社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

労働問題のご相談、労使トラブルのご相談なら 東京都 港区の社会保険労務士 内海正人

懲戒処分を実施する時のポイント


2011年10月13日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。


昨日の報道で「厚生年金の支給年齢が上がるかもしれない」

と報じられていました。


これは政府の社会保障審議会年金部会での議論で取り上げられた事です。


年金支給の問題は

「いつまで働くことができるか?」ということに言い換えられます。


つまり、「年金問題=雇用問題」でもあるのです。


しかし、経済が伸びていない状況で

企業が雇用を拡大することは厳しいことでもあります。


また、単に「財源が厳しいから支給を伸ばす」という考えでは、

国民は納得しないでしょう。


ただ、一方で厚生年金の加入義務があるのに

加入していない事業所もあります。


この未加入の事業所が全て加入すると、

5兆円の社会保険料の収入増になる試算もあります。


年金問題であれ、増税問題であれ、

負担増の話ばかりが先行することがよくあります。


ただし、こういう議論は社会保険料の話に限らず、

少子化や高齢化の社会問題も含めて、総合的に考えて進めるべきですね。


たとえば、現在50歳の人は10年経ったら、確実に60歳になります。 


だから、10年後、20年後、30年後の日本の人口分布は

一定年齢以上に関しては【確実に】分かっているのです。


だから、この人口分布の動向も考えて、

今後のビジネスの方向性を探ることが本当に重要です。


ゆで蛙的に目の前の売上、資金繰りにとらわれていることもありますが、

中長期的に考える視点も大切なのです。


ここは全てにおいて大切な部分なので、覚えておいてくださいね。

 


では、1分セミナーにいきましょう。

今回は「懲戒処分を実施する時のポイント」を解説します。


〇 社員が仕事で大きなミスをしたので懲戒処分にしたい

〇 社員が言うことを聞かないので、懲戒解雇にしたい

このようなご相談はよくあります。


しかし、実際に懲戒処分を実行するには、

いくつものハードルがあるのです。


1、まず重要なことは、

就業規則に「懲戒の種類と内容」が記載されていることです。


逆に言えば、

〇 就業規則を作っていない

〇 就業規則があっても懲戒規定が大まかである

〇 懲戒の種類が明確でない

〇 懲戒の内容が時代に合っていない(例:情報漏えい等) 

などの場合は、懲戒処分を科したくてもできないのです。


こういう場合は詳細な就業規則を新たに作成する、

または、加筆することが必要です。


具体的な条文は下記となります。


長いですが、当社のひな型で使用しているものなので、

ご参考になさってくださいね。

-----------------------------------------------------------------------
(制裁の種類)

第〇条 制裁の種類は、その情状により次のとおりとする。

(1)譴責(けんせき):始末書を提出させ、将来を戒める。

(2)減給:始末書を提出させて、減給する。

   ただし、1回につき平均賃金の1日分の半額、総額においては

   一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えない範囲でこれを行う。

(3)出勤停止:始末書を提出させ、7日以内の出勤を停止する。

   その期間の賃金は支払わない。

(4)論旨解雇:懲戒解雇相当の事由がある場合で、

   本人に反省が認められるときは退職願を提出するように勧告する。

   ただし、勧告に従わないときは懲戒解雇とする。

(5)懲戒解雇:予告期間を設けることなく即時解雇する。

   この場合において、所轄労働準監督署長の認定を受けたときは、

   予告手当を支給しない。


2 会社が制裁を行うときは、処分の内容、非違行為、

  制裁の事由等を書面で労働者に通知する。


(制裁の事由)

第〇条 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、

情状に応じ、譴責、減給又は出勤停止とする。

(1)正当な理由なく欠勤をしたとき

(2)正当な理由なくしばしば遅刻、早退し、

   又はみだりに任務を離れる等誠実に勤務しないとき

(3)過失により会社に損害を与えたとき

(4)虚偽の申告、届出を行ったとき

(5)重大な報告を疎かにした、又は虚偽の報告を行ったとき

(6)職務上の指揮命令に従わず職場秩序を乱したとき

(7)素行不良で、会社内の秩序又は風紀を乱したとき
   
  (セクシュアルハラスメントによるものを含む。)

