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2013年4月25日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「有給休暇の取得について」を解説します。
有給休暇についてのご相談は本当に多いのですが、その中でも
○ 当日に「今日は休むので、有給休暇でお願いします」と連絡があった
○ 繁忙期なのに、有給休暇を3日も申請してきた
といったような内容が多数を占めます。
もちろん、有給休暇は社員のリフレッシュの為の休暇として
与えられています。
そして、
○ 入社後6ヶ月間勤務
○ 8割以上の出勤
をクリアすれば「法的に発生する権利」となっているのです。
また、法律では「社員が請求する時に与える」となっています。
だから、「社員が申請してきたら、与えなければならないのか?」
と戸惑う会社が多いのです。
しかし、社員が有給を取りたい時に自由に休まれては
業務が回らなくなってしまいます。
そのため、労働基準法では会社に以下の権利も与えられています。
「ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を
妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」
このことを「時季変更権」といい、会社は社員から有給を請求された場合、
繁忙等の理由で取得する日を変更してもらうことができるのです。
ただし、時季変更権の行使には注意点があります。
これに関する裁判があります。
<林野庁白石営林署事件 最高裁 昭和48年3月2日>
○ 職員が有給休暇2日を取得する旨を出勤簿に記載した
○ 休んだ2日で他の営林署での労働組合活動に参加した
○ 署長は休んだ理由を知り、有給ではなく「欠勤」とし、給料を減額
○ 職員はこれを不服として裁判に訴えた
そして、裁判は最高裁までもつれ、会社が敗訴したのです。
○ 有給休暇について、「申請して承認をもらう」という考えは不適切
→ 有給休暇を取る権利があれば、原則として当然に取得できる
→ 会社が、有給休暇取得する日をずらしてもらうこと(時季変更権)
を行使することは可能
○ 今回の場合、時季変更権を行使することは不可能
→ 時季変更権が行使できる場合は「事業の正常な運営が不可」な時のみ
→ 本件は職員が休んでも、業務に影響なかった
この裁判でクリアになったことは
○ 有給休暇の取得理由は自由
○ 事業の正常な運営を妨げるか否かの判断は現場で判断
→ 妨げる場合は時季変更権の行使が可能
ということです。
ここで問題となるのは、
現場で「事業の正常な運営を妨げるか否かの判断」をすることです。
これに関する最高裁(電電公社此花電話局事件 昭和57年3月18日)
の判断は以下となっており、時季変更権が行使できる条件が
明確にされました。
○ 代わりに働ける人の確保が可能なら、時季変更権は行使できない
○ 代わりに働ける人の確保が不可能なら、行使できる
ということです。
つまり、「代替の人が確保できるかできないか」が分岐点となるのです。
さらに、この判決では就業規則についても注目しています。
この会社の就業規則には「有給の請求は原則として前々日の勤務終了時
まで」と記載してありました。
これに関しては「代替者を探す時間として合理的なもの」
と認められたのです。
だから、一般的には2~3日前までの届出ならば、
合理的で有効と判断されます。
もちろん、代替者が確保できない場合は時季変更権の行使可能です。
また、長期、かつ、連続の有給の請求に関しては、
代替者の確保がより困難になる場合もあります。
そこで、就業規則に一定日数以上の有給の連続請求の場合には、
別途、一定期間以上前に請求することを義務付けておく必要があります。
具体的な条文は以下となります。
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第○条 従業員が有給休暇を取得するときは、原則として1週間前まで
に、少なくとも前々日までに所定の手続により会社に届け出なければ
ならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、
あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、
事後の速やかな届出により当該欠勤を有給休暇に振り替えることが
できる。
ただし承認は会社の裁量に属するものとし、必ず行われるものではない。
2.従業員が連続4日以上(所定休日が含まれる場合を含む。)の
有給休暇を取得するときは、原則として1ヵ月前までに、少なくとも
2週間前までに所定の手続により、会社に届け出なければならない。
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ここまで具体的に記載すれば、誤解が生まれる確率が低くなるでしょう。
有給休暇は社員の権利だけにトラブルになりやすいのですが、
社員は時季変更権という会社側の権利を知りません。
その結果、「請求したのに、休ませてくれない」と勘違いし、
トラブルに発展する場合もあります。
実際に「有給が取得できないから、会社を辞める」といった理由で
退職される人も多くいらっしゃいます。
「そんな理由で退職をするのですか?」と感じられるかもしれませんが、
社員にとってはとても大きな問題なのです。
だから、【業務の運営が正常であれば】、
有給休暇は請求通り、認めていく必要があります。
ただし、業務の運営が滞り、代わりの人がいない場合は、
そのことを社員に伝えて、時季変更権を行使しましょう。
会社が絶対にやってはいけないことは
○ 有給休暇を取らせない
○ 合理的理由もなく、時季変更権を使い、有給取得をずらすこと
○ 有給取得に関して、しつこく理由を聞く
などのことです。
「たかが有給、されど有給」です。
業務に支障が出るかどうかには明確な基準がないため、
会社側と社員側ではこの判断に温度差が出る場合があります。
これも有給休暇をめぐるトラブルに発展する要素の1つです。
だからこそ、就業規則などの形式を整えるだけでなく、
日頃の社員との信頼関係の構築が重要なのです。
こう言ってはなんですが、同じ労働環境でも
○ トラブルが起きない会社は起きない
○ 起きる会社は何度も起きる
という現実があります。
これは社長などの管理職の人間性によるところも大きいと感じます。
結果として、自分の会社を守っていきたいならば、
こういう部分こそを大切にしていかなければならないのです。
ただ、変われない社長は多いですが・・・。
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■編集後記
最近、気になったニュースの中に「ユニクロの世界同一賃金」が
あります。
入社3年以内の退職率が約50%のユニクロですが、
この賃金体系は上手くいくのでしょうか?
社労士として気になる部分でもあります。
賃金体系はどの会社も悩みが深い部分ですが、永遠のテーマと考えず、
企業ステージに合わせて変えていくことが重要ですね。
こういうお手伝いをさせて頂く機会も多いのですが、
社員の方の生活に影響するだけに慎重に判断しています。
ただし、企業が存続することを大前提に考えているので、
そのバランスも大切ですね。
会社が大きくなった、小さくなったなどの変化により、
「賃金体系を変えたい」という方は是非、お問い合わせください。
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