社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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採用時のリスク


2013年5月16日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

いつもありがとうございます。

 

今回は「採用時のリスク」を解説します。


5月は第2次新卒採用や中途採用などが活発となってくる季節ですが、

会社として採用活動について、気をつけることがあります。


それは「社員を募集する際の労働条件の明示」についてなのですが、

次の労働条件は書面での交付が必要なのです。


○ 業務内容

○ 契約の期間

○ 働く場所

○ 仕事の開始時刻、終了時刻

○ 残業があるか無いか

○ 休憩、休日

○ 給料

○ 社会保険 

等です。


これらの条件については募集してきた人に誤解を与えないように、

わかりやすい表現で表示しないといけないのです。


これは職業安定法という法律で決まっています。


そして、労働条件を偽って募集をかけたり、広告を行った場合、

職業安定法により「6月以下の懲役、または、30万円以下の罰金」

と定められています。


さらに、募集の条件と採用後の労働条件とが異なり、

トラブルとなるケースは「よく」あります。


これに関連する裁判があります。


<丸一商店事件 大阪地裁 平成10年10月30日>

○ 残業が多い社員がいた

○ 別にもう1人雇用し、残業をやめてもらおうとした

○ 社員は「今後、残業代がもらえないなら辞める」と退職した

○ この社員の採用時の募集要項には「退職金あり」と記載されていた

○ 退職後、退職金がもらえないので裁判を起こした


そして、裁判所は以下の判断としたのです。

○ 会社に退職金規定は無いが、募集要項に「退職金有り」、

    「退職金共済」と記載あり

○ 会社は退職金共済制度に加入すべき労働契約上の義務がある

○ 労働契約の内容である退職金共済制度への加入を会社が怠った

〇 退職金の支払を免れることはできないとして、会社が敗訴した


この裁判からわかることは「実際に退職金共済制度に加入していなくても、

求人票に退職金があること、退職金共済制度に加入することが明示されて

いた場合には、労働契約の内容になり、退職金支払義務がある」

ということです。


もし、皆さんの会社で退職する社員が入社時の求人票を持ってきて、

「退職金ありとなっているので払って下さい」と言われたらどうしますか?


退職金規定がなくても、支払わなければならなくなるかもしれないのです。


ハローワーク等に求人票を気軽に出されている場合も多いですが、

この裁判のように募集時の労働条件と採用後の労働条件が異なると

大変なことになる場合もあるのです。

 


それから、退職金の話ではありませんが、

○ 募集してきた人のスキルが会社が望む基準に達していない

○ 基準に達してはいないが、採用しようと判断した

○ 募集要項には基準のスキルに達している前提の内容が記載されている

○ 募集要項に記載した給与よりも低い金額で採用したい

という場合もありますが、こういう場合はどうしたらいいのでしょうか?


これに関して参考となる裁判が

ファースト事件(大阪地裁 平成9年5月30日)となります。


それは「採用面接の結果、就職希望者と会社とで広告内容と異なる合意が

されれば、その合意に従い、賃金が決定される」ということです。


さらに、リスクを回避することを考えれば、

○ 労働契約書を締結する

○ 「求人票の条件となぜ異なるのか」という理由を伝え、

  経緯、面談時の内容を記録として保存しておく

ということが必要になってきます。


この場合、単に契約書の締結だけだと「信義則に反する」として、

裁判で慰謝料を請求されたものもあります(会社が敗訴)。


だから、必ず説明を行い、その記録を記録しておいてください。


記録があれば、裁判等になった場合には大きな証拠となります。

 


このように、求人から採用にかけては慎重に行わないと、

その後のリスクが膨らんでしまう場合があります。


ただし、会社にとって一番大事なことは「社員との信頼関係」です。


仮に、労働条件が募集時と採用時で異なったとしても、

「信頼関係」を構築できていれば、大きな問題にはならないでしょう。


しかし、これを軽く考えている社長が多いことも事実です。


このメルマガでは法的な形式要件、リスク回避の方法などを

お伝えしています。


もちろん、これらは「最低限」必要なものです。


ここが整っていなくては話になりませんから・・・。


しかし、ここが整っていたとしても、

その運用、社員との信頼関係が構築されていないならば、

意味が無いものになってしまうのです。


全く同じ労働環境のA社とB社でも、

A社は労使トラブルなし、B社は労使トラブルを繰り返す、

ということは「よく」あるのです。


ご注意下さいね。

 

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(株)日本中央会計事務所・日本中央社会保険労務士事務所
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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

ご注意ください。

 

■編集後記

このメルマガは出張中の会津若松のホテルで書いています。


会津には年に何回お伺いしますが、今の時期が一番過ごしやすいですね。


また、今年はNHKの大河ドラマ「八重の桜」の舞台でもあるので、

観光客の姿も多く、町が昨年よりにぎやかな印象です。


ただ、東日本大震災で会津に避難されている方々も

数多くいらっしゃいます。


仮設住宅が建ち並ぶ風景は、震災の影響が時間を超えて訴えかけていると

感じてしまいます。 


一刻も早い復興をお祈り申し上げます。


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