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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2015年7月23日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
◆「月刊 労務対策」
旬な労務の情報(DVD、CD、冊子)を毎月お届けします。
◆平成27年7月号(Vol.8)の内容
○ 社員のメールをチェックすることについて
○ 内部告発した社員の処分について
○ 残業時間のカウントの方法は様々である?
○ 定年後の再雇用者の給与の額
○ マイナンバー制度の概略について
今回は「会社が勝手に有給休暇を消化すると・・・」を解説します。
有給休暇は社員が休みたい日を「事前に」会社に申請し、
承認をもらい、休暇を取得する制度です。
しかし、「今日は体調が悪いので休みます」という場合も
有給休暇を充てている場合がほとんどです。
この運用方法は就業規則にも記載されていることが「大前提」となり、
以下が参考条文です。
(事後的な運用が記載されていない就業規則も多いので、
皆さんの会社でもご確認ください。)
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第〇条(有給休暇取得)
従業員が年次有給休暇を取得するときは、原則として1週間前までに、
少なくとも前々日までに所定の手続により会社に届け出なければならない。
ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、
あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、
事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えることが
できる。
ただし、承認は会社又は所属長の裁量に属するものとし、必ず行われる
ものではない。
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このように、突然の病欠等を有給休暇にするのは会社の裁量であり、
「必ず有給休暇を充てなければならない」という訳ではないのです。
しかし、多くの会社で「風邪で1日休む」「頭痛で休む」等の場合に
有給休暇としているのは恩恵的な運用と言えるのです。
一般的にも、1日程度の風邪等を欠勤扱いするのは厳しすぎるので
有給休暇で処理しているのです。
欠勤扱いになれば、有給休暇は減りませんが、給与は減ります。
そもそも、有給休暇とは「働く義務のある日」に対し、
会社から給与が支払われる日のことなのです。
これは「短期的な病欠等」を前提にした運用ですので、
「長期の病欠等」で働けない場合は有給休暇を充てることができません。
これに関する裁判があります。
<サントリーホールディングス他事件 東京地裁 平成26年7月31日>
〇 社員が上司からパワハラを受けていた
→ 「新入社員以下だ、もう任せられない」
→ 「何でわからない、お前はバカか」
〇 社員はこのため、うつ病となり、休職を余儀なくされた
〇 社内の担当室長はパワハラ行為による休職制度の適用を認めず、
有給休暇の消化を社員に依頼し、一部につき、承諾させた
〇 社員は「上司のパワハラ行為」と「休職制度の不適用という会社の
不適切な対応」につき、裁判を起こした
→ 約2,500万円の損害賠償金と遅延損害金を求めた
そして、裁判所は以下の判断を下しました。
〇 上司の発言は社員の名誉を害し、指導の限度を超えている
〇 うつ病の診断結果(3カ月の休職)があったにも関わらず、
有給休暇を消化させ、休職の申し出を阻止しようとした
→ 社員が心身を病んでいることへの配慮を欠く言動
→ うつ病からの回復のために、すぐに休職する機会を奪った
→ 不法行為が認められる
〇 損害賠償額は約270万円で、会社が敗訴
→ 社員の既往病からの影響もあったと判断し、減額
この裁判は「パワハラが不法行為」という裁判ですが、
会社が休職をすぐに認めず、「有給休暇の消化を迫った事実」が
「更なる不法行為」が行われたと、裁判所が判断しているのです。
この裁判から学ぶことは下記のことです。
〇 休職の申請につき、診断書等を尊重し、休職の判断を行なう
〇 会社の責任を回避しようとし、有給休暇の取得を強要しない
〇 パワハラ行為等が内部通告された場合は、事情聴取を実施する
〇 隠す場合もあるので、存在が確認できなくても人事異動等を検討する
そもそも、社員が病気等で働けない場合は「労務の提供ができない」
状態です。
だから、働ける状態にあるが、「リフレッシュ」目的としての
有給休暇の消化とは大きく意味が異なるのです。
まして、病気等で長期の休みが必要となればなおさらです。
結果として、長期の病欠等の場合は本人が希望する場合を除き、
有給休暇を充てることができないのです。
さらに言えば、業務が原因で休職をしなければならない労災事故が
起きた場合、労災保険から休業補償給付(額面の8割程度)が
支給されます。
また、持病で休職する場合は健康保険から傷病手当金(額面の6割程度)
が支給されるのです。
社員は社会保険の制度で守られているので、無理に有給休暇を消化させる
必要はないのです。
最後に、休職と有給休暇の関係について解説します。
ここは多くの会社が誤解している部分です。
よくある間違いは、長期休職となる社員に、
〇 最初に、有給休暇を消化させる(本人の同意を得ずに)
〇 その後に、休職を与える
という考え方です。
これは「かなり」多くの会社で行なわれている「事実」です。
しかも、これを「社内制度」として運用しているのです・・・。
しかし、これは「大問題」であり、休職した社員が復帰して、
「有給休暇が無い」と知ったら、トラブルに発展する可能性が高いのです。
あくまでも有給休暇は「本人の申請、自発的な承諾」により、
消化していくものです。
これができていない会社はそもそも論として、「休職の制度、運用」の
体系が「法的に」おかしい場合が多いです。
色々なご相談をお受けしていると、
〇 就業規則、各種規定などの「制度」にそもそも論的な不備がある
〇 これに沿った運用がされ、知らない間に不法状態が継続している
ということが「よく」あります。
こういうことにならないためにも、まずは適正な「制度」の構築が
必要です。
皆さんの会社は「100%大丈夫」と言い切れますか?
「社労士に作ってもらったばかりの就業規則」をチェックしたことも
ありますが、「相当な」修正項目を提案したこともあります。
皆さんは「医師免許を持っている人に手術してもらったから、
大丈夫です」と言い切れますか?
そんなことはありません。
しかし、メルマガで一度に網羅的にノウハウをお伝えすることは
できないので、下記DVDも出しているのです。
就業規則に関することを「網羅的に」学びたい方は
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※ 就業規則のひな型(91条)のワードファイル付き
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■編集後記
先月の初めに山を走るトレイルランニングのレースに挑戦してきました。
距離は32キロなので、フルマラソンより10キロ程度短い距離でしたが、
標高差1,000mぐらいの山を2つ越えなければならないので、
フルマラソンと異なる筋肉を使い、脚がパンパンになりました。
そして、消費カロリーはフルマラソンの2倍ぐらい・・・。
山岳レースは考えていた以上に過酷でしたが、自然に触れられて
癒されて帰ってきました。
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