社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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就業規則で労働条件を下げるには


2013年3月 1日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「就業規則で労働条件を下げるには」を解説します。


会社の経営状況や経済事情の変化で、

労働時間や賃金体系を変更する場合があります。


この場合、就業規則を変更して新たな制度を導入するのですが、

ここで問題となるのが変更の内容が社員にとって不利となる場合です。


いわゆる「労働条件の不利益変更」ということです。


就業規則の変更は会社が実施しますが、社員に不利な条件を作成した場合、

作っただけでは効力が発生しないのです。


ちなみに、労働契約法では以下となっています。

--------------------------------------------------------------------
〇 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である

  労働条件を変更することができる。


〇 使用者は労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、

  労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することは

  できない
--------------------------------------------------------------------

だから、不利益変更の場合は社員の同意を得なければ

変更後の就業規則の効力が発生しないのです。


しかし、現実的に社員全員から同意書を取ることは難しいですし、

同意を得なければ労働条件を変更できないのであれば、

会社の存続問題にかかわってきます。


そこで、一定の場合には社員の同意がなくても就業規則での

労働条件の不利益変更が認められているのです。


これに関する裁判があります。


<第四銀行事件 最高裁 平成9年2月>

〇 就業規則の変更によって、定年を5年延長する事を決めた

〇 延長の代わりに延長後の給与、賞与が減額された

〇 一部の行員が労働条件の一方的な不利益変更として裁判所へ訴えた


そして、最高裁の判断は以下となったのです。

〇 定年延長による人件費抑制の措置は妥当

〇 変更後の賃金水準は同業他社よりも高い

〇 金額だけを見ると不利益変更だか、定年を伸ばすので実質的には

  不利益を緩和するものである

〇 同社の労働組合との交渉、合意もある

〇 この変更は合理性があり、変更に同意していない行員にも効力がある


この裁判のポイントは「就業規則の変更に合理性があるかないか」

という点です。


なお、最高裁は判決を出した際に合理性の基準として、

下記の7つの要因を挙げています。


〇 就業規則の変更によって、社員が受ける不利益がどのぐらいか

〇 変更の内容、程度は妥当か

〇 変更後の就業規則の内容が時代等に合っているか

〇 代替措置などがあるか

〇 労働組合等との交渉の経緯はどうなっているか

〇 労働組合に属さない社員への対応はどうなっているか

〇 同業他社の一般的な状況はどうか


だから、就業規則を変更し、それが労働条件の不利益変更となる場合、

〇 就業規則の変更の必要性の説明

〇 代償措置の設置、説明

を「丁寧に」「詳細に」伝えることが重要なのです。


労働条件の不利益変更は社員の生活に大きく影響し、

特に給料、退職金、賞与などは社員の生活基盤と密接に結びつく部分です。


だから、変更の説明会や代償措置がとても重要になります。


しかし、このことを実施しても紛争となる場合もあります。


こういう最悪の場合も想定しておくべきなので、

下記の手続きを実行することが大切です。


〇 就業規則を変更するための必要な手続きがされていること

→ 社員代表等の意見書を添付して労働基準監督署へ提出


〇 変更後の就業規則が周知されていること

→ 回覧や配布する、周知方法について担当者の意見書をもらう


〇 就業規則の変更がどのようになっているか

→ 変更箇所の一覧表の作成


〇 労働条件を下げなければならない必要性の証拠

→ 決算書、弁護士等の専門家の意見書


〇 変更後の内容が社会一般的に妥当かどうかの資料

→ 新賃金の水準に関する資料、比較のための業界データ


〇 代償措置、経過措置を講じていること

→ 給与を下げる代わりに、定年を延長する、労働時間を短縮するなど


〇 社員との交渉経緯の記録

→ 会議記録、他の社員の合意書など


ここまで準備を考えておけば、紛争等になってもすぐに対応が可能です。


ちなみに、労働紛争の相談に関するデータ(厚生労働省)では、

労働条件の引下げに関するものは以下となっています。


〇 平成21年度・・・38,131件

〇 平成22年度・・・37,210件

〇 平成23年度・・・36,849件


微減しているものの、

これは解雇やハラスメントに次ぐ非常に多い件数となっています。


だから、労働条件の変更を検討する会社は、

紛争に対する備えを検討することは必須なのです。


政治、経済の変化で会社が置かれる環境が変化し、

労働条件を変更せざるを得ない時もあります。


そんな時は今日のメルマガを見直して、

押さえるべきべきポイントを把握して下さい。


「会社が厳しい状況だから、こう変更しました」

とだけ発表しているケースもありますが、それは非常にリスキーなのです。

 

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ご注意ください。

 

■編集後記

前回の編集後記でも書きましたが、2/24の東京マラソンを走りました。


普段見ている東京の街ではなく、

道路の真ん中から見る雷門、東京タワー、スカイツリーは圧巻でした。


また、沿道の応援が200万人とその人並みが途切れることがなく、

とても感動しました。


おかげさまで自己ベストを3分更新して3時間33分でゴールしました。


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