社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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社員がうつ病などになったら・・・


2012年8月30日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

おはようございます、内海です。


今回は「社員がうつ病などになったら・・・」を解説します。


うつ病などの精神疾患の話となると、

「自分の会社には関係ない」と思われる方もいるかもしれません。


しかし、その認識は間違っています。


厚生労働省が3年ごとに行っている調査によれば、 

平成20年には104万人となり、12年間で2.4倍になっています。


これはドンドン増えていくことと推察されます。


平成20年の日本の人口で1億2,800万人ですから、

100人に1人はうつ病などになっているということです。


もちろん、人口数は幼児なども含みますので、

労働人口ベースで考えれば、もっともっと多くなります。


だから、周りを見渡せば、「実は、あの人もうつ病」という時代なのです。


そういう認識で読み進めてください。

 


こういう状況なので、

「うつ病と思われる社員が出てきたが、どんな対応をすればいいのか」

というご質問も増えています。


当然ですが、精神疾患の場合は程度によっては、

普通の仕事ができなくなる場合があります。


さらに、同僚の仕事に影響を与えるなど、

職場環境に重大な影響を与えることもあります。


そんな時は「働くことを止めてもらい」、

職場に影響が出ないようにすることが重要なことです。


この話をすると、多くの社長は「辞めてもらう方法は無いですか?」

とご質問されます。


しかし、「働くことを止めてもらうこと」と「会社を辞めてもらうこと」

は別問題です。


単純に、「うつ病になった → 解雇」という発想は危険なのです。


これに関し、参考となる裁判があります。 


<日本ヒューレット・パッカード事件 最高裁 平成24年4月>

○ 社員が「盗聴、盗撮により監視されている」と訴えた

○ 会社はこの件を調査して、「事実は無い」とした

○ 社員は同僚の嫌がらせを主張したが認められず、勝手に休み続けた

○ 会社は「被害妄想」と判断し、出勤するように指示した

○ 社員は「問題が解決されないと出勤できない」とし、

  有給消化後、40日間の欠勤をした

○ 会社は「正当理由無しの欠勤」とし、解雇した

○ 社員はこれを不服とし、裁判所に訴えた


そして、裁判は最高裁までもつれ、

○ 欠勤の経緯から精神不調であるのは明らか

○ 健康診断を実施し、休職などの扱いを検討すべきだった

○ 解雇の懲戒処分は適切ではない

となり、会社が負けたのです。


この裁判からわかることは

○ すぐに(上記事例では40日)社員を解雇することは厳しい

○ 精神疾患の疑いがある場合は会社が健康診断命令などを下す

○ 休職処分で経過をみる

などの方法を検討するべきということです。

 


ただし、休職をさせるならば、

事前に就業規則等に定めなければなりません。


ちなみに、休職は労働基準法に定めはなく、

会社が「独自に」事前に決めるものです。


だから、この規定が無いと「休職命令」が出せないこともあるのです。


「休職」については、以前のメルマガでも書きましたので、

詳細は割愛しますが、トラブルの多いポイントでもあります。


そういう意味からも事前に決めておくべき項目なのです。


休職期間の参考条文は下記となります。

--------------------------------------------------------------------
(休職期間)

第○条 休職期間は次のとおりとする。

ただし、この休職は法定外の福利措置であるため、復職の可能性が少ない

ものと会社が判断した場合は、裁量により、その休職を認めず、

又はその期間を短縮することがある。

(1)私傷病の時 ○ヵ月(勤務期間が1年未満の者を除く。)

(2)出向等の場合 必要と認められる期間


2 同一事由による休職の中断期間が3ヵ月未満の場合は

前後の休職期間を通算し、連続しているものとみなす。

また、前条第1号及び第2号の休職にあっては症状再発の場合は、

再発後の期間を休職期間に通算する。


3 休職期間は、原則として、勤続年数に通算しない。

ただし、会社の業務の都合による場合及び会社が特別な事情を認めた場合

はこの限りでない。


4 休職期間中は、無給とする。

(中略)

8 休職期間が満了しても復職できないときは、

原則として、休職満了の日をもって退職とする。
--------------------------------------------------------------------

 


このような規定を事前に決めて公平に運用しましょう。


特に重要なのは「休職期間満了時の取り扱い」です。


上記の就業規則でもそう記載していますが、

「休職満了の日をもって退職」と必ず記載しましょう。


もし、この規定が無い場合、辞めてもらうには「解雇」となり、

解雇予告手当(1か月分の給料)が必要になるのです。


たった1文が大きく結果を分けることもあるのです・・・。


もし、この1文がなく、解雇にせざるを得ない場合、

次の2つがポイントとなります。


○ 解雇に該当する規定があるか

○ 解雇に相当する内容かどうか 


この2つが微妙だと「解雇権の濫用」と判断される可能性があります。


だから、裁判になってしまったら、

「解雇無効」と判断される可能性も上がってしまうのです。


解雇無効となれば、

○ 過去に遡って、給料を支払う

○ 損害賠償金も支払う

ということもあります。


単なる1か月分の解雇予告手当では済まないのです。


しかし、この1文があれば、

「休職期間の満了 = 契約の終了」となり、自然退職となります。


これは定年退職と同じ効果と考えられますので、

「解雇権の濫用」とは関係なくなるのです。


もちろん、1か月分の解雇予告手当の支払い不要です。

 


このように、うつ病などの精神疾患には、

事前の「休職に関する規定」が重要なのです。


いつ、どこで、同じ問題が起きるかは分かりません。


もし、皆さんの会社で同じことが起きたら、

すぐに辞めさせるのではなく、休職制度を活用しましょう。


「休職期間中は無給」という規定も入れてあるのですから。

 

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敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記


今年も厚生年金保険料の改定があり、

来月9月分の保険料から改定となります。


厚生年金保険料率(現行)16.412% ⇒(改定後)16.766%


来月分の保険料から改定するので、

実際は10月支給の給与計算から新保険料率を適用することとなります。


ご注意くださいね。


払うべき残業代、払わなくてもいい残業代とは?  |  退職勧奨から解雇に進めるための注意点

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