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2014年10月23日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
今回は「給料の減額を継続的に実施するには・・・」を解説します。
「社員のパフォーマンスが悪くて、給料を下げたい」というご相談が
時々あります。
しかし、このノウハウで何回も記載している通り、給料を下げることは
労働条件の低下となり、「不利益変更」として法的には簡単には認められ
ません。
結果、給料を下げるには「それなりの理由」が必要になるのです。
多くの社長が「できの悪い社員の給料を減らしたい」とお話されますが、
法的に減給とは「懲戒処分としての制裁の1つ」で、労働基準法で減額の
金額等が決められています。
その内容は以下となっています。
○ 1回の減給額が平均賃金の1日分の半額以下
→ 例:日給1万円なら、1回の減給の最高額は5,000円
○ 減給の合計が、当月の賃金総額の10分の1以下
→ 例:月給20万円なら、減給の合計額の最高額は2万円
そして、制裁のための減給となると、基本的には特定の月のみ(1回だけ
という意味)しか差し引くことができないのです。
しかし、多くの方が減給となると、月額の給料額を何%かカットして、
それがしばらく続くというイメージをお持ちです。
報道などでは、
○ 会社の社長が給料の20%を6ヶ月にわたって減給する
○ 不祥事の責任をとって役所の責任者が1年間10%の減給を実施する
などがありますが、これは根拠となる法律が異なっていているのです。
だから、一般の会社における社員に対しては、このような形での継続的な
減給は実施できないのです。
もし、継続的に給料を下げて支給するという方法を実施したいならば、
「降格」という方法を取らなければなりません。
降格とは
○ 役職を下げる
○ 社員のグレードを決めている資格等を下位にすること
となっています。
例えば、
○ 部長から課長に降格し、部長の給料から課長の給料に減額する
○ 職務等級により決められているグレードを下げることで、
下がったグレードに対応する給料に減額する
ということです。
そして、降格は次の2つの考え方に分類されます。
〇 懲戒処分としての降格
→ 就業規則にその原因と実施の方法が記載されていないと実行できない。
〇 業務命令としての降格
→ 人事権の行使として、会社にその裁量がある。
こうなっていますが、一方的な降格は無効とされるケースもあり、
降格を実施するには気を付けなければならないことがいくつもあるのです。
これに関する裁判があります。
<アーク証券事件 東京地裁 平成12年1月31日>
○ 営業として雇用されていた2人の社員に対し、会社が成績不良を
理由に降格し、給料を減額した
○ 減額を実施した後に就業規則を変更し、降格の項目を設けた
〇 このような会社の対応について2人の社員は疑問を持ち、
減額分の給料の支払いを求めて裁判所に訴えた
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
○ 社員2人の成績不良に関し、人事考課が低いことは認めるが、
今までに成績不良で降格を実施した実績はない
○ 改正される前の就業規則に「降格」の記載はなく、客観的な根拠が
無い状態で降格を実施している
〇 経営方針書及びセールスマニュアルにも降格の記載なし
○ 本人に降格等の承認なども実施していない
→ 裁判では「黙って給料をそのままもらっていたので、黙示の承認」と
会社側は主張したが、認められなかった
○ 降格による給料の減額に対し、経過措置等も無い
○ 降格の合理性が認められない
結果として、会社は敗訴したのです。
この裁判を詳しくみてみると、別の観点からの記載もあり、会社の経営が
悪化し、社員の給料を減額せざるを得ないという場合はやむを得ないと
されています。
しかし、就業規則に降格の項目が無かったり、社員の労働条件低下につき、
代替措置が無いなどのところで、降格を否定しています。
降格後に就業規則を変更し、あたかも「降格が出来ます」と記載されて
いますが、この変更も否定されているのです。
もちろん、人事権の行使である降格は「就業規則」に根拠がなくても
効果が発生します。
しかし、この裁判では就業規則を含む「ルール」に着目していて、
そのルールが無いことで無効とされたのです。
それから、上記裁判の会社は「職業資格制度」という給与体系で、
この制度は20年ぐらい前に中堅以上の会社がこぞって採用した制度です。
そして、業務能力に応じて給料の額が定められている制度で、
多くの会社は勤続年数とともに金額が上昇するという前提で運用されて
いるのです。
結果として、「長く在籍すれば、給料が上がる」という給料体系と
なっており、給料の額が下がることを前提としていないのです。
だから、就業規則でも以下のようになっている場合が多いのです。
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(昇給)
第〇条 会社は、本人の能力等を考慮して毎年〇月に昇給を行う。
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もし、降格に伴う降給を実施も想定するならば、就業規則に以下の記載を
しなければなりません。
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(昇給、降給)
第〇条 会社は、本人の能力等を考慮して毎年〇月に昇給、降給を行う。
---------------------------------------------------------------------
そして、就業規則の記載とともに、人事制度の運用をきちんと実施する
ことが重要となります。
上記の裁判でも「経営方針書及びセールスマニュアル」に降格の記載の
有無が判断の基準にもなっています。
就業規則とともに、人事制度の運用で客観的な運用がポイントとなって
くるのです。
多くの会社で就業規則等の見直しが行われていますが、実は人事制度と
リンクした形での改正が必要となってきています。
単に「法改正に合わせた」だけの改正ではなく、給与制度、人事制度と
リンクしたものが要求される時代となってきたのです。
正直なところ、ここが見落とされているケースもあり、
法改正「だけ」をフォローし、就業規則の改定を実施している会社は
沢山あります。
しかし、この就業規則は合法的ではあるが、実際には機能しない部分が
ある就業規則なのです。
就業規則は「法律」の部分だけが先走ることもよくあるのですが、
時代に即した根本的な見直しが必要となってきた時代なのです。
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■編集後記
気になる記事がありました。
「営業部長86歳、鍛造職人78歳-。「人生90年時代」を先取りし、
2人の大ベテランが、神戸市兵庫区の造船関連会社を支える。」
(神戸新聞NEXT 平成26年10月21日)
今後の高齢化社会の先駆けでしょうか?
でも、まさに終身雇用ですね。
新たな働き方が模索されていますが、何か嬉しくなる記事でした。
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