社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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会社の情報漏えいを防ぐには?


2014年6月19日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

今回は「会社の情報漏えいを防ぐには?」を解説します。

 

 

技術やノウハウが辞めた社員によって流出することもありますが、

 

この場合、会社のダメージはとても大きなものとなります。

 

 

これを防ぐためにライバル会社への転職等を禁止し、情報漏えいを防ぐ

 

規定を就業規則などに記載することも多いです。

 

 

これを「競業避止義務」といいます。

 

 

例えば、就業規則の競業避止義務に関する参考条文はこうなります。

 

 

--------------------------------------------------------------------

(競業避止義務)

 

第○条 従業員のうち役職者、又は企画の職務に従事していた者が退職し、

 

又は解雇された場合は、会社の承認を得ずに離職後6ヵ月間は日本国内に

 

おいて会社と競業する業務を行ってはならない。また、会社在職中に知り

 

得た顧客と離職後1年間は取引をしてはならない。

--------------------------------------------------------------------

 

 

しかし、この条文を記載しただけでは、ライバル会社への転職を防止する

 

ことが難しいのも事実です。

 

 

なぜなら、競業避止義務を社員に課しても、憲法の「職業選択の自由」

 

があるので、なかなか機能していないからです。

 

 

では、競業避止義務が有効となるには何がポイントなのでしょうか?

 

 

これに関する裁判があります。

 

 

<ヤマダ電機事件 東京地裁 平成19年4月24日>

 

 

○ 会社は家電量販店チェーンを全国的に展開しており、業界最大規模で、

 

  社員は、地区部長、店長等を務めていた

 

 

○ 社員は会社を退職し、退職の1ヶ月半後、同業他社へ入社

 

 

○ 会社には一定の役職以上の社員が退職する際には競業避止義務等を

 

  負わせており、元社員も退職時に役職者誓約書を作成し、提出

 

 

○ 誓約書には「退職後、最低1年間は同業種(同業者)、競合する

 

  個人、企業、団体への転職は絶対に致しません」と競業避止条項あり

 

 

○ 罰則規定として「上記に違反する行為を行った場合は、会社から

 

  損害賠償他違約金として、退職金を半額に減額、直近の給与6か月分

 

  を返還する法的処置を取られても一切の異議は申し立てません」と

 

  なっていた

 

 

○ 会社は競業避止義務違反として元社員を訴えた

 

 

そして、裁判所は次の判断をしたのです。

 

 

○ 元社員は店舗の販売や人事管理の方法を熟知し、店長として、

 

  複数店舗の管理に携わり、さらに、地区部長として会社の全社的な

 

  営業方針、経営戦略等を知ることができた

 

 

○ 役職者がライバル会社へ転職するとなると不利益を受けることが容易

 

  に予想されるから、これを未然に防ぐことを目的として、役職者で

 

  あった社員に競業避止義務を課すことはОK

 

 

○ 転職が禁止される範囲について、禁止の同業者の範囲は同種の家電

 

  量販店に限定されていて、退職後1年という期間も不相当に長いもの

 

  ではない

 

 

○ 損害賠償額は実際に生じた損害額を立証しない場合、退職金の半額

 

  及び給与6か月分相当額という上限を定めたものであり、その範囲内

 

  で違反の態様、退職者に生じ得る不利益等を考慮して、違約金の額を

 

  算定すべき

 

→ 本件は退職金の半額と給与1か月分相当額が違約金となった

 

 

この裁判のポイントは

 

○ 元社員が全社的な営業方針、経営戦略等を知ることができる地位に

 

  いたことなどを重視された

 

○ 競合避止義務の期間が明確であった

 

○ 転職先の範囲も限定されていた 

 

等で、損害賠償の金額そのものは減額(約420万円→約140万円)と

 

なりましたが、会社の主張が認められたのです。

 

 

このように競業避止義務が有効となるのは会社での社員の地位がポイント

 

となり、経営幹部等の役職者でなければ競業避止義務を課すことは難しい

 

と考えられます。

 

 

また、競業避止義務の期間、範囲が明示されていることも重要です。

 

 

上記の裁判では「1年で有効」と判断されていますが、2年とした場合は

 

長いと判断された裁判も多くあるので、1年以内が妥当と考えらえます。

 

 

それから、今回の裁判では争点になっていませんが、転職先の「地域的な

 

限定」等を設けることもあり得ます。

 

 

さらに、禁止行為の範囲を退職時の誓約書などに詳細に記載しましょう。

 

 

単に競業会社への転職を一般的、抽象的に禁止するだけでは合理性が認め

 

られないことが多いのです。

 

 

しかし、業務内容や従事する職種等が限定されている場合、認められる

 

ケースが増えています。

 

 

最後に、競業避止義務をより有効に働かせるために、代償措置を設ける

 

ことがあります。

 

 

具体的には「独立支援制度」「上乗せ退職金」「在職中の秘密保持手当」

 

の支給などがあります。

 

 

この代償措置は個別事情が優先されるので、退職する社員の地位や責任、

 

会社が守るべき秘密等により、その内容が変わるので、個別に検討する

 

ことになります。

 

 

以上のことを踏まえて、まずは就業規則で競業避止義務を記載し、

 

具体的に役職者等の退職が発生したら、誓約書で詳細を決めていくことが

 

競業避止義務をより有効にさせる方法なのです。

 

 

 

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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

ただ今、労働保険料の申告業務の真っただ中です。

 

 

申告の期限は7月10日で、それまでは全速力で走らないといけません!

 

 

しかし、大変なのは私よりもスタッフの方ですね。

 

 

お客様の1年間の賃金台帳を検証して、納付金額を計算しています。

 

 

建設業のお客様や社員が海外出向していらっしゃるお客様のものは少し

 

複雑なので、慎重に申告書を作成しています。

 

 

ゴールまであと少しですが、頑張ります!


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