(8)会社内で暴行、脅迫、傷害、暴言又はこれに類する行為をしたとき

(9)会社に属するコンピュータ等、電子メールその他の備品を無断で

   私的に使用したとき

(10)過失により会社の建物、施設、備品等を汚損、破壊、

   使用不能の状態等にしたとき。

(11)会社及び会社の従業員、又は関係取引先を誹謗若しくは中傷し、

   又は虚偽の風説を流布若しくは宣伝し、会社業務に支障を与えたとき

(12)会社及び関係取引先の秘密及びその他の情報を漏らし、

   又は漏らそうとしたとき

(13)職務に対する熱意又は誠意がなく、怠慢で業務に支障が及ぶと

   認められるとき

(14)職務の怠慢又は監督不行届きのため、災害、傷病又はその他の事故を

   発生させたとき

(15)職務権限を越えて重要な契約を行ったとき

(16)信用限度を超えて取引を行ったとき

(17)偽装、架空、未記帳の取引を行ったとき

(18)部下に対して、必要な指示、注意、指導を怠ったとき

(19)部下の、懲戒に該当する行為に対し、監督責任があるとき

(20)第〇章(服務規律)に違反したとき

(21)その他この規則及び諸規程に違反し、又は非違行為若しくは

   前各号に準ずる不都合な行為があったとき

2 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、

  論旨解雇又は懲戒解雇に処する。

  ただし、情状により減給又は出勤停止とする場合がある。

(1)正当な理由なく、欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じない

   又は連絡が取れないとき

(2)正当な理由なくしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、

   再三の注意を受けても改めないとき

(3)正当な理由なくしばしば業務上の指示又は命令に従わないとき

(4)故意又は重大な過失により、会社に重大な損害を与えたとき

(5)重要な経歴を偽り採用されたとき、

    及び重大な虚偽の届出又は申告を行ったとき

(6)重大な報告を疎かにした、又は虚偽報告を行った場合で、

   会社に損害を与えたとき又は会社の信用を害したとき

(7)正当な理由なく配転・出向命令等の重要な職務命令に従わず、

   職場秩序を乱したとき

(8)素行不良で、著しく会社内の秩序又は風紀を乱したとき

   (セクシュアルハラスメントによるものを含む。)

(9)会社内で暴行、脅迫、傷害、暴言又はこれに類する重大な行為

   をしたとき

(10)会社に属するコンピュータによりインターネット、電子メール等を

   無断で私的に使用して猥褻物等を送受信し、

   又は他人に対する嫌がらせ、セクシュアルハラスメント等

   反社会的行為に及んだ場合

(11)故意又は重大な過失によって会社の建物、施設、備品等を汚損、

   破壊、使用不能の状態等にしたとき。

(12)会社及び会社の従業員、又は関係取引先を誹謗若しくは中傷し、

   又は虚偽の風説を流布若しくは宣伝し、会社業務に重大な支障を

   与えたとき

(13)会社及び関係取引先の重大な秘密及びその他の情報を漏らし、

   あるいは漏らそうとしたとき

(14)再三の注意及び指導にもかかわらず、職務に対する熱意又は誠意がなく

   怠慢で業務に支障が及ぶと認められるとき

(15)職務の怠慢又は不注意のため、重大な災害、

    傷病又はその他事故を発生させたとき

(16)職務権限を越えて重要な契約を行い、又は会社に損害を与えたとき

(17)信用限度を超えて取引を行い、又は会社に損害を与えたとき

(18)偽装、架空の取引等を行い、会社に損害を与え、

   会社の信用を害したとき

(19)会社内における窃盗、横領、背任又は傷害等刑法等の犯罪に

   該当する行為があったとき

(20)刑罰法規の適用を受け、又は刑罰法規の適用を受けることが

   明らかとなり、会社の信用を害したとき

(21)会計、経理、決算、契約にかかわる不正行為又は不正

   と認められる行為等、金銭、会計、契約等の管理上ふさわしくない行為

   を行い、会社の信用を害すると認められるとき

(22)前項の懲戒を受けたにもかかわらず、あるいは再三の注意、

   指導にもかかわらず改悛又は向上の見込みがないとき

(23)第〇章(服務規律)第〇節(服務心得)、同第〇節(出退勤)

