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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2013年6月27日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「残業命令を拒否されたら、解雇できるか?」を解説します。
皆さんの会社では残業させる時はどのように運用していますか?
上司が残業を許可していますか?
それとも、社員が勝手に残っていますか?
本来、残業とは「所定労働時間をオーバーして働く時間」なので、
上司からの指示で行うものなのです。
逆にいうと、上司の指示が無いと残業してはいけないのです。
そこで、アフター5に予定がある日に上司が残業命令をしたという
状況を考えてみましょう。
この場合の答えは「残業命令が優先」します。
これに関する裁判があります。
<日立製作所武蔵工場 最高裁 平成3年11月28日>
○ 上司が部下に製造効率が低下した原因解明のため、
残業するように命じた
→ 部下の手抜き作業の結果、効率が低下した
→ 時間外労働、休日出勤に関する協定は会社と社員代表との間で締結済
→ この協定を一般的に36協定といいます
○ 社員はこの命令に従わなかった
○ 会社は社員に始末書の提出を求めたが、提出しなかった
○ 会社は労働組合の意向も聴取した上で、就業規則上の懲戒事由に
該当するとして社員を懲戒解雇した
→ 就業規則には「業務命令違反は懲戒解雇」と記載あり
○ 社員はこれを不服として、裁判を起こした
そして、裁判は最高裁までいき、結果は以下となりました。
○ 同社の就業規則は合理的なものであり、本件は懲戒に該当する
○ 36協定は有効であり、社員は残業の義務を負う
○ 残業命令は社員本人の手抜作業の結果を追完、補正するためのもの
○ 諸事実を考え併せると、懲戒解雇は権利の濫用には当たらないとして、
会社が勝訴した
ここでポイントとなるのは36協定が締結されているか否かです。
今回の場合、残業の具体的な内容が36協定によって定められており、
これに従った残業命令ということが確認されています。
ちなみに、残業命令に関する36協定の具体的内容は以下の記載と
なっていました(残業を命じてもOKな場合)。
○ 納期に完納しないと、重大な支障を起こすおそれのある場合
○ タイトなスケジュールでの給与計算、または、棚卸、検収、
支払い等に関する業務などの場合
○ 配管、配線工事等のため、所定時間内に作業することが困難な場合
○ 設備機械の移動、設置、修理等のために作業を急ぐ場合
○ 生産目標達成のために必要がある場合
○ 業務の内容によりやむを得ない場合
○ その他、これらに準ずる理由のある場合
○ 労働時間を延長する場合でも月40時間を超えないものとする。
ただし、緊急的にやむを得ず月40時間を超える場合は、
事前に協定を締結する
ここまで具体的に残業の理由が記載されているので、
最高裁は残業命令の有効性を評価したのです。
さらに、懲戒解雇についても
○ 就業規則による懲戒解雇
○ 懲戒解雇に至る過程の中で労働組合からの意見聴取を実施
○ 始末書の提出等を求める注意、指導を実施している
ので、懲戒解雇は当然と考えたのです。
しかし、この判決とは逆に残業命令違反による懲戒解雇が無効と
なった裁判もあります。
<トーコロ事件 最高裁 平成13年6月22日>
○ 残業を拒否した社員を懲戒解雇した
→ 36協定は締結されていた
○ 社員は懲戒解雇の無効を訴えて裁判を起こした
そして、最高裁の判決は以下となったのです。
○ 会社の36協定は社員代表の選出に不備があり、無効
○ 36協定が無効なので、それを前提とする残業命令も無効である
○ 懲戒解雇は無効であるとして会社が敗訴
この2つの裁判から、36協定が有効に機能していないと、
残業命令を発せられないということがわかります。
もっとも、労働基準法での所定労働時間は
○ 1週間で40時間
○ 1日で8時間
と決められています。
この時間を越えて残業させる場合は36協定を締結して、
残業時間の設定が必要になるのです。
これは「1時間だけでも残業してもらう場合」は
この協定書の締結が絶対に必要なのです。
そして、36協定の締結のポイントは
○ 残業時間の時間数
○ 休日出勤の日数の設定
○ 社員代表との締結
→ 有効な選出方法で選ばれた社員代表との締結が必要
○ 有効期間は最長1年間
となっています。
さらに、従業員1人の会社でも、
残業させる場合は36協定の提出が「法的な義務」となるのです。
また、上記の通り、36協定の有効期間は1年ですが、
これを徒過したまま、放置されているケースがよくありますので、
この点も注意しましょう(自動更新はできません)。
このように残業命令を出す場合は、「有効な36協定」が
締結されていることが必要です。
だから、有効な36協定があれば、
仮にアフター5に予定が入っていても残業してもらうことが可能なのです。
ただし、アフター5の予定の内容にも配慮すべきですし、
健康上の問題も考える必要があります。
また、育児、介護などの事情も十分考慮する必要があるでしょう。
結果として、36協定が有効であっても、
総合的な状況の中で判断することが最も重要なことです。
そうしないと、感情的なねじれが生じ、
労使トラブルに発展する可能性もあるのです。
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ご注意ください。
■編集後記
先日、厚生労働省は平成24年度の脳、心臓疾患、精神障害の
労災補償状況を発表しました。
脳、心臓疾患、精神障害ともに労災請求件数は前年度を下回ったものの、
支給決定件数が増加しています。
特に、精神障害は大幅に増え、過去最多を記録しているのです。
確かに、メンタル面でのご相談は数年前より確実に増えており、
この問題はますます増えていくと考えられます。
会社として「何をすべきか」を考える必要がありますね。
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