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2013年6月 6日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「アルバイトをしている社員の処分は?」を解説します。
先日、ある社長さんからご相談を受けました。
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女性社員が会社の許可を得ずにアルバイトをしています。
終業後の夜6時から10時まで、週に1回ぐらいは飲食店で
働いています。
ただし、当社の就業規則では会社の許可がない兼業は禁止しています。
この場合、どのような処分をすればよいのでしょうか?
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アルバイトなどの兼業は、多くの会社で就業規則にて禁止されています。
これは本業への影響を考えてのことですが、
法律の禁止事項ではなく、就業規則で禁止されているのです。
逆にいえば、就業規則が無ければ、禁止はできないので、
この取扱いを明記しておくことが必要なのです(下記)。
(公務員などは法律で禁止されていますが。)
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従業員は以下に掲げる業務専念義務に関する事項を守らなければならない。
○ 会社の事前の許可なく、他社に雇用されるなど、
報酬を得て第三者のために何らかの行為をしないこと。
ボランティアなどの公益的行為であっても、
会社の勤務のための精力が分散されると認められるときは、
会社の事前の許可を得なければならない
○ 会社の事前の許可なく、勤務時間中に政治活動、宗教活動、
業務に関係のない放送、宣伝、集会、又は文書画の配布、回覧、
掲示その他これに類する活動をしないこと。
○ 勤務時間中は許可なく職場を離れ、若しくは責務を怠る等の行為
をしないこと
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結果として、就業規則にこのような記載がないと、
アルバイト、自宅での副業等に関する処分を実施することはできません。
これに関する裁判があります。
<日通名古屋製鉄作業事件 名古屋地裁 平成3年7月22日>
○ 運送、荷役を行なう会社に勤務していた社員が、
無断で他のタクシー会社で運転手をしていた
○ 就業規則には「許可なく他に就職したときは懲戒解雇に処する」
という定めがある
○ 会社は社員がタクシー運転手として兼業をしていたので、
就業規則どおり懲戒解雇とした
○ 社員はこれに対し、「勤務時間外の事なので、解雇は無効」
と主張、裁判所へ訴えた
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
○ 勤務時間外において、社員は会社の支配を離れ、自由である
○ しかし、勤務時間中の労務の提供に影響を及ぼすものならば、
一定の規制を受けることはやむを得ない
○ この事例のタクシー業は深夜にも及ぶことも多々ある
○ アルバイトだったとしても、余暇を利用する程度ではない
○ 懲戒解雇は有効
また、別の裁判(高槻市消防署大冠分署事件 大阪地裁 平成11年2月
3日)では兼業の業務内容が問題となりました。
それはダイヤルQ2事業を経営していた市消防署職員に対する懲戒免職で、
裁判所は「兼業していた業務内容が不適切」としたのです。
一方、懲戒解雇が無効となった裁判(上智学院地位確認等請求事件
平成20年12月5日)もあります。
これは上智大学の教員が、同時通訳を行うために授業を休講と代講に
して懲戒解雇となったのです。
ただし、同時通訳の仕事は政府機関等の国際会議等の業務だったため、
公的な職務とみなされた結果、懲戒解雇は無効となったのです。
このように、兼業禁止に違反する社員がいたら、
○ 兼業の頻度、時間のチェックし、本業への影響をみる
→ 毎日働いていて本業に影響が出ていれば、解雇も検討
→ 深夜時間帯(午後10時~午前5時)に兼業していても、解雇を検討
○ 業務内容が「不適切」かどうかで解雇を検討する
→ 不適切かどうかに明確な基準はなく、企業の信用失墜につながるか
どうかということがポイントです
などの必要があるでしょう。
冒頭のご相談のように、
○ 週1回程度
○ 深夜時間帯(午後10時以降)に働いていない
という状況ならば、就業規則に記載があったとしても、
解雇までは難しいと考えられます。
ただし、解雇まではできなくても、懲戒処分の対象にはなります。
この場合、
○ 譴責(けんせき)
→ 規則に反した者などに対し、始末書を書かせて提出させ、戒めること
○ 減給処分
などが妥当と考えられます。
また、冒頭のご相談は午後6時からアルバイトが始まると、
残業を命じた際にできない可能性もあるため、処分は必須です。
さらに、夜の飲食業ということなので、頻度が増すなどの状況によっては
もっと厳しい処分も検討しないといけません。
この事例と類似した裁判(小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月
19日)では、
○ 就業規則に兼業禁止の記載あり
○ キャバレーに11ヶ月間勤務
○ ほぼ毎日、午後6時から深夜0時までの間という勤務時間
という内容で、「解雇は有効」とされました。
この判決では「兼業の内容によっては企業の対外的信用、体面が
傷つけられる場合もあり得る」としています。
だから、冒頭の事例でも兼業の内容が居酒屋やバーではなく、
キャバレーなどであれば、もっと厳しい処分が必要かもしれません。
それから、少し前に大阪府の公立学校の女性教員が風俗で
アルバイトをしていた事例が報道されました。
懲戒処分(6か月の停職)と報道されていましたが、
これも対外的な信用の失墜ということとなります。
もっとも公務員の場合は法律で兼業禁止ですが。
正直なところ、会社が知らないだけで社員の兼業の問題はよくある話です。
もちろん、業務に影響が無ければいいのですが、
何かの事故、クレームにつながるリスクは常にあるのです。
こうなると、本人の問題だけでなく、会社全体の信用失墜ともなります。
懲戒処分の運用をどうするかはケースバイケースですが、
まずは就業規則を整備しておくことが重要なのです。
このように、まずは形式整備が重要なのですが、
多くの会社はそもそもこれができていません。
中には、労働基準法違反だけでなく、民法違反になっている就業規則も
よくあります。
何はともあれ、まずは形式を整えることが大切なのですが、
私が全ての会社の就業規則をコンサルする訳にはいきません。
こう言ってはなんですが、
「就業規則を社労士さんに作ってもらったばかりです!」と
胸を張ってお話しされる会社の就業規則を見たら、
ボロボロだったということは【よく】あります・・・。
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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、
ご注意ください。
■編集後記
先月31日に厚生労働省より、平成24年度の総合労働相談コーナーの
相談件数、内容などが発表されました。
これによると、今までの相談内容のトップは「解雇」だったのですが、
平成24年度のトップは「いじめ、嫌がらせ」となったのです。
具体的な相談件数および前年度比は以下のとおりです。
○ いじめ・嫌がらせ 51,670件(+12.5%)
○ 解雇 51,515件(△10.9%)
○ 労働条件の引き下げ 33,955件(△ 7.9%)
○ 退職勧奨 25,838件(△ 3.7%)
社内でのハラスメントは職場環境の悪化となり、
更にはメンタルヘルスの問題にも繋がっていきます。
ハラスメントを防止する体制や教育を進める必要性が高まっています。
この問題は表面化すると手遅れの場合もありますので、
防止の対策がとても重要となるのです。
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