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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2014年9月 4日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「残業時間のカウントについての新たな考え方」を解説します。
景気の回復で給料のベースアップや賞与のアップ等の話が今年の春から
夏にかけて多かったのですが、未払い残業代の問題も根強く残っています。
最近では大手エステ会社の社員が未払い残業について、労働基準監督署に
訴えたら、社長から長時間にわたり詰問を受けた等の報道もありました。
このように、未払い残業のトラブルはまだまだ多くあるのです。
実際に、私にご相談頂く内容の半数は残業がらみのものが多く、
その中でも「残業なのか?否か?」と、業務と業務外の線引きが議論に
上がることがよくあるのです。
よくあるご相談は以下のようになっています。
〇 社員が勝手に残っているが、残業代を払わなければならないのか?
〇 タイムカードの時間を基に残業の計算をしなければならないか?
〇 朝礼の時間などは残業等に該当するのか?
これに関する裁判があります。
<オリエンタルモーター事件 長野地裁 平成25年5月24日>
〇 社員は新卒で会社に入社した
〇 社員は本社での実習を経て、その後、事業所で生産実習に従事し、
年末年始の休暇が明けた平成23年1月5日から出勤せずに退職した
〇 退職後、会社に対して実習期間中の残業した時間の未払賃金とそれに
対する付加金※の支払い等を求めて裁判を起こした
※ 違反があった賃金の請求とともに同一額を支払することを命ずるお金
→ ICカードの時間通りに残業代が支払われていない
→ 朝のラジオ体操の時間、掃除の時間も業務時間であり、賃金支払いの
対象時間である
→ 日報作成のための時間、実習の発表会の時間も業務時間である
そして、長野地裁の判断は以下となったのです。
〇 未払賃金及び付加金請求の一部を認容
〇 会社側が敗訴
これに対し、納得のいかない会社は控訴しました。
そして、東京高裁(平成25年11月21日)の判断は長野地裁と逆の
結論を出したのです。
〇 ICカードの時間は会社への出入りの時間で、残業とは認められない
〇 ラジオ体操、掃除の参加は任意であり、会社が義務づけているもの
ではない
〇 ICカードの履歴が残業時間という理由がない
→ 日報作成のために上司が残業を命じた証拠がない
→ 実習の発表会の時間は、単なる自己啓発活動の時間である
以上として、一審の判断を取り消したのです。
この判決のポイントとなっている点は「労働時間の判断」です。
労働時間とは、
〇 会社の指揮命令下に置かれているか
〇 就業を命じられているか
ということです。
ということは、ICカードの記録だけでは「残業した」証明とはならず、
単に事務所等の「滞在時間」と判断されたのです。
また、日報の作成時間も「期限が無い」、「提出義務も明確ではない」と
いうことで、残業してまで日報を仕上げる必要がないので、指揮命令下
に置かれている労働時間ではないとなったのです。
さらに、実習の発表も「業務として行われたものではなく、自己啓発」と
なったのです。
従来の判断であれば、タイムカード等の客観的な時間管理のツールを
重要視して、「タイムカードの時刻 = 残業時間の算出の基礎」として、
結論を出している裁判が多かったのです。
しかし、この裁判は以前よりもより実態に踏み込んで結論を出している
のです。
また、裁判ではありませんが、労働基準監督署の調査では、タイムカードの
時間を労働時間とみなして指導等を行うケースがほとんどです。
もし、会社が「タイムカード等の時間が残業の時間ではない」と主張する
ならば、反証する材料を提出する必要があります。
だから、業務として残業してもらう場合は「残業命令」や「残業指示」を
書面やデータで残しておくことが必要なのです。
ただし、「タイムカードが時間管理の唯一のツール」であれば、タイム
カードと残業時間はリンクして考えなければなりません。
実際にプロッズ事件(東京地裁 平成24年12月17日)では、タイム
カードから出勤の有無、労働時間を認定しているのです。
最近、報道等の過熱により、「残業させる会社 = ブラック企業」と
いう印象を植えつけようとしていますが、そんな状況にも毅然と立ち
向かえるように、労働時間の管理を明確にする必要があります。
特に、残業時間が多い会社については、時間管理と効率化を徹底して、
リスクを軽減することが必須です。
そのためには、タイムカードだけで管理するのではなく、残業指示書等を
作成することにより、「会社の管理下に置かれている時間」と「そうでは
ない時間」の立証ができるようにしておくことが重要なのです。
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■編集後記
平成26年10月1日から「教育訓練給付金」の給付内容が拡充されます。
新しい制度では、中長期的なキャリアアップを支援するため、厚生労働大臣
が専門的、実践的な教育訓練として指定した講座を受講した場合に、給付金
の給付割合の引上げがあります。
現在は受講費用の2割が支給(上限10万円)されていましたが、
来月から受講費用の4割(上限年間32万円)に引き上げられます。
給付を受けることができる方は
〇 初回受給の場合、講座の受講開始日までに通算して2年以上の雇用保険
の被保険者期間を有している方
〇 平成26年10月1日前に教育訓練給付金を受給した場合、講座の受講
開始日までに通算して2年以上の雇用保険の被保険者を有している方
となっております。
医療系の資格や介護系の資格の取得をお考えの方はこの制度はお奨めです。
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