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2012年6月21日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「有給休暇は会社の都合で変更できるか?」を解説します。
有給休暇は法律で発生する要件が決まっており、
○ 6ヶ月間の継続勤務をする
○ その間に8割以上出勤する
という場合、10日間の有給休暇が与えられることになっています。
そして、その後は1年ごとに8割以上出勤していると、
有給休暇が与えられます。
そして、有給休暇は法律で決められた権利ではありますが、
○ 会社に有給休暇の届出を出すだけで有効となるか?
○ いつまでに会社に伝えればよいか?
がよく問題となります。
例えば、風邪で会社を休む場合、
始業までに電話をし、有給休暇を取得しているケースが多いです。
しかし、就業規則では「原則、1週間前までに届出する」などとしながらも、
急な病気などにも対応できるようにしていることが大半です。
まずは、就業規則の参考条文をみてみましょう。
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従業員が年次有給休暇を取得するときは、原則として1週間前までに、
少なくとも前々日までに所定の手続により会社に届け出なければならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、
あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、
事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えること
ができる。
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条文は
○ 原則、1週間前までに
○ 少なくとも前々日までに
○ 突発的な場合は事後でもOK
というフレキシブルな対応としていますが、これには理由があります。
それは、
○ 会社は有給休暇を請求された日に与えなければならない(原則)
○ 事業に支障があれば、日をずらしてもらうことができる(会社の権利)
ということになっているからです。
つまり、会社の都合でずらしてもらうこともあるため、
フレキシブルな条文となっているなのです。
これに関する裁判が以下となります。
<中原郵便局事件 最高裁 平成4年1月>
○ 職員は3日間の有給休暇を主張した
○ 郵便局は代わりもいないので、日をずらして欲しいといった
○ 職員はこれに応じず、休んだ
○ 代替者が見つからずに必要人員を欠いてしまい、仕事に影響が出た
○ 欠勤扱いとし、該当する給与を減額した
○ 職員は納得いかず、裁判所へ訴えた
そして、最高裁までもつれた結果、
○ 事業の正常な運営を妨げる行為
○ 減額は適法
として、会社側が勝訴したのです。
「正常な運営を妨げる場合、有給休暇を与えないことは当然」
と最高裁は判断したのです。
また、この他にも同様の裁判(電々関東通信局事件 最高裁 平成1年)
があり、下記となっています。
「シフト勤務である場合、
代わりの人の確保が困難な場合、有給休暇を変更できる」
としたのです。
だから、会社が「業務上やむを得ない」と考えた場合、
社員が請求した有給休暇の日をずらすことは適法なのです。
この判断をしなければならないので、就業規則の条文で
「原則、1週間前までに届出する」としているのです。
しかし、「少なくとも前々日までに」との記載もあります。
これは代わりの人を手配するのに最低限の時間は必要だからです。。
そこで、急な事情等だったとしても、
その対応をする時間として「前々日までに」としているのです。
さらに、「突発的な傷病その他やむを得ない事由」で休む場合、
原則的には欠勤となりますが、会社の運用として有給休暇としているのです。
これに関して参考となる裁判が以下となっています。
<電気化学工業事件 新潟地裁 昭和37年3月>
「社員が遅刻その他の事情により、業務に支障が出た日は
有給休暇に振り替えできないものとする」
となっております。
だから、病気などの理由で急に会社を休む場合、
有給休暇に振り返るかどうか会社が自由に決める事ができるのです。
しかし、これを欠勤扱いにするのはあんまりなので、
有給休暇を充当できる運用になっていることが多いのです。
このように、有給休暇のいつまでに届け出るかについては、
かなり弾力的な運用となっているのです。
仮に「絶対に、5日前までに届け出を出す」と就業規則に記載しても、
○ 急に風邪を引いた
○ 家族の調子が悪く休まなければならない
ということもあるので、このとおりには行かないでしょう。
ルールは運用できる前提で初めて意味が出るのです。
有給休暇は
○ 法律で決められた社員の権利である
○ 繁忙期などの場合、会社は日を変更してもらうことができる
○ 急な病気などの場合は原則は欠勤で、会社の運用で有給休暇としている
となっていますが、これを理解していない社員も沢山います。
そして、自分の都合だけで休もうとした場合などは、
会社とトラブルになるケースもあるのです。
こういう場合、これに端を発した泥仕合となり、
未払い残業代という全く関係のない問題に発展することもあります。
実際、私がご相談頂いた事例で
○ 繁忙期に有給休暇を申請され、会社は日付の変更を要請
○ 社員は拒否し、強引に休んだ
○ その後、会社との関係が悪くなり、結果として、退職
○ 社員は労働基準監督署に飛び込み、未払い残業代を支払うことになった
というものもあるのです。
いつもお伝えしていますが、
ほんの小さな穴が大きな穴になってしまうこともあるのです。
今日のテーマは有給休暇でしたが、
この仕組みを正確に理解している社員は少ないでしょう。
それだけにきちんと説明をしておく必要があるのです。
これを大きなトラブルに発展させないためにも、
○ 就業規則の改定をした場合
○ 新入社員が入社した場合
などは、社員にきちんと説明しておく必要があるのです。
結果として、社員が理解しているかどうかも重要なポイントなのですから。
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■編集後記
昨日のニュースにサイバーエージェントが社員向けに、
リビングなどを共有しながら複数の社員が一緒に暮らす「シェアハウス」を
12月に開設するというものがありました。
新しい福利厚生とも考えられますが、昔の社員寮と同じですね。
今後、他の会社でもこの動きが出てくるかもしれませんが、
時代は繰り返されるのでしょうか?
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