社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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懲戒処分を実施するには・・・


2012年8月 3日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「懲戒処分を実施するには・・・」を解説します。

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社員に対して懲戒処分を実施したいのですが、

どんなことに注意すべきなのでしょうか?
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こんなご相談をよくお受けます。


解雇に限らず、社員に対する懲戒処分には法的な要件があり、

これを守らないと、後々の問題になる可能性があります。


しかし、多くの経営者は

○ 何が法的な要件なのかをご存じない

○ 感情に任せて、思わず怒ってしまう

ということがよくあります。


しかし、これは危険なことなので、

就業規則と懲戒処分の関係を法的な側面からみていきましょう。


まず、懲戒処分を実施するために最も重要なことは、

就業規則に「懲戒処分の内容が明記」されていることです。


法律では「従業員が突然、懲戒処分を受けること」を防止しています。


そのため、「原則的には」懲戒処分の内容が就業規則に記載されていないと、

懲戒処分そのものができないのです。


「原則的には」と書いたのは、

横領などの場合は就業規則に記載がなくても、懲戒処分ができるからです。


話を戻します。


そして、具体的に就業規則に記載しておく内容は

○ 懲戒処分の種類(例:出勤停止、解雇、減給、降格など)

○ 懲戒処分の程度(例:出勤停止や減給の期間など)

となっております。


具体的には以下の条文をご参照下さい。

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(制裁の種類、程度)

第○条 制裁の種類は、その情状により次のとおりとする。

なお、出向者については、別段の取決めがない場合は、

原則当社に懲戒権が属するものとする。


(1)訓  戒:口頭もしくは文書によって厳重注意をし、将来を戒める。

(2)譴  責:始末書を提出させ、将来を戒める。

(3)減  給:始末書を提出させ、1回の額が平均賃金の1日分の

         半額、総額が一賃金支払期における賃金総額の
          
         10分の1以内で減給する。ただし、懲戒の事案が複数

         ある場合は、複数月にわたって減給を行なうことがある。

(4)出勤停止:始末書を提出させ、7労働日以内の出勤の停止を命じ

         その期間の賃金は支払わない。

(5)降格降職:資格等級の引き下げもしくは役職を解く。

        この場合、労働条件の変更を伴うことがある。

(6)諭旨解雇:退職願を提出するよう勧告する。ただし、勧告した日から

         3労働日以内にその提出がないときは懲戒解雇とする。

(7)懲戒解雇:解雇予告期間を設けることなく即時に解雇する。

         この場合、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定

        を受けたときは予告手当を支給しない。

         また、退職金も全部または一部を支給しない。


2 会社が制裁を行うときは、処分の内容、非違行為、制裁の事由等を

  書面で従業員に通知する。

3 第1項第6号及び第7号に該当するおそれのあるときは、当該従業員

  に対し、弁明の機会を付与する。
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では、就業規則にこのような記載が無い状態で、

懲戒処分を実施した場合はどうなるのでしょうか?


これに関して、参考となる裁判があります。


<理研精機事件 新潟地裁長岡支部 昭和54年10月>

○ 会社は社員に懲戒処分として休職を命じた

○ 懲戒としての休職は就業規則に定められていなかった

○ 社員はこれを不服として裁判所に訴えた


そして、裁判所は

「就業規則に書かれていない懲戒処分は無効」

として、会社が負けたのです。


また、似たような裁判は数多く行われており、

結果としては「就業規則に記載のないものは無効」となっているのです。


だから、懲戒処分は必ず就業規則に明記しないといけないのです。

 


ただし、懲戒処分の内容を就業規則に記載すれば、

何でもOKになる訳ではありません。


「社員が行なった行為」と「懲戒処分の内容」のバランスが

取れていることが必要となるのです。


これに関する裁判が以下となっております。


<日本鋼管事件 最高裁 昭和49年3月>

○ 工員が在日米軍の立川基地拡張に反対する運動に参加

○ 運動中に逮捕、起訴された

○ 会社は就業規則の懲戒解雇事由である「不名誉な行為をして、

  会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとして懲戒解雇とした

○ 工員はこれを不服として裁判所に訴えた

○ 1審、2審は工員が勝訴し、会社が上告した


そして、最高裁の判断は

○ 工員の行為は破廉恥な動機、目的ではない

○ これに対する有罪判決の刑も罰金2,000円で軽微なもの

○ 不名誉性はさほど強度ではないこと

○ 会社の体面を著しく汚したとして、懲戒解雇とするには不十分

として、会社が敗訴したのです。


つまり、地裁、高裁、最高裁の全てで会社が負けたのです。


この裁判では「懲戒解雇は重すぎる罰」と判断されたのです。


このように、バランスをとらないと、就業規則に記載があっても、

法的には懲戒処分が無効となってしまうのです。


懲戒処分を実施するにあたって重要なことは

○ 就業規則に「制裁の種類、程度」を明記する

○ 社員の行為と処分の内容のバランスを考える

→ 過去の自社の対応例と比較する(その人だけ重いのは×)

→ 過去の裁判例との比較する

ということがポイントとなります。


そして、懲戒処分を決定する場合、厳格な手続きを踏む必要があります。


特に、「社長の一存で決める」ことは避けましょう。


なぜならば、個人の感情が優先していると考えられるからです。


○ 社長が感情に任せ、怒鳴ってしまった

○ その社員が労働基準監督署に飛び込む

○ 労働基準監督署に調査され、「法的な」未払い残業代が計算される

ということは本当に多いのです。


結果として、「思わず怒ったことが数百万円になってしまいました」と

後悔されている社長もいらっしゃいます。 


これを避けるためにも懲戒処分を実施する場合、

社内で懲罰委員会などを開催し、処分を決めるべきなのです。


複数名で処分を決めた場合、客観性が高くなるので、

リスクがかなり減少します。


懲戒処分を実施することは、会社を守ることです。


しかし、それを実施したがために、

逆に、リスクを被る会社があることも事実です。


皆さんも「法律の落とし穴」に落ちないようになさって下さいね。


常に社員に怒っている社長もいらっしゃいますが、

特にこういう方は注意が必要です。


確かに、お気持ちはすごく分かりますが、

最終的に大切なのは会社、他の社員を守ることです。


法的なことの保全をせず、

一時の感情で懲戒処分を実施しては「後の祭り」となってしまうのです。

 

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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記


今日は法改正(労働契約法)のお知らせです。

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衆議院の厚生労働委員会は7月25日、パートや契約社員など

働く期間が決まっている有期契約労働者が同じ職場で5年を超えて働いた

場合、本人の申し出で無期限の雇用に転換できることを柱とした

労働契約法改正案を、賛成多数で可決した。

(出典:産経新聞 2012年7月25日)
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この後、参議院も通過すれば成立しますが、

実施時期も不明ですし、中小企業に対する経過措置が付くかもしれません。


ただし、この法律の施行後は5年以上勤めているパート社員等は

「正社員のように働く事ができる」ようになるのです。


まだ完全に決まったわけではありませんが、

注目すべきニュースですので、詳細が分かり次第、お知らせします。 


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