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2013年5月 9日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「年金事務所の調査」を解説します。
GWも終わり、春から夏にかけての過ごしやすい季節となりましたが、
この時期に年金事務所の調査も多数行われます。
実際、5月に入ってから、調査のご相談を何件もお受けしております。
この年金事務所の調査の主な内容は
「社会保険料が正しく支払われているか?」ということです。
この調査は年金事務所内で行われることがほとんどで、
会社の中で行われることはあまりありません。
ただし、調査に際して、年金事務所に持参する書類は沢山あります。
例えば、
○ 労働者名簿
○ 雇用契約書
○ 源泉所得税の納付書(納付済みのもの)、源泉徴収簿
○ 賃金台帳、給与明細の控え
○ 出勤簿、タイムカード
○ 社会保険の資格取得届、算定基礎届、月額変更届、賞与支払届の控え
→ 調査日1年前から現在までのもの
○ 就業規則、賃金規程、労使協定
などとなっております。
年金事務所はこれらの書類をチェックし、
○ 加入者の加入漏れ
○ 保険料額が正しいか
などをチェックするのです。
特に、詳しく調査されるのは「パート社員等の社会保険加入漏れ」です。
パート社員等の社会保険の加入条件は
○ 2ヶ月以上の雇用期間があること
○ 1日、または、1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること
○ 1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること
となっています。
この条件に該当する者は「パート」「アルバイト」でも、
社会保険に加入させないといけないのです。
しかし、社会保険料は会社と本人の折半による負担のため、
「手取り金額が少なくなってしまうので加入したくない」という理由で、
加入を拒まれることがあります。
「加入するなら、退職します」という場合もあります。
こういう状況はパート等に限らず正社員でも起こるケースです。
これでは雇用の確保ができない、業務の遂行に支障が出る、
ということで一部の社員、パート社員等「のみ」が社会保険に
加入していないケースはよくあるのです。
この場合、年金事務所に指摘されると、多くの社長が
「従業員が拒んだから、加入させられなかった」と主張されますが、
これでは通用しないのです。
社会保険加入の義務は会社にあるので、本人の要望に関わらず、
労働時間などの条件を満たしたら、加入は絶対的な義務なのです。
そして、これに違反すると
「6ヶ月以上の懲役、または、50万円以下の罰金」
と法律で定められています。
さらに、損害賠償の支払いにまで至るケースもあるのです。
これに関する裁判があります。
<豊国工業事件 奈良地裁 平成18年9月5日>
○ 社員が入社したが、社会保険に加入させなかった
○ 社員は国民年金、国民健康保険に加入しており、6年程度で退職
○ その後、社会保険に加入していたら支給されていたはずの金額を
損害賠償として裁判所に訴えて請求した
そして、裁判所は次の判断を下したのです。
○ 加入義務があるのに加入させなかったことは違法
○ 損害賠償請求を認めた(会社は敗訴、賠償額は387万円)
1、加入していれば支払を免れたはずの国民年金、国民健康保険の保険料
308万円
2、厚生年金に加入していれば給付を受けられた額
333万円
3、厚生年金等に加入していたら支払ったはずの保険料(自己負担分)
254万円
4、1+2-3=387万円
ちなみに、この裁判では社員は退職後に裁判を起こし、
損害賠償を請求しており、裁判ではその支払いを認めています。
だから、「社員が退職したから関係ない」とはいえないのです。
結果として、社員が望む望まないに関わらず、
また、従業員が加入しないことに同意していたとしても、
法律違反を問われてしまうのです。
さらに、別の裁判(京都市役所非常勤嘱託員厚生年金保険事件 京都地裁
平成11年9月30日)では次のようなコメントがでました。
「同業他社等でも未加入になっていることが多かったとしても、
これは考慮されない」となっています。
だから、同業他社の状況や一般的な状況は関係なく、違法は違法なのです。
しかし、パート社員等を加入させていない会社は多いので、
パート社員の加入状況は重点的に調査されるのです。
そして、条件に該当する社員がいれば「必ず加入させて下さい」
と指摘されるのです。
ただし、パート社員等の社会保険加入で判断に困る例があります。
それは、入社当初は社会保険の加入要件を満たしておらず、その後、
勤務時間が増加して条件を満たすようになった場合です。
この場合、勤務時間が増加したこと(一時的か?恒常的か?)
を検証する必要があります。
一時的な増加なら加入させる必要はありませんが、
それが長く続くようになると「恒常的」と判断されてしまいます。
この理由によって、加入が義務であるかどうかの判断が
変わってきますので、ここはしっかり押さえておきましょう。
年金事務所の調査については、今後厳しくなると予想されます。
確かに、数年前まではハローワークと年金事務所という縦割行政のため、
社会保険加入に対して厳しいことは言われませんでした。
しかし、最近では
○ 新設法人に関するハローワークとの連携
→ 厚生年金等には加入しなくても、雇用保険等には加入することが多い
→ この際、社会保険の加入状況をチェックされる
○ 年金事務所が社会保険未加入の会社のピックアップして調査
→ 日本全国的に重点的に加入を促す動きをしている地域が多数ある
となっています。
さらに、今年の3/1には「マイナンバー法案」が可決されました。
この法律では全国民に番号を割り振って、
○ 納税実績
○ 年金などの社会保障
の情報を一元管理する事を目的としています。
この法案が動き出すのは遠い未来の話ではありません。
具体的に「調査が厳しくなる → 加入させられる」となった段階で、
慌てていては遅いのです。
なぜならば、
1、未加入の社員、パート社員などを全員加入させる
2、加入させられるなら、退職する社員、パート社員が多数出る
3、業務に必要な人数の確保が難しくなる
4、手取りが加入前と同じになるように給与額を増額するしかない
という状況が想定されるからです。
多くの会社は予防医学的なリスク回避の道を歩むことができず、
結果として、問題が大きくなってからご相談にいらっしゃるのです。
しかし、これは健康に気をつかわない生活をして、
大病を患ってから手術するのと同じことです。
何でも同じですが、事前の対策が重要なのです。
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■編集後記
先日、3年前のセミナーにご参加いただい方から、
就業規則の作成をご依頼いただきました。
その会社には「休職のルール」がなかったのですが、
該当する社員が現れたのです。
その時に私のセミナーのことを思い出し、ご依頼いただいたのです。
「休職のルールは法的に必須では無いですが、該当者が現れたら
問題になりやすい箇所ですので、作っておきましょう。」
という内容が鮮明に思い出されたとお話されていました。
講師冥利につきますね。
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