社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

労働問題のご相談、労使トラブルのご相談なら 東京都 港区の社会保険労務士 内海正人

給料減額に異論がなければ承諾となるのか?


2013年11月 7日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


 おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

今回は「給料減額に異論がなければ承諾となるのか?」を解説します。

 

 

アベノミクスで「給料を上げよう」と叫ばれていますが、

 

中小企業はまだまだ厳しいところが現実です。

 

 

実際、私のところには、多くの会社から「給料を下げたい」という

 

ご相談があります。

 

 

しかし、給料を下げることは社員にとっては厳しい問題でもあり、

 

法的にも「労働条件の不利益変更」は社員の同意が無ければ、

 

禁止となっています。

 

 

ただし、同意がないままに減額し、単に社員が下がった給料を

 

もらい続けたら、これは「承認した」とみなされるのでしょうか?

 

 

これに関する裁判があります。

 

 

<技術翻訳事件 東京地裁 平成23年5月17日>

 

 

〇 会社の業績が悪化したため、社員の給料を20%下げることとした

 

〇 役職者が出席する会議で制作次長は反対した

 

→ 役職者のみが参加する会議だった

 

→ 役職者以外の社員にも説明はされたが、実質的に異議を述べる機会は

 

  与えられなかった

 

〇 減額された給料が振り込まれたが、制作次長は抗議は行わなかった

 

〇 その後、制作次長は退職し、「減額は違法である」と裁判に訴えた

 

 

そして、裁判所の判断は以下となったのです。

 

 

〇 給料は労働条件の最も重要な要素であるので、合意内容を書面化

 

  することが望ましい

 

〇 就業規則に基づかない給料の減額は賃金債権の放棄と同じぐらい

 

  厳格に行うべき

 

〇 社員から合意書などの承諾がない場合、それに代わる合理的な事情が

 

  なければ認められない

 

〇 本件は合意書面がなく、また、これに代わる合理的な事情がない

 

 

以上により、会社が敗訴したのです。

 

 

この裁判のポイントは

 

〇 合意書等の書面があれば、給料の減額を認める

 

〇 書面等がなくても合理的な理由があれば認められる

 

という点です。

 

 

しかし、実際に合意書がなくても認められている裁判もあります。 

 

 

<エイバック事件 東京地裁 平成11年1月19日>

 

 

〇 会社の資金繰りがひっ迫したため、社員の給料を固定給から

 

  固定給と歩合給に変更した

 

 

〇 説明会で変更の同意を求めたところ、その場で反対する社員は

 

  いなかった

 

 

〇 減額された給与が振り込んだが、異議を述べる社員もいなかった

 

 

〇 その後、この状況に納得できない社員が裁判を起こした

 

 

そして、裁判所は「黙示の合意が認められた」として、

 

会社が勝訴したのです。

 

 

この2つの裁判の違いは「書面がなくても合理的な理由があるかないか」

 

ということです。

 

 

具体的には

 

○ 給料が下がるという不利益について、社員に周知徹底されていたか?

 

○ 公的な説明会の場など、異議を申し立てる機会が適正に与えられて

 

  いたか?

 

ということがポイントになります。

 

 

また、以下の要素も加味されて判断されています。

 

 

〇 社員が被る不利益の程度

 

〇 会社の変更の必要性、内容、程度

 

〇 変更後の就業規則、給与額の相当性

 

〇 給与を減額する代償としての措置、その他の労働条件の改善状況

 

→ 例:労働時間の短縮

 

〇 社員等との交渉の経緯

 

〇 同業他社における状況

 

 

以上のように給料を下げることについて、必ず合意書が必要という訳

 

ではありません。

 

 

しかし、合意書がなくても給料を下げることが法的に認められるには

 

社員の合意は必要です。

 

 

また、後でトラブルを回避することを考えれば、合意書を提出して

 

もらった方が無難です。

 

 

また、さらに注意するポイントがあります。

 

 

それは就業規則や賃金規定で給料の金額等が明記されている場合※で、

 

変更後にそれらの規定を従前のまま放置した場合です。

 

 

※役職の階層ごとの賃金テーブルがある場合など

 

 

この場合、合意書により減額された給料の額よりも、

 

就業規則や賃金規定の給料の額が上だったら、就業規則や賃金規定の

 

条件が優先してしまうのです。

 

 

だから、給料の減額(不利益変更)と就業規則や賃金規定の改定は

 

必ず「同時に」行なってください。

 

 

そうしないと、苦労して合意書を集めても、無駄になってしまうのです。 

 

 

ご注意下さいね。

 

 

 

--------------------------------------------------------------------

(株)日本中央会計事務所・日本中央社会保険労務士事務所

取締役・社労士 内海正人(うつみまさと)

住所:東京都港区西新橋1-16-5コニシビル4階

電話:03-3539-3047

 

○顧問契約、単発のご相談(就業規則、雇用契約書など)のお問合せ

https://www.roumu55.com/komon.html

--------------------------------------------------------------------

 

●ご友人、知人にもこのメルマガをご紹介ください。

http://www.success-idea.com/magazine/

 

 

●恵まれない方のために

 

皆さんが1クリックすると

協賛企業が慈善団体に寄付してくれます(1クリック=1円)。

 

今、自分がここにいられることに感謝し、1日1回クリックしませんか。

 

私も毎日、ワンクリックしています。 http://www.dff.jp/

 

 

●本メールマガジンは専門的な内容を分かりやすくするため、

 

敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

 

お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。

 

 

また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

先日の日曜日に湘南国際マラソンを走ってきました。

 

 

気温が19度と、フルマラソンを走るにはやや暑い気温でしたが、

 

ベストタイムより3分遅れの3時間36分でゴールできました。

 

 

海を見ながらのレースなので、とても気持ちが良いのですが、

 

後半の30キロ過ぎは、景色を見る余裕もなかったですね。

 

 

また、次の大会も決まっているので、ここで報告いたしますね!


定年と再雇用について  |  採用後に前職の非行が発覚したら解雇ですか?

無料でダウンロード

94%の会社が陥る
思わぬ組織の落とし穴!

『組織・人事の解決ノート』

組織・人事の解決ノート

下記にご入力頂ければ、無料レポートをお送り致します。

●お名前:

●メールアドレス:

解雇
社会保険
就業規則
労働時間
労使トラブル
その他
ノウハウを検索
弊社の運営するサイト


TOPお読み頂いた方の声お申し込みよくある質問事業理念事務所概要セミナー実績
ノウハウ |プライバシーポリシー特定商取引に関する法律に基づく表示

 私はチーム・マイナス6%です

 

社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
社会保険労務士 内海正人

〒105-0003 東京都港区西新橋1-16-5 コニシビル4F
TEL 03-3539-3047 FAX 03-3539-3048
E-mail utsumi@j-central.jp