社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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育児をしている社員の転勤はOKか?


2012年9月19日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

本日は「育児をしている社員の転勤はOKか?」を解説します。


女性も男性と同じ仕事をこなす人が増えています。


もちろん、男女雇用機会均等法で男女差別は違法です。


しかし、子育て中の社員が仕事と育児を両立させ、

かつ、転勤等が可能かとなるとなかなか厳しいのが現実です。


これにつき、育児介護休業法の改正(平成14年4月)は

大きな影響を与えています。


なぜならば、「労働者の配置に関する配慮」という条文で
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事業主は社員の勤務場所の変更をする場合、

その社員の子供の養育、家族の介護の状況に配慮しなければならない。
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という旨があるからです。


この規定ができてから、多くの会社では

「子育て中の社員は異動させない、転勤させない」となり、

いわゆる「腫れ物に触る」ようになってしまったのです。


ワークライフバランスが叫ばれ、子育てと仕事の両立をめざしての

法改正だったのですが、会社は動きが取れなくなってしまったのです。


労働局の通達でも
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子供の養育、家族の介護をしている社員にとって、

勤務場所の変更が勤め続けることを困難にしてはならない。


これは子供の養育、家族の介護につき配慮することを事業主に

義務づけたものである。
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となっています。


これにより、育児中の社員(特に女性)につき、

「異動、転勤がどのレベルまでOKなのかがわからない」

とご相談を受けることもあります。


確かに、法律や通達では「異動や転勤をさせてはいけない」

とまでは記載されていません。


しかし、「どの程度まで許されるか」も記載されていないため、

程度の検討もつきません。


そんな中で、参考となる裁判があります。


<ケンウッド事件 最高裁 平成12年1月>

〇 3歳児を持つ女性社員に対し、目黒から八王子への転勤命令が出た

〇 社員は転勤命令に従わず、八王子事業所に出勤しなかった

〇 会社は勤務時間、保育問題等につき、できる限りの配慮をすると約束

〇 社員は転勤命令に応じなかった

〇 会社は配転拒否により、懲戒解雇を発令

〇 社員は「これは違法だ」と主張し、裁判となった


そして、最高裁の判断は

〇 この異動は業務上の必要性がある 

〇 八王子近辺に転居し、転勤命令に協力すべき

〇 社員が被る不利益は「許容の範囲」

〇 転勤拒否には正当性が無い

として、「会社が下した判断は正しい」とし、会社が勝訴したのです。

 

この裁判からわかるとおり、子供の育児のために

配置転換、転勤などの全てがいけないということではありません。


もちろん、社員1人1人の家庭の状況は配慮しなければなりませんが、

業務上の必要性も十分に考慮されるのです。


だから、

〇 子供の養育状況の把握(例:祖父母が同居、幼稚園や保育園の状況)

〇 社員本人の意向を聴収

〇 転勤などをさせる場合は労働条件なども考慮(例:労働時間の短縮)

することがポイントになります。


そして、会社として辞令の交付となります。


これに関して、労働問題に詳しい弁護士に確認したところ、

〇 配置転換、転勤などにより、社員の生活の影響がでるのは仕方がない

〇 一般的な不利益の範囲であれば、転勤などの拒否理由にならない

〇 社員が我慢する範囲(受け入れなければならない条件)はかなり広い

とのことでした。


そこで社員が我慢する範囲につき、下記判決が参考になります。


これは社員の「我慢する範囲」を超えたという意味で貴重です。


<明治図書出版事件 平成14年12月 東京地裁>

共働き夫婦の子供が重症のアトピー性皮膚炎だったため、

転勤について違法と判断した(会社敗訴)。


<ネスレジャパンホールディング事件 平成15年11月 神戸地裁>

精神病の妻がいるのに転勤命令を出すことは違法と判断した(会社敗訴)。 


これらの裁判の事例が判断の1つの基準となるので、

多少のことでは「我慢の範囲」となるでしょう。


だから、まずは育児、介護などの関する社員の個別事情を考慮し、

その上で転勤などの異動命令を出しましょう。


特に、異動命令を内示した後、「実は、うちの子供は・・・」と

打ち明けられることもあるでしょう。


このような場合、それが特殊事情であれば、

再度、人選を検討する必要があるのです(あくまでも特殊事情であれば)。


もちろん、会社の適材適所という考え方が優先されますが、

社員にとっての「一定レベル」を超えた場合、

会社が敗訴するのが裁判の考え方です。


女性の社会進出が目覚ましくなってから久しいですが、

まだまだ多くの問題があることも事実です。


大半の会社では女性が働いており、また、男女を問わず、

育児介護休業法は適用されます。


皆さんの会社でも同様のことが起きるかもしれませんので、

今日の内容はよく覚えておいて下さいね。  

 

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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記

先々週の土曜日に「社労士サミット」というセミナーで

登壇させて頂き、全国から集まった社労士200人の前でお話しました。


「内海先生」と個人的にお声掛け頂いた方も十数人もいました。


ありがとうございます。


社労士界全体の底上げができるよう、これからも頑張りますので、

またの機会にご参加くださいね。   


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