社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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就業規則はいつから有効となるのか?


2014年9月25日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

今回は「就業規則はいつから有効となるのか?」を解説します。

 

 

就業規則の作成や変更をする場合、「この就業規則の効力はいつから

 

有効なのでしょうか?」と、ご質問を頂くことがあります。

 

 

これにつき、「労働基準監督署に提出した時」と考えられている方も多い

 

ですが、これは間違いです。

 

 

労働基準監督署は単に「就業規則が提出されたから受付印を押印しただけ」

 

であって、これが「法的に合っているかどうか」は別問題です。

 

 

労働基準監督署は「提出されたものを受け取る義務」があるだけなのです。

 

 

結果として、いつの時点で効力が発生するのかというと、「就業規則を

 

社員に周知したとき」ということになります。

 

 

そして、周知の方法は以下となっています。

 

 

〇 印刷された書面を各作業場の見やすい場所に備え付ける

 

〇 社員全員に就業規則を配布する

 

〇 社員が自由に使えるパソコンにデータで保存しておき、いつでも確認

 

  できるようにしておく

 

 

この方法で周知しておけば、仮に、労働基準監督署の調査の際にも

 

指摘を受けることはなく、また、労使トラブルの裁判になったときでも

 

確かな証拠として力を発揮してくれます。

 

 

ただし、労働条件が社員にとって不利になる就業規則の変更は、

 

単なる周知をするだけでは有効とならないのです。

 

 

これに関する裁判があります。

 

 

<中部カラー事件 東京高裁 平成19年10月30日>

 

 

〇 会社は退職金の積立不足額が深刻な状態となったので、就業規則

 

  (退職金規定)を変更することにした

 

〇 会社は経営会議で退職金制度の変更を決議し、翌日の全体朝礼で

 

  退職金制度の変更を説明した

 

〇 全体朝礼の半月後に従業員「代表」から就業規則(退職金規定)の変更

 

  について、異議がない旨の意見書が提出された

 

〇 その後、就業規則(退職金規定)を変更して運用したが、この半年後に

 

  退職した社員から就業規則(退職金規定)の変更は無効とし、会社は

 

  裁判所に訴えられた

 

 

そして、第一審の判断は「就業規則(退職金規定)は変更は有効であり、

 

元社員の請求は認められない」と判断したのです。

 

 

これに納得しない元社員は控訴し、東京高裁の判断は以下となったのです。

 

 

〇 就業規則(退職金規定)の変更は実質的な周知義務を欠いている

 

〇 変更前の就業規則(退職金規定)が有効であり、減額となった差額

 

  約701万円の支払いを命じた

 

 

以上のように逆転し、会社側が敗訴となったのです。

 

 

この裁判でポイントとなったのが就業規則(退職金規定)の変更に関する

 

説明の方法でした。

 

 

全体朝礼での説明について、

 

○ 第一審では「説明に問題なし」と認められました

 

○ 第二審では「説明は不十分」ということで認められなかった

 

ということです。

 

 

具体的には、

 

〇 全体朝礼で全社員に対して説明がなされたが、議事録等は未作成

 

〇 口頭での説明のみで「説明文書の配布」が無かった

 

ということから、「社員に説明し、理解してもらうという意図が無かった」

 

と裁判では判断されてしまったのです。 

 

 

さらに、第二審では退職金制度の変更に当たり、年齢、勤続年数等の基準を

 

具体的に説明したかどうかまで問われました。

 

 

しかし、これを説明したとする証拠はなく、概略を説明しただけと判断

 

されてしまったのです。

 

 

しかも、従業員代表から異議がない旨の意見書まで取得している状況にも

 

関わらずです。

 

 

就業規則等の変更により、新たな賃金制度や退職金制度をスタートさせたい

 

場合はよくあります。

 

 

しかし、これらを有効にするためには、就業規則等のルールを周知させる

 

ことが必須で、以下の対応も必要となります。

 

 

〇 説明会を実施する場合、具体的なケースを提示し、金額の変更について

 

  詳細に説明する

 

→ 概略は全体の説明会でもOKですが、個別の条件は「社員毎」に

 

  面談形式で実施した方がいいです。

 

 

〇 説明会、個別の面談について質問等の時間も含め、余裕ある時間設定

 

  とする

 

→ 朝礼等だけでの概略説明は無効となる可能性があります。

 

 

○ 説明会の様子をビデオ撮影し、出欠を記録として残す

 

 

〇 条件が下がる場合は、承諾書を準備し、「全員から」合意を得る

 

→ 合意を得られない場合、その理由を記載してもらう

 

 

上記の対応まで行えば、就業規則等の変更が無効となるリスクはかなり

 

減ることになります(0にはなりません)。

 

 

このように、就業規則の変更は非常にデリケートな要素を含むため、

 

会社側も真摯な態度で臨むことが大事です。

 

 

〇 なぜ、変更せざるを得ないのか?

 

〇 変更後はどうなるのか?

 

を説明して、社員に理解してもらうことが大切です。

 

 

「社員は細かくは分からないから、適当に説明しておけば大丈夫」と

 

考えているケースもありますが、それは後々のトラブルにつながります。

 

 

あくまでも、

 

○ 個別的に理解させること

 

○ 個別的に同意が取れていること

 

が重要なのですが、これがおろそかになっていることは多々あります。

 

 

就業規則の変更等が無効となれば、それは訴訟を起こした1個人の問題

 

ではなく、会社全体の問題となります。

 

 

結果、会社全体の退職金の金額という問題にも発展し得るので、

 

手間であっても、適正な手続きを踏むことが大切なのです。

 

 

 

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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

平成26年の東京都の地域別最低賃金が869円から19円引き上げられ、

 

10月1日から888円になります。

 

 

景気が上向いているとはいえ、これほど引き上げられることは中小企業に

 

とって大変にきついことです。

 

 

そして、最低賃金は生活保護をベンチマークに決定するので、最低賃金

 

の上昇は生活保護費の上昇によります。

 

 

生活保護費の水準が妥当かどうかの議論をせずに最低賃金額を決定している

 

ことが問題ではないかと考えます。  


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