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2014年9月18日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「健康診断の実施義務と受診義務について」を解説します。
先日、ある労働基準監督署から連絡が来ました。
「A社の健康診断の実施状況の報告が出ていませんが、
どのような状況になっていますか?」
このA社は数か月前に労働基準監督署の調査が入り、その時に
「健康診断が実施されていません」と指摘されていたのです。
その後、私が関与することになり、労働基準監督署から上記の連絡が
私に入ったという次第です。
A社は労働基準監督署の調査に入られた際の報告書に「健康診断の
実施【予定】日」を記載して提出したのですが、その後の状況についての
問い合わせだったのです。
幸い、A社は健康診断を実施しており、単に報告が遅れただけだったので、
事なきを得たのですが、もし、健康診断が実施されていなかったら、
再調査の可能性もあったかもしれません。
このように、労働基準監督署の調査では、必ず「健康診断の実施状況」を
調査されますが、会社としては健康診断よりも「未払い残業の問題」や
「過重労働の問題」を意識しています。
だから、健康診断の実施について「軽く考えている」会社がとても多いのも
事実なのです。
「社員に受診しろと言っているのですが、仕事が忙しく、受けられません」
と笑いながらお答えになる社長も多いです。
しかし、最近の労働行政は「社員が安全に働ける環境」をとても重視
しており、その調査のポイントが健康診断の実施状況なのです。
さらに、労働安全衛生法で、
〇 会社は社員に健康診断を受けさせる義務がある
〇 社員は健康診断を受ける義務がある
と決まっているのです。
具体的には、会社は
〇 一般の業務なら1年に1回の定期健康診断を実施
〇 深夜労働、水銀やヒ素などの有害物質を取り扱う業務等であれば、
半年に1回の定期健康診断を実施
しないといけないのです。
もし、これを実施しない場合は(結果として、社員が受診しない場合でも)
違法状態となります。
そして、これを放置しておくと「最高50万円の罰金が科せられる」と
なってしまいます。
仮に、会社が健康診断を実施せず、社員が病気等で倒れた場合、裁判等の
民事責任の判断で、会社が不利な状況になってしまうこともあるのです。
これに関する裁判があります。
<真備学園事件 岡山地裁 平成6年12月20日>
〇 高血圧症の教師が教頭代行として働いていた
→ 教師は専門医の治療を受けていた(学校には報告していない)
→ 学校は健康診断を実施していなかった
〇 この教師は、昼休み中に応接室で生徒に注意指導中に脳内出血のため
死亡した
〇 遺族は学校側に安全配慮義務違反等で裁判を起こした
そして、裁判所は以下の判断をしたのです。
〇 本人が学校側に自身の状況を報告せずに通常業務を行っていたとしても、
専門医の診断状況の報告を義務づけていたら、対策を取ることができた
〇 健康管理に関する措置や体制の整備を怠っていた(定期健康診断を実施
していない)学校の態度は、法律の要求する労働安全衛生保持のための
公的な責務を果たさない不十分なものであった
〇 健康管理に関する安全配慮義務にも反していた
以上の結果から、学校側の安全配慮義務違反を認めたのです。
このように、健康診断を実施していない場合、仮に社員等に何かあったら、
会社側の安全配慮義務違反が認められてしまうのです。
これは、会社として、健康診断を実施していた場合であっても、
特定の社員が健康診断を受診しない場合も同じと考えられます。
仮に、健康診断を受診しない社員に何かあった場合、会社に安全配慮義務
違反が認められてしまう可能性が高くなってしまい、裁判等では会社の
責任が追及されてしまう、ということになるのです。
だから、大半の社員が受診していたとしても、
○ Bさんは忙しくて、受診できない
○ Cさんは「面倒臭い」と言って、受診しない
という状況は、会社にとって不利な状況を作り出しているのです。
これを防止するには健康診断を受診しない社員に対し、業務命令として、
受診命令を出すべきです。
会社側が積極的に「受診命令」を出し、命令に従わない場合は「懲戒処分を
科す」とするのです。
もちろん、就業規則の懲戒処分の条文で業務命令違反に対する処分が
具体的に記載されていることが前提となります。
もし、この受診命令に従わなければ減給も可能ですし、毅然とした態度で
臨まないと、いつまで経っても「忙しくて受診できません」となってしまう
のです。
労働基準監督署の調査では、健康診断に関する是正勧告を受けるケースが
非常に多くありますが、これは単に「健康診断の実施義務を果たしているか?」
というだけではないのです。
会社が社員の健康を「どれだけ真剣に考えているか?」を問われており、
社員が健康に働いてくれていることが会社の財産だということです。
会社としては、未払い残業代の問題等に目が行きがちですが、
この健康診断の問題も「実は」奥が深いのです。
当然ですが、人はいつ倒れるかは分かりません。
上記の裁判のようにならないためには、
○ 健康診断を実施し、【全社員】に受診させる
→ 受診しない場合は業務命令を出し、それでも受診しない場合は懲戒
→ 具体的な懲戒の内容を就業規則に記載しておく
○ 個人的に専門医の診断を受けているなら、その報告を義務づける
→ 就業規則や内規などに記載しておく
ということが必要です。
この2つのことができていない会社が多いことも事実ですので、
必ず、これらの環境の整備をすることが必要なのです。
なお、定期健康診断の費用は会社負担となりますので、併せて覚えておいて
頂ければと思います。
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■編集後記
先月、私も健康診断を受診しました。
ここ数年は受診結果に問題はなかったのですが、今年は血圧が少し高めに
出てしまいました。
しかし、血圧の数値はとてもデリケートで、計測する状況でかなり異なる
とのお話しを医師の方が説明してくれました。
それから日を改めて計測していただいたら、問題なしとの診断でした。
でも、少し心配だったので、血圧計を購入しました(笑)。
何でも「備えあれば憂いなし」ですね。
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