〒105-0003 東京都港区西新橋1-16-5 コニシビル4F
社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
E-mail:utsumi@j-central.jp
TEL:03-3539-3047(代表)
2013年3月21日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「この退職は自己都合か?会社都合か?」を解説します。
年度末を迎え、人事異動などが活発に行われる時期となり、
これと同時に、転職、退職の動きも活発となっています。
そのため、私のところにも退職に関するご相談が増えています。
そして、よくトラブルとなるのが退職の理由が
「自己都合か?会社都合か?」ということです。
簡単に書けば、社員自らが退職を申し出るのが「自己都合」で、
逆に、会社から退職を迫られるのが「会社都合」です。
こう書くと、自己都合か会社都合かの判断は簡単な印象を受けますが、
〇 給料遅配により、退職せざるを得なかった
〇 事業縮小で退職者を募ったら、募集以上の社員が退職した
〇 上司に「そろそろ違う仕事を考えたら?」と言われた
など、判断がつかない場合があります。
結果として、この判断は微妙になることも多いのですが、
これがトラブルの原因になることもあります。
なぜならば、失業保険と関係があるからです。
具体的には
〇 自己都合・・・失業保険がすぐにもらえず、3ヶ月後の支給となる
〇 会社都合・・・失業保険がすぐに貰える
ということです。
その社員の雇用保険の加入期間によっては、
給付される期間に違いが出る場合もあります。
さらに、退職金制度がある場合は、
〇 自己都合・・・退職金の支給が会社都合の半分
〇 会社都合・・・退職金が満額貰える
となっていることが大半です。
このように、退職の理由で社員が貰えるお金が変わってくるので、
退職する社員にとってはどちらになるかが重要なのです。
これに関する裁判がありますが、まずは自己都合と判断された判決です。
<東京地裁 平成15年11月>
〇 会社から「3ヶ月の間、給料が遅配となる」と説明された
〇 社員は会社の存続に疑問を感じ、すぐに退職した
〇 この退職は「会社都合である」と主張したが、会社は認めなかった
〇 社員が納得しないで裁判となった
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
〇 全社員に対して、会社の現状を伝え、雇用の維持を確保しようとした
〇 退職した社員は自らの意思で会社の将来性を考えて判断した
〇 この判断は社員個人の判断で、自己都合である
〇 会社が勝訴した
これに対して、会社都合と判断された裁判もあります。
<東京地裁 平成9年8月>
〇 会社が給料の不払いを起こした
〇 社員が「給料を貰えないのなら辞めます」として退職した
〇 自己都合分の退職金しか支給されなかった
〇 社員が「この退職は会社都合だ」として裁判をおこした
裁判所の判断は以下となったのです。
〇 給料の不払いによる退職はやむを得ない理由である
〇 この理由は会社が社員に対して「労働契約の解約」と考えられる
〇 この退職は会社都合である
〇 会社は敗訴し、退職金を再計算し、残額を支払った
この2つをみてみると、「業績が厳しく、給料を支払えなかった」
という共通がありますが、給料の不払いに関する取り扱いが
異なります。
自己都合と判断された裁判では以下となっています。
〇 給料遅配の理由が説明されている
〇 3ヶ月の遅配で、回復の見込みがあることも社員に伝えられている
一方、会社都合と判断された裁判では以下となっています。
〇 単に給料の不払いが発生している
〇 社員に対し、説明などもなされていない
〇 退職は自己都合として、強引に自己都合分の退職金を支払っている
この違いは「会社が社員に対する説明責任を果たしているか?否か?」
ということです。
しかし、その前にもっと大事なことがあるのです。
それは「退職の意思確認」についてです。
まず、社員から「退職したい」等の話があったら、
下記の対応をすることが重要です。
たとえば、「会社の状態が悪いので退職したい」とのことであれば、
「自己都合での退職ですね」ときちんと確認しましょう。
また、退職届等を必ず書面でもらうことが重要です。
これは後々、裁判等になったときは大きな証拠となるからです。
しかし、強引に退職届にサインをさせることはやってはいけません。
例えば、
〇 面談の場でサインするように、強引に迫る
〇 「今、サインしないと、退職金が出ない」と脅す
ということです。
このようなことがあった場合は「脅迫」となり、
退職そのものが「無効」となってしまうからです。
結果として、退職理由でのトラブルを回避するためには
以下を準備することをお薦めします。
〇 退職願(理由を具体的に記載)
〇 退職後進路(アンケートとして)
〇 離職票
〇 退職時のメール等
→ 例:最初に退職の打診があったメール
→ 例:最初に上司に退職の旨を伝えた際の面談メモ
退職理由でトラブルになった場合、裁判になる可能性が高くなります。
しかし、これらの手続きを明確に行えば、その確率が下がるので、
忘れないように行うことが重要です。
また、
○ 社員の退職の承認は役員会などで行うこと
→ 社長のみの決裁では感情移入があり、トラブルとなる場合もあり
→ この旨を就業規則に記載しておく
○ 退職時の面談を行うこと
→ ボタンの掛け違いを無くすようにする
も重要です。
いかがでしょうか?
退職理由はその社員にとっては大きな意味を持つため、
自己都合か会社都合かは大きな問題です。
もちろん、会社にとっても会社都合の場合は
○ 助成金がもらえなくなる
○ 退職金の額が膨らむ
○ 労働基準監督署、ハローワークの調査対象になるかもしれない
などの意味があるので、どちらであるかは重要なのですが。
いずれにせよ、会社にとっても社員にとっても、
退職理由は大きな問題です。
ここを明確にするために、上記で解説した手続きを
きちんと踏んでいくことが重要なのです。
--------------------------------------------------------------------
(株)日本中央会計事務所・日本中央社会保険労務士事務所
取締役・社労士 内海正人(うつみまさと)
住所:東京都港区西新橋1-16-5コニシビル4階
電話:03-3539-3047
○顧問契約、単発のご相談(就業規則、雇用契約書など)のお問合せ
→ https://www.roumu55.com/komon.html
--------------------------------------------------------------------
●ご友人、知人にもこのメルマガをご紹介ください。
→ http://www.success-idea.com/magazine/
●恵まれない方のために
皆さんが1クリックすると
協賛企業が慈善団体に寄付してくれます(1クリック=1円)。
今、自分がここにいられることに感謝し、1日1回クリックしませんか。
私も毎日、ワンクリックしています。 http://www.dff.jp/
●本メールマガジンは専門的な内容を分かりやすくするため、
敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。
お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。
また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、
ご注意ください。
■編集後記
小学館の雑誌「DIME」に私の取材記事が出ました。
「課長の失敗学」というコラムです。
先週の土曜日に発売となったのですが、
最初に雑誌を手に取ったときは、自分の記事が分かりませんでした。
取材に何十枚も撮られた写真が見当たらない・・・、
と思ったら、P120の表示の上に小さく丸囲みでありました。
これををブログにアップしましたので、よろしければ、ご覧ください。
http://ameblo.jp/utsumisr/entry-11492365827.html
94%の会社が陥る
思わぬ組織の落とし穴!
『組織・人事の解決ノート』
下記にご入力頂ければ、無料レポートをお送り致します。
社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
社会保険労務士 内海正人
〒105-0003 東京都港区西新橋1-16-5 コニシビル4F
TEL 03-3539-3047 FAX 03-3539-3048
E-mail utsumi@j-central.jp
Copyright 2007-2018. Japan Central Accounting. All Rights Reserved.