社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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懲戒処分はすぐに実行しないと・・・


2014年10月 2日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


 おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

 

今回は「懲戒処分はすぐに実行しないと・・・」を解説します。

 

 

社員とのトラブルが発生しても、その結末が中途半端な状態になっている

 

ことがあります。

 

 

例えば、

 

〇 口頭での注意は行ったが、処分についてはウヤムヤになってしまった

 

〇 懲戒処分を実行しようとしたが、どの程度か迷っているうちに時間が

 

  経ってしまった

 

等です。

 

 

このような会社は就業規則が整っていても、運用がついてきていない

 

という場合が多いです。

 

 

また、「どのレベルの行為に対し、どの程度の懲戒処分をしていいのかが

 

分からない?」とのご質問もよくお受けします。

 

 

これに関しては、就業規則の「懲戒処分」の条項に必ず記載されているので、

 

そこに記載されている内容で理解すればいいのですが、イザというときに

 

実際の処分が実行できないという意見も多いです。

 

 

しかし、処分保留のままで時間が経過してしまうと、実際は処分ができなく

 

なってしまうのです。

 

 

 

 

これに関する裁判があります。

 

 

<ネスレ日本事件 最高裁 平成18年10月6日>

 

 

〇 工場勤務の社員が欠勤を有給休暇に振り替えたいと申し出た

 

〇 上司はこの要求を拒否したので、社員は上司に暴行を加えた

 

〇 会社は懲戒処分を考えたが、警察が介入したため、捜査の後にしようと

 

  処分を保留

 

〇 社員は7年後に不起訴処分となった

 

〇 暴行の事実はあったが、不起訴となったため、会社は諭旨退職処分

 

  とし、退職届の提出を求めた

 

〇 社員から退職届が提出されなかったので、懲戒解雇とした

 

〇 社員は懲戒解雇の無効確認を求めて裁判所に訴えた

 

 

そして、以下の通りとなったのです。

 

〇 1審では、解雇無効(社員側が勝訴)

 

→ 傷害事件発生から時間が経過し過ぎており、不自然なため、不合理を

 

  理由に懲戒解雇を無効とした

 

〇 2審では、解雇有効(会社側が勝訴)

 

→ 事件から相当の時間が経過しているが、捜査機関の結果を待っており、

 

  放置していたわけではないので、懲戒解雇は有効とした

 

 

そして、最終的に最高裁の判断となったのです。

 

 

〇 事件から7年も経過後の諭旨解雇は、客観的に合理性を欠いている

 

〇 7年も経過したものを処分することは社会的にも相当性を欠いている

 

以上の判断を行ったのです。

 

 

結果として会社側が敗訴となったのですが、その原因を詳しくみて

 

いきましょう。

 

 

〇 事件より7年を経過した後の処分

 

→ 処分を行い、会社の秩序を取り戻すことが懲戒処分の目的であるが、

 

  7年も経過したら、その意味をなさない

 

→ 企業秩序の維持という観点であれば、事件発生後、すぐに処分を検討

 

  するべき

 

 

〇 捜査結果を待ってしまった

 

→ 捜査の結果を待ったが、不起訴となり、会社が予想した結果と異なった

 

→ 就業時間中に上司に対して暴行が行われたことは事実なので、捜査とは

 

  関係なく、懲戒処分を実施していれば、有効と判断されたであろう

 

 

〇 退職届を取れなかった

 

→ 検察庁の不起訴処分が下った後に会社として諭旨解雇を実施したことが

 

  整合性に欠ける

 

→ 退職届を取れれば、合意退職として処理でき、ここまで大きな問題とは

 

  ならなかった

 

 

このように、懲戒処分に時間をかけすぎると、処分そのものが無効となる

 

可能性があるのです。

 

 

だからといって、すぐに処分をすればいいということでもありません。

 

 

では、どのようなことがポイントとなるのかをみてみましょう。

 

 

〇 事実確認を行う

 

→ 懲戒処分に該当する行為が発生した場合、証言者、目撃者等に

 

  ヒアリングを実施する

 

→ 物的証拠を押さえる(メール、帳簿等)

 

 

〇 自宅待機を検討する

 

→ 再発リスクの防止

 

→ 他の社員への配慮

 

 

〇 本人から事情聴取を行う

 

→ 行為等の動機の確認、背景、理由を探る

 

→ 顛末書(てんまつしょ)の提出も検討する

 

 

〇 処分を決定するための諮問機関の設置を行う

 

→ 就業規則に沿った開催の実施

 

→ 懲戒権の行使の公平性を高める

 

 

〇 弁明の機会を与える

 

→ 一方的な処分ではなく、本人の意見も尊重する

 

→ 処分の公平性を高める

 

 

〇 懲戒処分を決定する

 

→ 過去の処分とのバランスを考える

 

→ 総合的に判断する

 

→ 書面にて告知する(証拠を残す)

 

 

以上のポイントが重要となるのです。

 

 

このプロセスはとても大切ですので、どこか1つでも飛ばしてしまうと、

 

処分そのものが無効となってしまう可能性が出てくるのです。

 

 

そのためにも1つ1つを確実に押さえることが大切なのです。

 

 

そのために、チェックシートなどでプロセスを落とさずに進めること

 

をお奨めします。

 

 

これは、どんな解雇に限らず、どんな懲戒処分についても段階的に

 

手続きを踏まなければなりませんので、必ず守るようにして下さい。

 

 

こういう話を書くと「面倒だ」と思われる方が多いことも分かっていますが、

 

数年後に「あの時、内海先生のいう通りにしておけば良かったです・・・」

 

とお話しされる社長が多いことも事実なのです。

 

 

 

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敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

 

お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。

 

 

また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

昨日の官報で「労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行期日を定める

 

政令」が交付され、ストレスチェック制度の導入が来年12月1日に決定

 

しました。

 

 

この制度は従業員の心理的な負担を把握するために、医師、保健師等に

 

よる検査を会社に義務づけるものです。

 

 

精神障害の労災認定の件数が3年連続で過去最高を更新しているなど、

 

メンタルヘルスの問題が大きくなったことが背景にあります。

 

 

ただし、50人未満の事業場については、当分の間は努力義務となって

 

います。   


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