社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

労働問題のご相談、労使トラブルのご相談なら 東京都 港区の社会保険労務士 内海正人

降格を実施するには


2013年5月 2日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「降格を実施するには」を解説します。


4月は人事異動の季節でしたが、それに伴うご質問も多数頂きました。


その中で降格についてのご質問が多かったので、

今回のメルマガで取り上げてみます。

 


まず、降格とは「階級や地位などが下がること」をいいますが、

○ 就業規則に降格の記載が無いが、降格できるか?

○ 降格したら給料はどのぐらい下げても大丈夫か?

など、具体的な取扱いが難しいのです。


ちなみに、降格には2つの法的根拠があります。


(1)人事権の行使

→ 業務遂行のため、会社が社員の能力、適性に応じて人材を配置


(2)懲戒権の行使

→ 会社の秩序維持のため、社員に対する特別な制裁


なお、これらに関する裁判があるので、ご紹介します。


<アメリカン・スクール事件 東京地裁 平成13年8月31日>

○ 施設管理部の部長が学校の出入り業者から、

  仕事発注の見返りに多額の謝礼を受け取った


○ 学校の許可なく多額の謝礼を受け取ることは就業規則違反とし、

  戒告を受けた

→ 就業規則に降格の記載は無し


○ 人事異動でアシスタントマネージャーに降格となり、減給される


○ 施設管理部の部長は「就業規則に降格の記載が無い」ので、

  降格処分及び減給処分は無効であると裁判に訴えた

 

そして、裁判所は以下の判断としたのです。


○ 降格は企業秩序維持のための労働者に対する特別な制裁で、

  それを行うには就業規則の定めが必要


○ 就業規則に降格の記載がなければ、懲戒処分はできない

→ 上記(2)の懲戒権による降格はできない


○ 社員の能力、資質に応じて組織の中で役割を定める人事権を使い、

  「施設管理部長としてふさわしくない」という会社の判断はOK

→ 上記(1)の人事権による降格はできる(会社が勝訴)


この裁判のポイントは

○ 人事権による降格・・・就業規則に定めがなくても有効

○ 懲戒権による降格・・・就業規則に定めがないと無効

ということです。


また、同じような判断をした裁判があります。


<星電社事件 神戸地裁 平成3年3月14日>

○ 部長が飲酒運転のため免許停止処分を受けた

○ その後、会社の駐車場に宿泊し、酒気臭さをもって業務についた

○ 会社は管理職としての適性を欠くとして部長職から一般職に降格

○ 部長は降格について「就業規則に記載がないので無効」と主張し、

  裁判所に訴えた


この事件でも就業規則に記載が無くても、

「懲戒権による降格は不可でも、人事権による降格は可能」

と判断されたのです。

 


この2つの裁判からもわかるように、「人事権の行使」による降格ならば、

就業規則の記載は必要ないのです。


しかし、人事権の行使が全ての場合で認められる訳ではありません。


人事権の行使で必要なことは

○ 組織上、業務上の必要性

○ 社員の能力、適性

などが必要となるのです。


逆に、ハネウェル・ターボチャージング・システムズ・ジャパン事件

(東京高裁 平成17年1月19日)では降格が無効となり、

会社が敗訴しています。


ちなみに、この会社の就業規則には降格のことが定めてありましたが、

○ 社長に反発する社員への意図的な措置として降格、減給処分を

  行ったと推認できる

○ 正当な理由なく、合理性を欠く人事権の濫用に該当

ということでした。


だから、人事権の行使による降格だったとしても、

正当な理由と合理性がないと認められないのです。

 


それから、判決からも分かるわかるとおり、

上記(2)の懲戒権の行使による降格を実施する場合は、

就業規則に記載してあることが必要です。


参考条文は以下となります。

--------------------------------------------------------------------
第○条(懲戒の種類、程度)

懲戒の種類は次の各号のとおりとする。

① 訓  戒:文書によって厳重注意をし、将来を戒める。

② 譴  責:始末書を提出させ、将来を戒める。

③ 減  給:1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払期

  における賃金総額の10分の1以内で減給する。

  但し、懲戒の事案が複数ある場合は、複数月にわたって減給を行なう

  ことがある。

④ 出勤停止:14暦日以内の出勤停止を命じ、その期間の賃金は支払わ

  ない。

⑤ 降  格:資格等級等の引き下げをする。

  この場合、労働条件の変更を伴うことがある。

⑥ 諭旨退職:合意退職に応ずるよう勧告する。

  但し、勧告した日から3労働日以内に合意に達しない場合は

  懲戒解雇とする。

⑦ 懲戒解雇:解雇予告期間を設けることなく即時に解雇する。

  この場合、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けたとき

  は予告手当を支給しない。
--------------------------------------------------------------------  


