社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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就業規則の効力はいつからか?


2013年3月27日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「就業規則の効力はいつからか?」を解説します。


来週からは新年度となり、就業規則の見直しや新たなルールの導入など、

運用を変える会社も増えています。


そんな中、「就業規則の効力の発生はいつからですか?」

というご質問が多く寄せられています。


これは就業規則を変更したり、新たに作成したりした場合、

いつからその効力が発生するかにより、運用が変わる場合があるからです。


そして、このご質問は

〇 就業規則に記載されている施行日か?

〇 所轄の労働基準監督署に提出した日からか?

〇 従業員に説明した時からか?

の3つに集約されます。


では、これに関する裁判をご紹介しましょう。


<フジ興産事件 最高裁 平成15年10月>

〇 会社は就業規則の変更を行い、社員代表の同意を得て労基署に提出

〇 別の建物にある事業所の社員が職場秩序を乱していた

→ 取引先とトラブルを発生させた

→ 上司の指示に対して反抗的態度をとった

→ 職場放棄を行った

→ 上司に暴言を吐いていた

〇 変更後の就業規則により、社員を懲戒解雇とした

〇 社員は「懲戒解雇は違法」と主張し、裁判所に訴えた

→ 就業規則による懲戒処分であるが、事業所には就業規則がなかった


そして、1審、2審では

〇 就業規則に懲戒解雇事由が記載されている

〇 社員の行為は懲戒解雇事由に該当

〇 就業規則を労働基準監督署に提出した事実がある

〇 就業規則が職場に備え付けられていなかったとしても(周知されて

  いなかったとしても)、それだけで無効とはいえない

〇 懲戒解雇は有効(会社が勝訴)

となったのです。


しかし、これに納得できない社員は最高裁まで争い、

その結果は下記となったのです。


〇 会社が社員を懲戒するには、あらかじめ就業規則で

  懲戒の種類、事由を定めておくことが必要

〇 就業規則が法的な拘束力を持つためには、

  その内容を受ける社員に周知させる手続きがされていること

〇 本件は就業規則の周知(備え付等)がなされていない

〇 変更後の就業規則は効力を生じない


こういう判決になり(破棄差戻しとなり)、

事実上、社員が勝ったのです。


この最高裁の判決により、

「就業規則の効力発生の時期は社員に周知した時」

と明確になったのです。


その後、平成20年3月から施行された労働契約法でも以下のように

定められています。

--------------------------------------------------------------------
使用者が就業規則の変更により、労働条件を変更する場合において、

変更後の就業規則を労働者に周知させ、(中略)

その変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
--------------------------------------------------------------------

 


では、ここで「社員に周知する」ということを詳しくみていきましょう。


労働基準法では就業規則の周知の方法を定めています。


それは

〇 常時、職場の見やすいところに掲示するか、備え付ける

〇 社員に就業規則を配布する

〇 磁気テープ、磁気ディスク等に記録し、端末で見られるようにする

となっています。


さらに、支店や営業所がある場合はそれぞれの場所でも

「周知する」ことが必要です。


周知とは、社員が就業規則の内容を確認したいと思ったときには、

いつでも確認できる状態にしておかないといけないということです。


なお、この周知することは就業規則の内容を理解させることまでは

求められていません。


だから、社員が就業規則を見たいと思ったときに

見られる状態にしておけば、それでOKなのです。


ただし、上記の裁判のように就業規則が「周知されているか、いないか」

というトラブルを防ぐために、以下の手続きを実施しましょう。


〇 労働基準監督署に社員代表の意見を沿えてきちんと提出する

〇 備え付けるか、PC端末で閲覧可能な状態にする

→ 配布を実施する場合、社内のルールなので持出厳禁とした方が良い

〇 一斉メールや回覧で「就業規則の閲覧方法」を知らせる


ここまで実施すれば、社員が「就業規則を見たことがない」と主張しても、

「見れる環境を会社が用意していたのに、見ていない社員が悪い」

となるのです。 


就業規則について、社員代表との間で形式的に合意しても、

事実上、周知されてない場合には改めて「周知」の手続きが必要です。


そして、実際に周知された場合には、周知以後の日が効力の発生する日

となるのです。


なお、就業規則を周知する義務は会社にあります。


もし、周知する義務を怠っていると、労働基準法違反として

30万円以下の罰金が科せられてしまいます。


だから、就業規則を金庫などにしまい込んではいけないのです。


新年度ということもあり、就業規則の改定などをする場合もありますが、

それを有効に働かせるためには「周知」は絶対要件です。


ここは必ずモレがないように運用をしないと、

就業規則は意味が無いものになってしまうのです。


ご注意くださいね。

 

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ご注意ください。

 

■編集後記

先週は福島、今週は岐阜、来週は奈良と出張が続きます。


特に年度末、年度はじめは法改正や新規運用の導入で、

社長さんとの打ち合わせはもちろん、社員の方への説明会も多くあります。


このお打合せの場で感じるのは

「社員はルールが変わることに不安を感じている」ということです。


だからこそ、不安を取り除くためにわかりやすい説明会を

心がけています。


こういう時にこそ、社労士としてのやりがいを感じますね!


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