   に違反する重大な行為があったとき

(24)その他この規則及び諸規程に違反し、又は非違行為を繰り返し、

   あるいは前各号に準ずる重大な行為があったとき
-----------------------------------------------------------------------

かなりのボリュームがありますが、

このぐらいまでは記載しておいたほうが良いでしょう。


この部分は詳しければ詳しいほどいいのです。

もちろん、皆さんの会社独自のルールを盛り込むことも可能です。

 


2、次に大切なことは、

「作成した就業規則が社員に知らされていない場合は処分ができない」

ということです。


これに関して参考となる裁判があります。


<フジ興産事件 平成15年10月最高裁>

〇 支店の社員が仕事のトラブルを発生させていた

〇 このトラブルに関する上司の指示に反抗的態度を取り、

  職場の秩序を乱した

〇 会社は就業規則の規定どおりに懲戒解雇とした

→ 就業規則は労働基準監督署にも提出済み

〇 社員が解雇前に就業規則の所在をたずねが、支店には無かった

〇 支店に存在しない就業規則で罰するのは違法と主張し、裁判となった


そして、裁判はもつれ、最高裁まで上がったのです。


最高裁の判断は

〇 労働基準監督署に提出済みだが、それだけでは不十分

〇 社員に周知させていない場合は無効

としたのです。


結果として、最高裁は高裁へ差し戻し、社員が勝訴したのです。


だから、懲戒処分を実施する場合、

〇 就業規則に懲戒に関する条文を詳細に書く

【かつ】、

〇 社員に周知する

という【前提】が重要なのです。


この2つを「事前に実施」しておかないと

懲戒処分の実施が不可能となってしまうのです。

 


3、さらに、処分を実施する際に注意することがあります。


それは「1つのミスなどについての処分は1回だけ」

ということです。


たとえば、

○ 会社の機密情報を漏らし、減給となった社員がいた

○ 後から「それでは甘いので、出勤停止に変更」と処分

ということはできないのです。


また、就業規則に「遅刻を1回したら、懲戒解雇」と書いてある場合、

これは常識的に厳しすぎます。


この場合、この条文があったとしても、

「懲戒解雇=不当解雇」と裁判で判断されてしまいます。


たまに「非常に厳しい就業規則を作って欲しい」とのご依頼もありますが、

ここは常識の範囲で判断することが重要です。


それから、懲戒処分を決定する場合、

〇 社長個人で決めないこと

→ 懲罰委員会等を開いて、複数の役員で決定すること

→ 独断的な判断は不当解雇になる可能性が「高い」


〇 本人に弁明の機会を与える

→ 発生したことについての確認と情状酌量の検討

などを実施することが大事です。


社員が起こしたことの重大性にもよりますが、

これは会社が公明正大に処分をしたことの証明にもなるからです。


裁判にならない方がお互いが幸せですが、

トラブルになったということは裁判にもなり得る話です。


トラブルの処理は「裁判に発展するかもしれない」という前提で、

全てを進めていくことが大切なのです。

 


このように、懲戒処分を実施するには多くのハードルがあるのです。


再度、上記1、2、3をお読みいただき、

就業規則の作成、加筆修正は【必ず】行なってください。


そして、実際に処分する際のプロセスにもご注意ください。


これらの手続きを間違えた、漏らしたために、

「勝てる裁判なのに負けた」ということは【よく】あるのです。


どんな会社でもトラブルを起こすのは一部の社員です。


しかし、その一部の社員が原因となったことを

他の社員が負担することは悲しいことでもあります。


こういうことを防止するためにも、

会社としては、上記の1、2、3を固める必要があるのです。

 


