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2011年2月10日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「不祥事を起こした社員の給料を減額する方法」を解説します。
先日、ある社長から電話が入りました。
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情報漏えいをした社員がいますが、
懲戒処分として、6ヶ月の給料を10%減額したいと思います。
具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
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私は社長に
○ 6ヶ月、10%の減額はできません
○ 法律では、1ヶ月のみで10%減額が上限です
とお伝えしました。
しかし、社長は「報道でよく〇ヶ月〇%減給と報道されていますよね」と
さらに質問をされました。
情報漏えいに限らず、不祥事があった場合、
懲戒処分として減給されることは仕方がありません。
しかし、その運用には法的な注意点があるのです。
これはよく頂くご質問で、誤解の多いところでもあるので、
この部分を整理していきましょう。
例えば、会社そのものが不祥事を起こした場合、
社長や担当役員などが報酬を返上するケースがあります。
このときに「〇ヶ月〇%減給」という報道を耳にします。
これは会社の不祥事に対して、
経営陣が世間に責任を示すために【自ら】報酬を返上しているのです。
だから、これは懲戒処分としての減給ではないのです。
また、公務員が不祥事を起こした場合も、
「〇ヶ月〇%減給」という処分をよく聞きます。
国家公務員法、地方公務員法では、
懲戒については人事院規定に定めるとしています。
これによると減給の制裁は
〇 1年以下の期間(月単位)
〇 月額の5分の1以下
から減らすことができるとされています。
だから、公務員の場合は「1年間、20%カット」までは可能なのです。
しかし、一般の会社ではこのような減額は【法的に】許されません。
なぜなら、労働基準法91条に減給の上限が
下記のように定められているからです。
〇 減給1回の額 ≦ 1日分の賃金×1/2
→ 例:1回の遅刻につき、0.5日分の減額
かつ、
〇 1ヶ月の減給の総額 ≦ 1ヶ月の賃金×1/10
となっていなければならないのです。
ただし、ここで注意することがあります。
それは「事前に」遅刻した場合の減給の規定(懲戒処分)を
就業規則で明文化しておかないといけないということです。
具体的には以下となります。
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(制裁の事由)
第〇条 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、情状に応じ、
譴責(けんせき)、減給、出勤停止又は降格降職とする。
(1)正当な理由なく欠勤をしたとき
(2)正当な理由なくしばしば遅刻、早退し、又はみだりに任務を離れる等
誠実に勤務しないとき
(3)故意に社内の重大な情報を外部に漏らしたとき
(以下、省略)
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このように制裁を明文化しておかないと、
「どんな懲戒処分でも実施できない」のです。
しかし、減給が「1月のみ、最大10%」ということに
不満を持つ社長も多くいらっしゃいます。
「どんなに大きな不祥事を起こしても減額10%では、再発防止にならない」
という意見が多いのも事実です。
ただし、就業規則の懲戒処分の規定をよく見ると、
懲戒処分が「軽いもの」から「重いもの」まで記載されているはずです。
本来はそこできちんと保全されているはずです。
しかし、中には下記の記載がもれている就業規則もよくあるので、
注意が必要です。
特に、(4)が抜けていることが多いので、ご確認くださいね。
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(1)譴責(けんせき):始末書を提出させ、将来を戒める。
(2)減給:始末書を提出させて、減給する。
ただし、1回につき平均賃金の1日分の半額、
総額においては一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えない範囲
でこれを行う。
(3)出勤停止:始末書を提出させ、7日以内の出勤を停止する。
その期間の賃金は支払わない。
(4)降格降職:資格等級の引き下げもしくは役職を解く。
この場合、労働条件の変更を伴うことがある。
(5)論旨(ゆし)解雇:懲戒解雇相当の事由がある場合で、
本人に反省が認められるときは退職願を提出するように勧告する。
ただし、勧告に従わないときは懲戒解雇とする。
(6)懲戒解雇:予告期間を設けることなく即時解雇する。
この場合において、所轄労働準監督署長の認定を受けたときは、
予告手当を支給しない。なお退職金も同様とする。
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だから、「減給では処分が軽すぎる」と思われるならば、
次の段階の「出勤停止」や「降格降職」の処分とするのです。
金額のみにフォーカスするのではなく、もっと大きく考えるのです。
もちろん、程度によっては、解雇に発展する場合もあるでしょう。
たとえば、それが1回でも犯罪などのレベルであれば、
解雇に該当することもあるでしょう。
繰り返しになりますが、懲戒処分を実施する場合、
「就業規則に規定が明文化されていること」が重要です。
また、明文化されていたとしても、
その処分の内容にモレがあることもあるのです。
この懲戒処分の規定は
○ 大きく考える部分
○ 緻密に考える部分
の両方が保全されていないと不完全なのです。
ここが不完全な就業規則もあるので、
皆さんはもう一度見直してみてください。
書かれていない処分は科すこと自体ができません。
たとえば、上記(4)の降格降職の規定が無い場合、
不祥事に伴って降格したら、「不当だ」と訴えられる可能性もあります。
この場合、「規定が無いので不当な降格」という判決になる可能性もあります。
たかが、1文。
されど、1文。
たった1つの文章が会社の命運を大きく分けることもあるので、
ご注意くださいね。
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