社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所

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遅刻した日が定かではないが、処分は可能か?


2015年3月12日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


 

おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 


 

◆「月刊 労務対策」

 

旬な労務の情報(DVD、CD、冊子)を毎月お届けします。

 

 

◆平成27年3月号の内容

 

○ 転勤を拒否したら、解雇できますか?

 

○ パワハラは会社と上司の問題です

 

○ セクハラを放置すると大変なことに・・・

 

○ 懲戒処分をしたら、その後にいろいろなことが発覚

 

○ あと3年後が大変に・・・(改正労働契約法について)


 

 

 

今回は「遅刻した日が定かではないが、処分は可能か?」を解説します。

 

 

この時期は4月から新しい制度やルールを導入しようとしている会社が

 

非常に多くあり、弊社でも多くのご相談が寄せられています。

 

 

そんな中、「勤怠管理をきちんとしたい」というご要望が多いのですが、

 

逆を返すと「勤怠管理がきちんとできていない会社が多い」ということ

 

なのです。

 

 

先日も「遅刻が多いのですが、どんな処分ができますか?」というご相談

 

があったのですが、「遅刻したのはいつですか?」と質問したところ、

 

「出勤履歴があやふやで分からない」との回答でした。

 

 

タイムカード等で勤怠管理をしている場合、時間は1分単位で会社が把握

 

できると考えがちですが、実際は打刻漏れやデータ修正等があり、実態を

 

把握するのが意外と難しいものです。

 

 

これに関する裁判があります。

 

 

<東京都M局事件 東京高裁 平成26年2月12日>

 

 

〇 職員は3年間で72回の遅刻をしていた

 

〇 自分の部下に指示して、遅刻の記録を修正させていた

 

〇 「遅刻が多い」と内部告発文書が人事部長に郵送され、調査を実施

 

〇 調査の結果「遅刻は事実」と判明し、職員を停職3か月の懲戒に

 

  処した

 

〇 職員は停職処分の取り消しと減収分、逸失利益、損害賠償を求めて

 

  裁判をおこした

 

 

そして、第1審は以下の結果となったのです。

 

 

〇 停職処分の根拠となる事実の存在を認めることはできない

 

→ 遅刻した日の確定があやふやである

 

 

〇 東京都は職員に損害賠償金約386万円の支払うこと

 

 

として、東京都が負けたのです。

 

 

東京都は控訴し、第2審では逆の結論となったのです。

 

 

〇 遅刻した日について、勤怠管理の責任者等からの聞き込みにより、

 

  その事実について「推定」できる

 

〇 具体的な日付が特定できないが 推定することにより確認し、処分を

 

  実施したことについて、停職処分が違法とまでは言えない

 

 

以上により、東京都が勝訴したのです。

 

 

 

 

なぜ、このような結果となったかと言うと、第1審では「立証責任」に

 

焦点が当たり過ぎた結果、全ての遅刻した日付の特定まではできなかった

 

ことを理由に東京都は敗訴しました。

 

 

これは東京都側が調査を十分に尽くさず、懲戒処分に踏み切ったことにより、

 

懲戒処分の対象となった事実の立証がされていないということです。

 

 

しかし、第2審では遅刻した日を「推定」したことと共に、停職処分に

 

至るプロセスを重視したのです。

 

 

勤怠管理担当者へのヒアリングを実施し、職員本人にも「弁明の機会」等も

 

与え、その手続きがより慎重に進められたことが評価されたのです。

 

 

 

 

従来は遅刻等による懲戒処分等を実施する場合、その事実について、

 

客観的に証明できないと処分が下せないと言われていました。

 

 

つまり、「遅刻した日が特定できなければ、処分できない」ということ

 

です。

 

 

しかし、今回の裁判では、さらに突っ込んだ判断がなされており、

 

第三者の証言等により「推定」できる場合は懲戒処分等の手続きは

 

違法でない、と判断されたのです。

 

 

もちろん、大切なことは「推定」しなければ立証できないという状況に

 

陥らないことです。

 

 

そのためには、タイムカードの運用ルールの明確化、厳格化が必要です。

 

 

しかし、このルールが曖昧になっていたり、場合によっては他人が

 

タイムカードを打刻していたりする会社もあります。

 

 

だから、遅刻という事実があったとしても、「推定」せざるを得ないことに

 

なってしまうのです。

 

 

会社を守るのも皆さん、会社を危うくするのも皆さんです。

 

 

当然、世の中には「推定」すらできない状況になっている会社もあります。

 

 

会社を守るためには最低限のルールを適正に運用していくことが大切

 

なのです。

 

 

 

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これらの事実が発覚した場合は法的措置を取らせて頂きますので、

 

ご注意ください。

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敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。

 

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当社にご相談の無い状況でこの情報を利用されて生じたいかなる損害に

 

ついても、当社は賠償責任を負いません。

 

 

また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、

 

ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

マイナンバー制度が来年から実施される事をご存知でしょうか?

 

 

マイナンバーは「社会保障」「税金」「災害」の3分野で使う法人、個人

 

に与えられる番号です。

 

 

制度開始後、会社員などはマイナンバーを勤め先に伝えなければなりません。

 

 

なぜなら、所得税や住民税の納税手続きにマイナンバーが使われるからで、

 

勤め先は源泉徴収票に社員とその扶養家族全員のマイナンバーを記載し、

 

税務署や自治体に提出することとなるのです。

 

 

しかし、世間での浸透はまだまだですし、政府の準備も遅れ気味ではない

 

でしょうか。

 

 

制度が始まる前に「きちんとした準備」を行いたいですね。


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