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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2015年2月26日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
◆「月刊 労務対策」
旬な労務の情報(DVD、CD、冊子)を毎月お届けします。
◆平成27年2月号の内容
○ インターネットに会社の悪口を書かれたら・・・
○ 制服に着替える時間は労働時間か?
○ 細かいミスを繰り返す社員の対応について
○ 社員が突然、ヒゲを生やして来たのですが・・・
○ 通勤災害(労災)になる場合、ならない場合
今回は「懲戒処分をしたら、その後にいろいろなことが発覚」を解説します。
先日、次のご相談を受けました。
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2ヶ月前にスカウトした営業部長ですが、成績があまりに悪いので、
辞めてもらったのですが、その後に就業時間中にさぼったり、遊んでいた
事実が発覚したのです。
まだ支払っていない給料があるのですが、減額は可能でしょうか?
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ご相談のように「勢い」で処分したら、後からいろいろなことが発覚する
ことはよくあります。
しかし、原則として、一度処分を実施したら追加で処分を実施することは
難しいのです。
これに関する裁判があります。
<山口観光事件 最高裁 平成8年9月26日>
○ マッサージ師はホテルでマッサージ業をおこなっており、激務のため、
体調不良を訴えていて、連続した2日間の休暇を請求した
○ 社長は「勝手に休まれては仕事にならない」として、マッサージ師に
辞めるように告げた
○ マッサージ師は現場に復帰したい旨と未払いの賃金を求めて、
裁判所に訴えた
そして、裁判の争点は以下となったのです。
〇 マッサージ師とホテルとの契約はは雇用契約か?業務委託契約か?
→ 契約書等の内容はあやふやであった
〇 契約解除の申し出はマッサージ師から行われたとホテルは主張
→ マッサージ師はホテルから解雇されたと主張
〇 ホテルは「出勤拒否」と主張
→ 本人は「休暇」と主張
〇 懲戒解雇が認められなくても、ホテルはマッサージ師が業務に
耐えられないので普通解雇を主張
→ マッサージ師は業務を継続できると主張
〇 第1審の裁判の経緯の中で大幅な年齢詐称が発覚し、これが懲戒解雇に
当たるかどうか?
→ 当時57歳を45歳と詐称
そして、第1審の判断は以下となったのです。
〇 この契約は雇用契約である
〇 マッサージ師から契約解除を申し入れていない
〇 出勤拒否ではなく、ホテルからの解雇
○ ただし、普通解雇としての判断も早急で疑問
として、未払賃金の支払い命令が出たのです。
ただし、「年齢詐称による懲戒解雇」は有効と認められ、懲戒解雇が有効と
なる時期は年齢詐称が発覚した時からと判断されたのです。
これに対して、マッサージ師は「年齢詐称はホテルを解雇された後に
分かったことなので、これを理由に懲戒解雇はおかしい」と主張しました。
そして、裁判は最終的に最高裁まで上がり、「一度処分が確定した後に、
追加理由(年齢詐称)で懲戒解雇はできない」と判断されたのです。
しかし、最高裁も年齢詐称に対しては「企業秩序に違反する」と認めて
います。
なぜなら、
〇 60歳の定年まで約3年のところ、約15年もあると偽っている
〇 マッサージという体力を要する仕事で年齢を詐称することは
会社の雇用計画等に影響が出る
〇 社員の労働力を適性に配置できない
としています。
しかし、一度決めた処分に追加の処分を加えることはできないのです。
この裁判は
〇 もともと年齢詐称で懲戒解雇の理由があった
〇 これを知らずに「仕事がきつい」と言ってシフトに穴をあけた社員を
辞めさせた
という状況です。
だから、入社の段階、シフトに穴をあけた段階に慎重に調査をすれば、
未払賃金(約225万円)の支払い義務は発生しなかったのです。
シフトに穴を空けた段階ではともかく、体力が必要な仕事だけに、
入社の段階で年齢確認を怠ったことはホテル側の大きなミスです。
結果、この裁判では「解雇事由を慎重に調査せずに性急に解雇したこと」
により、会社が負けてしまったのです。
冒頭のご相談についても同じことが言えるので、減額の追加処分は難しい
と考えます。
既に解雇した社員に対し、その後に発覚した問題で処分を下すことは
できないのです。
多くの社長は、社員側の問題でトラブルが発生したときに、すぐに
解雇等の判断を下したいのでしょうが、上記の裁判事例の結果もあるので
注意しましょう。
まず、何かしらの非違行為等が発生し、調査が必要な場合は、
〇 社員に対して休職命令を発令
〇 社員の行為や身辺等の調査を行う
〇 結果が出たら、会社としての判断を行う
ということです。
なお、就業規則には「休職命令時には社員の行為が確定していなくても、
非違行為が認められた時には休職手当は支払わない」という旨を記載
しましょう。
なぜなら、会社からの休職命令による休職ならば、法的に休職手当を
支払わなければならないからです(通常の賃金の約6割)。
また、調査を実施する際には
〇 どの言動、行為が問題か?
〇 具体的に、どんな言動、行為であったか?
〇 その言動、行為が発生した日時はいつか?
等を具体的に記録しておく(場合によっては録音しておく)ことが重要です。
このように、十分に調査を実施すれば、裁判等になっても会社の判断が
「客観的」と判断され、会社の主張も認められやすくなるのです。
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■編集後記
月末になると、月刊誌、週刊誌の締切の時期となります。
いつも「先にやっておこう」と考えているのですが、アイデアやネタを
考えている間にギリギリとなってしまいます。
締切が近づかないと手が動きません・・・。
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