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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2013年7月11日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「通勤手当の不正受給の対応」について解説します。
給料の不正受給といえば、通勤手当の水増しが大多数を占めます。
正直なところ、相当な数であり、多くの会社で大なり小なりの
通勤手当に関するトラブルが発生しているのも事実です。
もっとも、
○ 経路が複数あり、故意ではないかもしれない
○ 混雑状況や通勤時間との関係もあるかもしれない
という個別事情も異なるので、一概に不正とは言えないかもしれません。
しかし、明らかに異なる通勤経路の場合は「懲戒解雇」となる場合も
あるのです(懲戒処分ではなく、懲戒解雇です)。
これに関する裁判があります。
<かどや製油事件 東京地裁 平成11年11月30日>
○ 社員は品川に居住しながら、宇都宮市に住民票を移し、
4年半の間に合計231万円の通勤手当を不正受給した
○ 就業時の勤務態度も問題が多く、よく席を立つ(相当な頻度)
○ 会社は社員を懲戒解雇とし、社員はこれを不服として裁判所に訴えた
そして、裁判所の判断は以下となりました。
○ この件は就業規則に記載される懲戒解雇に該当する
○ 理由は「上司に無断で離席し、業務遂行をほとんど放棄していた」、
「不誠実な勤務態度」、「通勤手当の不正受給」
○ 会社が勝訴
この裁判では「不誠実な勤務態度」、「虚偽の住所申告」という
2つの理由により、懲戒解雇が有効となったのです。
しかし、懲戒解雇が無効となった裁判もあります。
<光輪モータース事件 東京地裁 平成18年2月7日>
○ 社員は通勤経路を安い経路に変更し、4年8ヶ月間で合計34万円を
不正受給した
○ 会社はこの事実を突き止め、社員を懲戒解雇とした
○ 社員はこれに納得いかず、裁判を起こした
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
○ 故意、または、重大な過失により会社に損害を与えたという
就業規則上の懲戒事由に該当する
○ 通勤時間が長くなっても、自分の労力をかけて交通費を節約した
○ 会社の現実的な経済的損害が大きくないこと
○ 懲戒事由には該当しても、懲戒解雇までの厳罰は無効とし、
会社は敗訴となった(減給等の処分であれば、OKだった)
この2つの裁判から分かることは
○ 不正受給した金額の大小
○ 悪質性の程度
により、懲戒解雇が有効となるかどうかが分かれるということです。
もちろん、解雇まではいかなくても、どんな場合であれ、
懲戒事由には該当するのですが。
また、悪質性の程度については、
○ かどや製油事件・・・住所の不正申告という詐欺的な行為
○ 光輪モータース事件・・・通勤手当を少し浮かすために、
経路の変更(遠回り)を行なった程度
という判断になったのです。
世の中で起きている多くの場合は後者でしょうが、
通勤手当の不正受給は以下の事例に分けられます。
○ 複数の駅から通勤可能である場合、実際に利用している駅ではなく、
通勤手当が高くなる駅を届け出ている
○ 高額となる公共交通機関を利用すると届け出て、
実際は低額の公共交通機関を利用している
○ 乗継ぎがなくてもOKなのに、乗り継ぎをするように届け出ている
○ バス等の公共交通機関を利用すると届け出ているが、
実際はバイク、自転車、徒歩で通勤している
○ 届け出た住所には居住しておらず、そこより距離の近い別の場所
(例えば、同棲先など)から毎日出勤している
○ 近くに引っ越したにも関わらず、会社に届け出ず、
従来の高い通勤手当を受給し続ける(これは多いです)
このような状況が発覚したら、まずは事実の確認が必要です。
また、噂などで情報が入った場合は放置せず、
本人に間違いないかどうかの事実確認を行なうことが大切です。
そして、事実の確認ができたら、以下の行動に移しましょう。
○ 返還請求
不正行為が発覚し、事実なら本人に不正請求額の返還請求を行なう
→ 過去10年遡って行なうことが可能(民法167条1項)
○ 懲戒処分
虚偽の届出により不正受給した社員に対するペナルティを科す
→ 就業規則の懲戒処分の規定に基づき、不正の程度に応じて
懲戒処分を行なう
→ 悪質な事例を除けば、減給などの処分が妥当と考えられる
→ 悪質な場合は懲戒解雇も検討する
このように、厳格に対応することが望ましいでしょう。
さらに、一番のポイントは「不正受給を防止するための方法」です。
それは、
○ 本人申請の経路を必ずチェックする。
→ 経路についてはネット検索で検証
→ 利用する駅が合理的かを住所から地図で検証
○ 定期券のコピー提出を義務付ける
○ 不正行為が発覚した場合の返還請求期間、懲戒処分の内容などを
告知する(就業規則に記載)
などです。
ここまで対応すれば、通勤手当の不正受給は発生する可能性が
低くなります。
正直なところ、「通勤手当の不正受給は不正行為である」という認識が
低い社員もおり、相当な件数のご相談があることも事実です。
また、こういうことがまかり通っている会社は
他の部分も(労務に限らず)適当になっていることがよくあります。
この状態では会社の発展はありませんし、仮に業績が伸びていたとしても、
それはリスクを抱えたまま走っていることになります。
細かいことかもしれませんが、
きちんとルール化し、運用していくことが企業発展の秘訣なのです。
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■編集後記
厚生労働省と国土交通省は運送業における社会保険、労働保険の
未加入会社に対する今後の取り組みにつき、課長級会議を実施した
とのことです。
これによると、「運送業の企業数の増加はみられたが、
社会保険と労働保険未加入の事業者が目立ち、不健全な状態」という
報告がありました。
この報告では「3年以内に全体の未適用事業所を半減させる」との
記載がありますので、運送業の方は何らかの形で調査があるでしょう。
今から準備することをお薦めします。
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