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2013年6月13日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「部下の不祥事に対する上司の処分は?」を解説します。
先日、ある会社からご質問がありました。
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部下が不祥事を起こした場合、直属の上司にもなんらかの懲戒処分を
科すことを検討しています。
これは管理者責任を自覚させるのが目的ですが、
部下の処分よりも軽くすべきか重くすべきかなどの考え方について
教えてください。
また、部下が重要な企業秘密を漏えいして懲戒解雇になる場合、
その上司も併せて解雇しても問題ないでしょうか。
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最初に結論をお話ししますが、部下が不祥事を起こした場合、
上司に懲戒処分を科すことは可能です。
ただし、これは「就業規則に定めがあること」が前提です。
逆に言うと、明確に記載がなければ、上司の処分はできないのです。
就業規則の参考条文は以下となります。
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(制裁の事由)
第○条 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、情状に応じ、
訓戒、譴責、減給、出勤停止又は降格降職とする。
<中略>
○ 部下に対して、必要な指示、注意、指導を怠ったとき
○ 部下の、懲戒に該当する行為に対し、監督責任があるとき
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そして、上司の責任として懲戒処分を行う場合は
○ 管理者として監督指導義務の不履行があったか?
○ 規律違反(不履行)の程度はどのレベルか?
○ 会社に前例があるかどうか?
ということが重要です。
また、通常の場合は「上司の処分 < 部下の処分」となるでしょう。
しかし、部下の行為が重大な違反で、会社に大きな損害をもたらす場合、
行為の阻止、発見の遅れについて、上司に重大な過失があるならば、
懲戒解雇の対象になり得るのです。
これに関する裁判があります。
<関西フエルトファブリック事件 大阪地裁 平成10年3月23日>
○ 経理担当社員が多額の金銭を横領していたのが発覚
→ 売掛金を偽造した
○ 上司である営業所長は何回もこの社員と飲食をともにした
→ 合計数十万円、経理担当社員が全額を支払う
→ 経理担当社員の給料は月給20万円程度
○ 営業所長は「横領の事実には気がつかなかった」と主張
○ 会社は営業所長を「重大な過失により、会社に損害を与えた」として、
懲戒解雇としたが、納得のいかない営業所長は裁判に訴えた
そして、裁判所の結論は以下となったのです。
○ 健全な常識を働かせれば、部下の行為に不審の念を抱き、
金銭を横領していることを知り得る情況あった
→ この社員のお金の使い方が派手
→ 現預金の残高を確認すれば、経理担当社員の横領を簡単に発見できた
○ 営業所長が経理関係のチェックを「著しく怠った」ために
被害額が増大した
○ 営業所長の重大な過失を認め、就業規則の懲戒事由に該当する
として懲戒解雇は有効(管理、監督義務違反による懲戒解雇は有効)
通常の業務として経理関係のチェックをしていれば、未然に防げたし、
チェックを著しく怠ったために被害額が増大したことが
「重大な過失により会社に損害を与えた」と認められたのです。
結果として、重大な過失の場合には、
上司への制裁としての懲戒解雇が認められることもあるのです。
冒頭のご質問に戻りましょう。
重要な企業秘密を漏えいをした部下の上司にも解雇を検討する場合、
処分のポイントは以下となります。
○ 企業秘密の漏えいが発見できなかったことに重大な過失があるか?
○ 漏えいを見過ごしていないか?
だから、この発見の遅れの原因が管理の怠慢、放置、故意などの場合は
重過失として、解雇を検討する必要があるかもしれません。
しかし、通常の管理を行っていた場合、解雇は無理なので、
解雇よりも軽い懲戒処分を検討することになります。
当然ですが、巧妙な手口で行われ、
簡単に発見できないような不正ならば、上司に重い処分は科せません。
ただし、こういう時は
○ 譴責(けんせき):始末書を提出させ、反省を促す
○ 減給:始末書を提出させ、給料の10%カットなど
という懲戒処分が相当と考えられます。
もちろん、このような不正行為は発生しないことが一番です。
しかし、実際にこういう事件が発生した会社の社長は
「彼がそんなことをするなんて・・・」と必ずお話しされているのです。
だから、
○ 不正が起きない(起きにくい)社内システムを構築する
○ 業務上横領については民事事件、刑事事件の両方の側面があることを
伝える(執行猶予がつかず、実刑となることも「よく」あります)
○ 入社時に保証人を付けさせる(大企業では必ず行います)
ということが大切です。
そして、管理者である上司にも管理する意味を
「繰り返し」伝えていくことが重要です。
当時の史上最年少で東証一部上場を果たした(株)ネクシィーズの
近藤太香巳社長は「部下は信頼しても信用するな」とお話しされています。
報連相もそうですが、不正が起きない社内システムの構築、
社内文化や上司と部下の人間関係の構築など、不正が起きる会社と
起きない会社では「明らかな」違いがあるのです。
そういうことを日々の企業活動の中で行っていく必要があるのです。
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■編集後記
労働基準監督署の調査対象は業種で選別されることがよくあります。
この春、香川県ではうどん店に対して調査が重点的に実施され、
その結果、午前5時以前の早朝勤務に割増賃金が支払われていないケース
が多発していたとの事でした。
また、東京都港区ではテレビ局や関連会社が沢山ありますが、
最近はテレビの番組の制作会社を中心に調査が実施されました。
その他にもITバブルの頃は六本木ヒルズのIT会社などを中心に
一気に調査が入ったこともあります。
このように労働基準監督署の調査も「土地柄」、「時節柄」が
出ていますね。
だから、同業他社に入ったならば、
「うちにも来るかも」と想定しておくことが大切です。
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