう。

(1)労務提供義務の違反

これは他社で働くことにより、

肉体的、精神的疲労で自社の業務に影響が出ることを指します。

そして、この違反での解雇は有効となる可能性が高くなります。


これに関連する判例として、次のものがあります。

<小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月>

〇 同社の社員がキャバレーの会計係をしていた

〇 キャバレーの仕事は夜間のため、昼間の業務に支障が出た

〇 就業規則の二重就職禁止に違反ということで解雇

〇 本人はこれを不服として、裁判所に訴えた


結果は「就業規則の二重就職禁止による解雇は有効」となりました。


これは業務に支障が出るかどうかが基準となるので、

裁判になったら、具体的な支障の記録※を残しておく必要があります。

※ 居眠りの回数、日時などの記録

 

(2)競業避止義務の違反

競業避止は同業他社での二重就職を禁止することを指します。


この趣旨は同業他社の見積書を見れることなどにより、

個人的な利益につなげないようにすることです。


これに関連する判例として、次のものがあります

<東京貨物社事件 東京地裁 平成12年11月>

〇 ある社員Aが在籍中に別会社の取締役になった

〇 その別会社はAが在籍する会社と同業

〇 会社はその事実をつかみ、就業規則により解雇した

〇 社員は不当だと裁判所に訴えた


結果は「解雇は有効」とされたのです。


また、同様の事件として「積水ハウス事件 平成12年11月」

などもあります(会社側が勝訴)。

 

(3)秘密保持義務の違反

二重就職により自社の秘密がもれた場合も解雇は可能です。

当然ですが、社員には業務上の秘密を守る義務があります。


この義務を破ったことで解雇され、

「不当だ」と争いになった裁判はいくつもあります。


ただし、下記の例のように会社の勝訴となっています。

○ 古河鉱業事件 東京高裁 昭和55年2月

〇 延岡学園事件 宮崎地裁 平成10年6月

〇 甲南学園事件 大阪高裁 平成10年11月

 

このように、3つのポイントの【いずれか】に該当すれば、

解雇も可能になるのです。


しかし、ご質問のように

「単に別の会社でアルバイトをしている」だけでは解雇は難しいのです。


正しい手順を踏まずに解雇した場合、不当解雇になる可能性もあります。 


もし、二重就職の問題が発生したら、

なぜ、2つの会社で働いているのか※を確認しましょう。

※ 金銭的な問題なのか? 家庭の事情なのか?など


そして、会社は本人の状況を確認することが重要です。


しかし、「アルバイトをしている奴はクビだ」

といきなり言ってしまう社長が多いのも事実です。


これは無用なトラブルを【自ら】起こしているようなものです。


もし、

○ 労使トラブルに発展

○ 上記3つのいずれにも該当しない状況

ならば、「不当解雇」となり、会社が負けてしまいます。


だから、まずは状況確認をし、解決策を話し合うことが重要なのです。

 

ちなみに、不当解雇となった場合、

○ 精神的苦痛などに対する損害賠償金

○ 解雇されていなかったとしたら、もらっていたはずの給与

→ 当然ですが、働いていないので未払いとなっています。

を会社は支払うことになります。


正直、ここは「大きな金額」になるので、

二重就職に限らず、解雇には十分すぎるケアをすべきなのです。


特に、不況の影響もあり、

アルバイトしないと生活できないなどのケースも多くなっています。


今日のテーマは時代を反映した問題だけに覚えておいて下さいね。 

 

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