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セクハラ判断の新しい考え方について


2014年8月28日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

今回は「セクハラ判断の新しい考え方について」を解説します。

 

 

セクハラに関する相談はときどきありますが、頭を悩ますポイントが、

 

「本当にセクハラなのか?」という判断についてです。

 

 

その前にセクハラについてみてみると主に2つのパターンに分かれます。

 

 

〇 対価型セクハラ・・・職場などにおける立場、上下関係と自身の権限

 

  を利用し、下位の者に性的な言動や行為を行う(強要する)こと

 

 

〇 環境型セクハラ・・・職場などにおいて行われる性的な言動、環境に

 

  より労働者の就業環境が不快なものとなること(ヌードポスターなど

 

  の掲示等)

 

 

ただし、この判断が難しいのです。

 

 

そもそも、現状ではセクハラは被害者(主に女性)の「主観のみ」によって

 

決められる場合がほとんどである為、セクハラの考え方に拡大解釈が生じて、

 

些細な事にまで「セクハラだ!」と騒がれる事もあるのです。

 

 

それによって職場で「セクハラだ!」と騒がれないよう過度に気を使い、

 

業務上で必要とされるコミュニケーションが円滑に進まない事もあるのです。

 

 

また、「主観のみ」によってセクハラか否かを一方的に区別される事を

 

逆手に取って、単に気に入らない人間を陥れたり、嫌がらせをしたりする

 

「便利な言葉」として扱われる場合も発生しているのです。

 

 

以上のことからセクハラに該当するか否かという判断はとても難しく

 

なっているのです。

 

 

 

 

これに関する裁判があるのでご紹介します。

 

 

<P大学事件 大阪地裁 平成23年9月16日>

 

〇 准教授(女性)に対して、教授(男性)が執拗に食事を誘った

 

〇 准教授は、上司からの誘いを断り続けるのも失礼かと思い、

 

  食事の誘いに応じた

 

〇 カウンター席で飲食した時に教授の右手が准教授の左太股の付け根部分

 

  に置かれて数秒続き、准教授は振り払ったが、7~10回程度繰り返え

 

  された

 

〇 帰りの地下鉄内で教授は准教授に体をピタリと寄せてきて、腕を組ん

 

  できた

 

〇 別れ際に腰から抱き寄せた

 

〇 この行為等について准教授は大学に訴え、教授は減給等の処分となり、

 

  これを不服として裁判に訴えた

 

 

裁判ではセクハラについて、教授の反証が続いたのです。

 

 

〇 執拗に食事に誘っていないし、実際に飲食の誘いに応じている

 

〇 仮に身体に触ったとしても、准教授は途中で離席をしていない

 

〇 帰宅後、お礼のメールが届いている

 

〇 別れ際に握手を求められた

 

〇 以上のことより「セクハラは無かった」と主張

 

 

そして、大阪地裁の判断は以下となりました。

 

〇 執拗な飲食の誘いは確認できない

 

〇 飲食店でのセクハラ行動も確認できない

 

〇 地下鉄での行動も確認できない

 

〇 セクハラは認められない

 

 

裁判はこれで終わらず、控訴となりました。

 

 

そして、大阪高裁(平成24年2月28日)は地裁と逆の判断をしたの

 

です。

 

 

それは以下となっています。

 

 

〇 准教授が飲食の誘いに応じたのは教授の地位、発言力のためであり、

 

  これを拒否すると自分の立場が悪くなると考えたため

 

〇 飲食時にセクハラ行為があっても、席を立って帰宅するのは容易

 

  ではない

 

〇 お礼のメールがあったり、握手があったとしても、この行為自体は

 

  自己に不利益を生じさせないようにしたものと考えられる

 

〇 セクハラ行為がなかったとの主張を採用することはできない

 

 

この高裁の結果として、次の新しい考え方が表れています。

 

 

〇 被害者が発信したメール等の内容がセクハラとは認められない内容で

 

  あったとしても(今回で言えば、お礼のメール)、パワーバランス等

 

  により、被害者の「やむを得ない対応」ということが認められた

 

 

〇 セクハラ行為が行われ、その場で拒否等をしなくても、被害者の意識

 

  の中で「セクハラ」と感じれば、セクハラとなる

 

 

セクハラ行為は、加害者と被害者との間で発生し、客観的な証拠が極めて

 

少なく、その判断はとても難しいです。

 

 

さらに、今回の大阪高裁の判断が加わると、被害者からのメールや行為

 

をダイレクトに受け止めても「真実ではない」と判断されてしまうことも

 

あるのです。

 

 

 

 

では、セクハラ被害が会社に報告された場合の対応をみてみましょう。

 

 

まずは、被害者、加害者からの聞き取り調査となります。

 

 

この場合、多くは意見等が対立して判断に困るということになるのですが、

 

以下のことを注意して調査をする必要があります。

 

 

〇 被害者が虚偽の供述を行う動機があるか?

