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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2014年5月15日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、カリスマ社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「社員の忠実義務」を解説します。
会社と労働契約を締結した社員は、労働力を提供する義務だけでなく、
その他の義務も負うことになり、これを「付随義務」といいます。
この付随義務の1つに「忠実義務」というものがあり、これは「会社の
正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務」というものです。
この忠実義務には、
○ 会社の信用、名誉を毀損しない義務
○ 二重就業の禁止義務
○ 秘密保持義務
○ 競業避止義務(会社の事業と競争的な性質の取引を禁止する義務)
などがあります。
だから、社員は就業時間以外でも「会社の正当な利益を不当に侵害しない
よう配慮する義務」があるのです。
結果、プライベートの時間でも「会社の利益を侵害してはいけない」
ということであり、これに反した社員に対しては、解雇等の懲戒処分、
損害賠償の請求、ということもあるのです。
これに関する裁判があります。
<日本教育事業団事件 名古屋地裁 昭和63年3月4日>
○ 営業の最高責任者が担当地区の組織を乗っ取り、自分の会社を設立
しようと企画
○ 部下の従業員を大量に引き抜く行為を実施し、独立しようとした
○ この情報をつかんだ会社は営業の最高責任者を懲戒解雇とした
○ 営業の最高責任者は「業務を行うことと自信の独立は関係ない」と
主張し、また、懲戒解雇を不服として裁判を起こした
そして、裁判所は以下の判断を下しました。
○ 営業の最高責任者は会社に対して、高度の忠実義務を負うものである
○ 在職中に会社と完全に競合するライバル会社の商品を同じ方法で
販売することを企てたことは、経営方針に反対の意向を示すこと
○ 自分の地位を利用して部下の大量引き抜きを図ったことは、会社に
重大な損害を与えることは明白
○ 営業の最高責任者の行動は会社に対する重大な忠実義務違反である
○ 就業規則の条文にある「故意に会社の服務規定その他諸規則、通達に
違反したとき」、「上司の命令に従わず職場秩序を乱したとき」の
各号に該当するもの
○ 懲戒解雇は有効
この裁判のように忠実義務違反が問われるケースは実は多いのです。
そして、この忠実義務は管理職ほど重くなり、要職に就く者に対しては、
特に厳しい結果が出ています。
以下は別の裁判です。
○ 割引券を自由に発行して、その後、隠ぺい工作をした支所長を
懲戒免職として裁判となった事件で、懲戒免職を有効とした
(国鉄清算事業団事件 福岡地裁 昭和63年1月26日)
○ 取締役解任に反対した幹部職員が、経営側を批判し、従業員に対し、
「解任反対」の署名を求める行動について、裁判所は「企業秩序、経営
秩序に反する社会相当性を欠く行為」として解雇を有効とした
(重光事件 名古屋地裁 平成9年7月30日)
だから、このような行為が現実的に発生したら、会社は早急に対応する
必要があります。
ただし、その時に気を付けなければならないことがあります。
それは「行われた行為」が「就業規則等の罰則規定」に該当することが
明確、かつ、具体的に規定されているかどうかということです。
この記載がない就業規則等であれば、罰則等の対象とならず、
会社は「指をくわえて見ている」しかできなくなってしまうのです。
忠実義務に関しては就業規則の「服務規律」に記載されることが多いです。
その際に服務規律違反について、懲罰の対象となることを記載しないと
懲罰を科すことができないのです。
具体的には以下の条文を参照してください。
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第○条 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、情状に応じ、
訓戒、譴責、減給、出勤停止又は降格降職とする。
(中略)
○ 服務規律に違反したとき
2 従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、諭旨解雇又は懲戒解雇
に処する。ただし、情状により減給又は出勤停止とする場合がある。
(中略)
○ 服務規律に違反する重大な行為があったとき
--------------------------------------------------------------------
この条項は非常に長いので、今回のポイントの部分だけを記載しますので、
俯瞰的(ふかんてき)に就業規則を見直したい方は下記DVDに付いて
いるひな型(全部で91条)をご覧ください。
http://www.success-idea.com/037001/
しかし、服務規定、懲罰規定がそれぞれ独立して記載されていて、
「服務規律に違反したら、どんな懲罰となるのか」が抜けている就業規則
が多いことも現実です。
これでは「玄関にはきちんと錠がかかっているのですが、裏口はドアが
開けっ放し」ということと同じです。
社員の忠実義務と懲罰規定はリンクして初めて効果が発生するのです。
皆さんの会社の就業規則も「ここがきちんとリンクしているか?」を
チェックしてください。
そうしないと、その就業規則は「会社を守るためのもの」でなく、
逆に「会社をリスクにさらしているもの」となってしまうのです。
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■編集後記
5/10の日経新聞に「残業代 中小も5割増 長時間を抑制、政府検討」
という記事が1面に出ていました。
記事によると「政府は中小企業の残業代を引き上げる検討に入った」
とのことです。
2016年4月をめどに、月60時間を超える残業には通常の50%増し
の賃金を払うよう企業に義務付けるのです。
現在の25%増しから大企業と同じ水準に引き上げて、なるべく長時間の
労働を減らすよう促す狙いがありようです。
また、やむを得ず残業する人の収入は増えるようにし、消費を押し上げる
狙いもあるとのことですが、果たしてこのようになるのでしょうか?
微妙な感じがします・・・。
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