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2013年10月24日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「管理職と残業代の関係は?」を解説します。
年俸制を採用する会社は増えており、特に「管理職は年俸制を採用
している」という会社は本当に多くなっています。
先日もある社長から
「年俸1,000万円でマネージャーを採用するので、
残業代と休日出勤手当の支払いは不要ですよね?」
とのご質問がありました。
管理職は法的に残業代と休日出勤手当の支払いが免除されていますので、
年俸制の制度は管理職にはマッチしています。
ただし、「法的に」管理職として認められるには、一般の社員と比べて
その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要
ですが、それだけでは認められないのです。
これに関する裁判があります。
<HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件 東京地裁
平成23年12月27日>
〇 社員は会社に年俸1,250万円でヴァイス・プレジデントとして
中途採用された
〇 3ヶ月の試用期間満了後、本採用を拒否された
〇 社員は未払い残業代とその付加金の支払いを請求し裁判を起こした
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
〇 管理職とは労働条件の決定や労務管理について、経営者と一体の
立場のある者をいう
〇 社員は部下がいない
〇 部下がいないので、労務管理上の決定等の裁量は無いため、
管理職とは認められない
〇 会社に未払残業代として約325万円の支払いを命じた(会社が敗訴)
この裁判のポイントは管理職と認められるためには以下の要件が
必要ということがクリアになったことです。
(1)職務の内容が、少なくともある部門の統括的なもので、
部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有している
(2)自分の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有している
(3)一般の従業員と比べ、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇
を与えられている
以上の3つの要件を満たしていないと、「法的に」管理職として
認められないのです。
また、この裁判では「年俸の中に残業代が含まれていることは社員も
合意している」と会社は主張しています。
これに対し、裁判所は
〇 年俸のうち残業代にあたる部分はいくらか?
〇 年俸のうち残業以外にあたる部分はいくらか?
と質問しました。
これに対して、会社は明確に回答することができなかったのです。
結果として、裁判所は年俸のうちに残業代とそれ以外の部分を「明確に」
区分することができる場合のみに「年俸に残業代が含まれていると主張
できる」と判断したのです。
管理職の残業の請求で有名なのは日本マクドナルド事件(東京地裁
平成20年1月28日)です。
この裁判でも、管理職に該当するためには下記とされています。
〇 職務内容、権限、責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業
経営に関する重要事項に関与している
〇 勤務が労働時間の規制を受けていない
〇 給与が管理監督者にふさわしい待遇である
そして、これらを総合的に勘案して判断をしており、
上記のHSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件と判断基準は
ほぼ同じとなっております。
このように3つの要件が整っていないと管理職としては認めらませんので、
ご注意ください。
冒頭のご質問に戻りますが、年収が1,000万円以上だとしても、
それだけではもちろん求められません。
また、役職名が課長や部長でも、実際に部下がいて、
労務管理を行っていないといけないのです。
日本マクドナルドの裁判で「名ばかり管理職」と言われたのは、
このことから来ているのです。
皆さんの会社では年俸制の管理職となっている方はいませんか?
そして、その方は上記の条件を満たしていますか?
もし、満たしていないならば、それは未払い残業請求のリスクを
抱えていることになるのです。
だから、この場合は給与の体系を見直して、残業代の部分を「明確に」
することが必要となるのです。
実際、上記のHSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件でも
会社は「年俸に残業代が含まれている」と主張したのですが、
その区分を明確に主張できず、負けた訳ですから。
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■編集後記
国税庁の民間給与実態統計調査によると、平成24年の平均年間給与は、
408万円で前年比0.2%減とのことでした。
平成9年をピークに減少傾向は止まっていないのです。
もっとも減少しているのは中高年層で、40歳代では1.5%も
下がっているのです。
この数字だけを見るととても厳しい状況ですね。
アベノミクスももう少し頑張ってもらわないと、
景気回復が掛け声だけになってしまいますね。
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