 

〇 事実を正確に認識しているか?

 

〇 記憶がきちんとしているか?

 

〇 セクハラ行為の内容が具体的か?

 

〇 話の内容に整合性、一貫性があるか?

 

 

これらに留意して調査を進めていきましょう。

 

 

そして、会社としての方針を出すのです。

 

 

もし、会社がセクハラ被害を放置してしまうと、さらなる懲罰が裁判で

 

科せられるケースも出てきています。

 

 

そのような状況に陥らないためにも、セクハラ被害の報告があったら、

 

迅速、かつ、慎重に調査を実施しましょう。

 

 

 

 

さらに、就業規則にセクハラ行為は懲戒の対象と明記しないと、罰則

 

を科せられなくなるのですが、就業規則の記載の仕方に注意です。

 

 

下記は厚生労働省労働基準局監督課のモデル就業規則です(平成25年3月)。

 

---------------------------------------------------------------------

(懲戒の事由)第61条

 

<中略>

 

2.労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、

 

平素の服務態度その他情状によっては、第48条に定める減給又は出勤

 

停止とすることがある。

 

<中略>

 

(9)職責を利用して交際を強要し、又は性的な関係を強要したとき。

---------------------------------------------------------------------

 

 

この就業規則の記載だと、冒頭に解説したセクハラの2つの種類のうちの

 

1つである環境型セクハラに対応できないことになります。

 

 

(9)の文言だと対価型セクハラと言われる「直接的な行為や言動」のみ

 

に対応するものとなっているのです。

 

 

厚生労働省から「モデル就業規則」として発表されているものでも、

 

こんな「不備」があるのです。

 

 

セクハラ全般に該当する条文とするのであれば、セクハラの定義を明確に

 

して、懲戒処分の対象とすることがベストです。

 

 

例えば、下記の定義を参考として下さい。

 

---------------------------------------------------------------------

セクシュアルハラスメントとは、相手方の意に反する性的言動で、それに

 

よって仕事を遂行するうえで、一定の不利益を与えるもの又は就業環境を

 

悪化させるものをいう。

 

(1)人格を傷つけかねない、又は品位を汚すような言葉遣いをすること

 

(2)性的な関心の表現を業務遂行に混交させること

 

(3)ヌードポスターや卑猥な写真及び絵画類等を見ることの強要や配布

 

   又は掲示等をすること

 

(4)相手が返答に窮するような性的な冗談やからかい等をすること

 

(5)私的な執拗な誘いを行い、又は性的な噂若しくは経験談を相手の意に

 

   反して会話をすること

 

(6)性的関係の強要、不必要な身体への接触又は強制猥褻行為等を行うこ

 

   との他相手方の望まない性的言動により、円滑な職務の遂行を妨げる

 

   と判断される行為をすること

---------------------------------------------------------------------

 

 

このように、きちんと定義されていればいいのですが、モデル就業規則や

 

市販の就業規則をベースに作成していると、様々な点で漏れがあり、

 

何かの問題が発生した時点で「時、既に遅し」ということに気付くことも

 

非常によくあります。

 

 

そうならないためにも、市販の就業規則等ではなく、きちんとしたひな型を

 

使う必要があるのですが、市販されているものでは対応できないため、

 

下記のひな型(91条)、解説DVDを販売しているのです。

 

 

○ 適正なひな型とはどういう形式なのか?

 

○ どういう点に注意すべきなのか?

 

ということを皆さんがお知りになりたいならば、下記をご覧になって

 

ください。

 

 

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※ 91条のひな型はワードファイルでお渡ししています。

 

http://www.success-idea.com/037001/

---------------------------------------------------------------------

 

 

 

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無断使用、無断転載を禁じます。

 

これらの事実が発覚した場合は法的措置を取らせて頂きますので、

 

ご注意ください。

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●本記事は専門的な内容を分かりやすくするため、

 

敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

 

お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。

 

 

また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

本日は「ワークライフバランス推進助成金」をご紹介します。

 

 

これは東京都が主管する助成金となっています。

 

 

東京都内の中小企業が、在宅勤務制度の導入事業やモバイル利用及び

 

システム導入等による多様な働き方の実現するために必要な費用について、

 

最高100万円まで助成金として支給する制度があります。

 

 

主な条件は以下となっています。

 

 

〇 常時雇用する労働者を2名以上、かつ6か月以上継続雇用していること

 

〇 都内に本社を置いていること

 

〇 過去5年間に重大な法令違反がないこと

 

〇 都税の未納付がないこと

 

〇 その他

 

 

在宅勤務等のシステムを導入の方は、検討する価値がありますね。

 

 

なお、当社でも申請の代行を行っておりますので、お気軽にお問い合わせ

 

下さい。


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