今日は長い条文も含めて、懲戒処分についてお伝えしました。


なぜ、長い条文を記載したかというと、 

「作ってはあるものの、内容が足りない、不備である」

ということがよくあるからです。


先日、ご相談頂いた会社もそうでした。


このお客様は社員が300名ほどの会社なのですが、

就業規則の条文が約50条しかありませんでした。


もちろん、就業規則を補完する諸規定はあったのですが、

就業規則は「家に例えるなら、土台、柱、屋根」の部分です。


ここの条文数が少ない場合、

諸規定で保全しても保全しきれないことが大半です。


会社の規模と就業規則の条文数はリンクすると考えるべきです。


極端な話かもしれませんが、上場会社で何百条もある会社もあります。


会社の成長と共に、変えていくべき部分は変えていく必要があるのです。


ただし、メルマガでは全てをお伝えできませんので、

就業規則のことを1通りお知りになりたい方は下記DVDをご覧ください。


当社で実際に使用している【91条のひな型】もお渡ししています。

---------------------------------------------------------------------
(お客様の声)

熊本県熊本市 ハウスアンドホーム株式会社 代表取締役会長 南博 様


就業規則は知っているようで、上っ面だけの理解でした。

ちゃんと中身を吟味し、対応する重要性がわかりました。


「会社の憲法」ですから常にバイブルとし、

タイムリーな物にしなければと思いました。


また、改めてオーダーメードでなければならない事がわかりました。
---------------------------------------------------------------------

 

○「就業規則の徹底対策DVD」はこちらから

http://www.success-idea.com/037001/

 

--------------------------------------------------------------------
(株)日本中央会計事務所・日本中央社会保険労務士事務所
取締役・社労士 内海正人(うつみまさと)
住所:東京都港区西新橋1-16-5コニシビル4階
電話:03-3539-3047

○顧問契約、単発のご相談(就業規則、雇用契約書など)のお問合せ
https://www.roumu55.com/komon.html
--------------------------------------------------------------------

●ご友人、知人にもこのメルマガをご紹介ください。
http://www.success-idea.com/magazine/


●恵まれない方のために

皆さんが1クリックすると
協賛企業が慈善団体に寄付してくれます(1クリック=1円)。

今、自分がここにいられることに感謝し、1日1回クリックしませんか。

私も毎日、ワンクリックしています。 http://www.dff.jp/


●本メールマガジンは専門的な内容を分かりやすくするため、

敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。


また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記

秋といえば、スポーツの秋です。

私は10/30(日)に開催される大阪マラソン(フルマラソン)

に事務所のスタッフとともに参加します。


大阪マラソンは今年が第1回目。

東京マラソンのように盛り上がると思います。


秋の大阪を駆け抜けて、

自己ベスト3時間37分を更新したいと思います。


沿道で見かけたら、「内海さ~ん」と声をかけてくださいね(笑)。

まあ、2万人以上が参加するので、分からないと思いますが(笑)。


中途採用した管理職が能力不足だったら  |  在宅勤務の導入について

無料でダウンロード

94%の会社が陥る
思わぬ組織の落とし穴!

『組織・人事の解決ノート』

組織・人事の解決ノート

下記にご入力頂ければ、無料レポートをお送り致します。

●お名前:

●メールアドレス:

解雇
社会保険
就業規則
労働時間
労使トラブル
その他
ノウハウを検索
弊社の運営するサイト


TOPお読み頂いた方の声お申し込みよくある質問事業理念事務所概要セミナー実績
ノウハウ |プライバシーポリシー特定商取引に関する法律に基づく表示

 私はチーム・マイナス6%です

 

社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
社会保険労務士 内海正人

〒105-0003 東京都港区西新橋1-16-5 コニシビル4F
TEL 03-3539-3047 FAX 03-3539-3048
E-mail utsumi@j-central.jp