社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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中途採用した管理職が能力不足だったら


2011年10月 6日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、内海です。


総務省が9月30日に発表した労働力調査によると、

8月の完全失業率は4.3%となりました。


これは前月に比べて0.4ポイント改善された数字です。


失業率の低下は3カ月ぶりですが、

決して景気が好転しているわけではありません。


この数字は一時的に職探しを見合わせる人が増え、

ハローワークの登録者数が減ったからです。


どんな統計数字も同じですが、物事の1面だけを表している場合もあります。


単なる数字を追うだけなく、

それが「どのように計算されているか」を考えることが大切です。


マスコミでも表面上の数字だけで議論がされていることもありますが、

これが世論を作ると思うと怖い面もあります。


1人1人が意識をもって数字を考えることが大切ですね。  

 


では、1分セミナーにいきましょう。

今回は「中途採用した管理職が能力不足だったら・・・」を解説します。


〇 新しい部署を作るために、外部から責任者を採用したい

〇 営業部の部長が退職したので、営業経験者を採用したい

という話はよくあります。


しかし、実際に働いてみないと能力は分かりません。


前の会社で華やかな実績があっても、

次の会社で同じパフォーマンスが出せるとは限りません。


その理由は

〇 会社の看板があったから成果が出ていた

〇 自分の力と会社のブランドを混同していた

〇 退職後、自分が担当していた顧客が離れてしまった

〇 商品が違うため、販売方法が異なっている、商品知識が足りない

などがあります。


中には「あまりにも期待はずれだったので、辞めてもらいたい」

というご相談も【よく】あるのです。


もちろん、大手企業ならば他の部署へ配置転換、出向などの方法もあります。


しかし、中小企業では配置転換したくても、

転換する部署がないということもあります。


また、

○ 管理職で採用された社員をいきなり降格することは厳しい

○ そのまま雇っていては費用倒れになってしまう

ということもあります。


だから、「管理職を解雇したい」となるのですが、

解雇する場合には注意すべきことがあります。

 


最初のポイントは「雇用契約時の約束」と「就業規則の解雇規定」です。


具体的には、

〇 管理職としてどのような仕事に就くのか(雇用契約)

〇 会社が期待している業務内容や売上を明示しているか(雇用契約)

〇 解雇理由として、業務に対する能力不足を規定しているか(就業規則)

がポイントとなります。


漠然と「管理職として採用する」と契約してしまうと、

能力不足かどうかの基準が難しく、解雇も難しいでしょう。


だから、上記3つのポイントを明確にし、

期待に応えられているかどうかの判断基準とするのです。


そして、就業規則の解雇理由に該当するかをみるのです。


これに関して参考となる裁判があります。

<持田製薬事件 東京地裁 昭和62年8月> 

〇 会社は新設のマーケティング部の部長を探していた

〇 人材紹介会社からA氏を紹介され、採用した

〇 A氏はこの責任者としての資質、実力が欠如していた

〇 会社はA氏を解雇した

〇 A氏は解雇無効を訴え、裁判所に訴えた


そして、裁判所の判断は

(1)雇用契約書に肩書きを明示し、それに応じた業務が記載されている

(2)解雇理由が就業規則に明記されている

具体的には、雇用し続けられないやむを得ない事情がある場合は

解雇理由に該当する旨が記載。

(3)A氏は上記(1)の業務ができていない

と判断し、解雇は有効としたのです。


裁判所はA氏は部長職の能力がないので、

(2)により、「雇用の継続が不可=解雇は有効」としたのです。


つまり、会社が勝ったのです。


もう少し詳細をみると、

○ マーケティングプランの策定や販売方法の提言などを全く行っていない

○ この努力をした形跡もない

としています。


業務ができないという結果だけでなく、

その前段階の努力をしたかどうかまでもが判断材料となっているのです。

 


もう1つ、この裁判と似た判決があります。

<エイゼットローブ事件 大阪地裁 平成3年11月>

〇 同じ業界の営業経験者を部長として採用

〇 本人と年間売上目標1億円、半期売上目標5千万円を採用時に確約

→ 設定数字は経験者なら達成可能な数字

→ 目標数字は雇用契約書には書かれていないが、採用面接時の書類に記録あり

〇 実質が大きく下回ったので、会社は解雇した

〇 本人が解雇無効を裁判所に訴えた


この裁判でも「解雇は有効」と判断しました。


この理由は

〇 売上目標を確約し、採用したが、本人の責任で達成できなかった

〇 会社は解雇する前に注意指導しているが、本人に改善する意欲がない

〇 就業規則に解雇に関する根拠の規定があった

→ 勤務成績、能力不足で就業に適さないと認められた場合は解雇する

ということでした。

 


これらを踏まえて言えることは

〇 採用時の雇用契約書、雇用契約時に約束(記録)したことが重要

→ どんな業務を担当するか、最低限の売上、利益など


〇 就業規則に解雇の理由を記載する

→ 担当業務が能力不足でできない場合は解雇する


〇 業務に対する努力の有無

が判断材料となるということです。

 


もし、皆さんの会社で管理職の採用をお考えなら、

今回のメルマガは絶対に覚えておいてください。


繰り返しになりますが、

大切なことは雇用契約書の整備、就業規則の整備です。


この部分が適正かどうかで「解雇が有効かどうか」が決まります。

ここは大切な部分なので、覚えておいてくださいね。

 

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取締役・社労士 内海正人(うつみまさと)
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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記

先日、ある会議に出席するためにゆりかもめに乗って有明にいきました。

新橋から片道約25分の旅でしたが、

海を越えるのでちょっとした「非日常」を味わいました。


レインボーブリッジや東京ビッグサイトなど、特徴あるものが多いですね。


その様子をブログにアップしましたので、ご覧下さい。

http://ameblo.jp/utsumisr/entry-11038903567.html


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