このように降格を就業規則に記載しておけば、

懲戒処分の1つとして認識されるのです。


そして、降格を実施する時は「人事権の行使」なのか「懲戒権の行使」

なのかをはっきりさせる必要があるのです。


たとえば、

○ 人事権の行使・・・辞令交付

○ 懲戒権の行使・・・社員に対する書面による通知

を通じ、明確にするのです。

 


それから、降格に際し、

「どのぐらいまで、給与の減額できるか?」というご質問も頂きます。


ここに法的な基準はないのですが、部長手当などの役職手当がある場合、

役職の引き下げに伴う役職手当減額は有効です。


もちろん、降格が妥当であるという前提です。


例えば、部長から課長に降格の場合、

「部長手当10万円 → 課長手当5万円」となります。


また、給与テーブルのある会社の場合、

1ランク下げる場合は該当する欄の給与となるのです。


ただし、中小企業などではここまで明確でなく、

給料の設定があやふやな場合も多くあります。


そういう場合は降格、給与の減額について、

社員から同意書をもらうことをお薦めします。


なぜならば、仮に社員ともめた際に

この同意書が強力な証拠となるからです。


ただし、「書面があれば全てOK」ではありません。


そもそも論として、降格、減額が妥当、合理的である前提が必要です。


また、その前提がOKとしても、なぜ、そうなったのかを説明し、

「どうすれば良かったのか?」を考えてもらう機会を作りましょう。


なぜならば、降格や減額をすることが目的ではなく、

○ 役職に見合った仕事をしてもらうこと

○ 組織全体のバランスの維持

が目的だからです。


そして、どのようにすれば「復活のチャンスがあるか」なども伝え、

今後の動きを「どうすればよいか」を考えてもらうことが重要なのです。


このように、形式上の話、法的根拠の話、運用上の話を

福岡のセミナーではお話します。


是非、ご参加くださいね。


※セミナーのお申込みは締め切らせて頂きました。

 

--------------------------------------------------------------------
(株)日本中央会計事務所・日本中央社会保険労務士事務所
取締役・社労士 内海正人(うつみまさと)
住所:東京都港区西新橋1-16-5コニシビル4階
電話:03-3539-3047

○顧問契約、単発のご相談(就業規則、雇用契約書など)のお問合せ
https://www.roumu55.com/komon.html
--------------------------------------------------------------------

●ご友人、知人にもこのメルマガをご紹介ください。
http://www.success-idea.com/magazine/


●恵まれない方のために

皆さんが1クリックすると
協賛企業が慈善団体に寄付してくれます(1クリック=1円)。

今、自分がここにいられることに感謝し、1日1回クリックしませんか。

私も毎日、ワンクリックしています。 http://www.dff.jp/


●本メールマガジンは専門的な内容を分かりやすくするため、

敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。


また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記(内海)


就業規則などの作成をお手伝いした長崎市琴海(きんかい)の

株式会社きんかい茸(きのこ)の山田専務よりエリンギを頂きました。


スーパーで売っているものの2倍~3倍もある立派なエリンギです。


早速頂きましたが、歯ごたえも抜群で、美味しかったです。


とても大きなエリンギですので、ご覧になってみてください。

http://www.kinkaikinoko.co.jp/shopping/


有給休暇の取得について  |  年金事務所の調査

無料でダウンロード

94%の会社が陥る
思わぬ組織の落とし穴!

『組織・人事の解決ノート』

組織・人事の解決ノート

下記にご入力頂ければ、無料レポートをお送り致します。

●お名前:

●メールアドレス:

解雇
社会保険
就業規則
労働時間
労使トラブル
その他
ノウハウを検索
弊社の運営するサイト


TOPお読み頂いた方の声お申し込みよくある質問事業理念事務所概要セミナー実績
ノウハウ |プライバシーポリシー特定商取引に関する法律に基づく表示

 私はチーム・マイナス6%です

 

社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
社会保険労務士 内海正人

〒105-0003 東京都港区西新橋1-16-5 コニシビル4F
TEL 03-3539-3047 FAX 03-3539-3048
E-mail utsumi@j-central.jp