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残業時間はどちらでカウントするのか?


2016年3月24日  投稿者:社会保険労務士 内海 正人


 

おはようございます、社会保険労務士の内海です。

 

いつもありがとうございます。

 

 

 


 

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今日は「残業時間はどちらでカウントするのか?」を解説します。

 

 

残業代の支払いに関するトラブルは相変わらず多く、

 

〇 残業代の支払いを求めて、元社員が労働基準監督署に飛び込んだ。

 

〇 残業支払いの支払い請求の裁判が起こされた。

 

などによるお問合せがあります。

 

 

ここで、争点となるのが「いつから残業なのか?」ということです。

 

 

「始業、終業はタイムカードの打刻時間でカウントしないといけないのか?」

 

というご質問は本当に多いです。

 

 

これに関する裁判があり、この裁判は1審と2審で結論が逆になっていて、

 

残業時間のカウントに関する考え方が明確になっています。

 

 

<オリエンタルモーター事件 東京高裁 平成25年11月21日>

 

〇 始業、終業時刻の合図はチャイムで行われていた。

 

 

〇 会社への入退場の際には、自己のICカードにより、

 

  その時刻を記録することとされていた。

 

 

〇 会社は社員に対し、終業時刻後に会社の設備を使って資格取得の

 

  ための勉強その他の自己啓発活動をすることを認めていた。

 

→ この場合、活動を終えて会社から退場する際にICカードにより

 

  退場時刻を記録することとされていた。

 

 

〇 残業を命じる場合は「時間外及び休日勤務指示書」で指示していた。

 

 

〇 社員はICカードの打刻時間で残業が支払われていないと裁判を

 

  起こした。

 

→ 元社員は自分の手帳に実際の退社時刻を記録していた。

 

 

そして、第1審(長野地裁松本支部 平成25年5月24日)は以下の

 

判断を下したのです。

 

 

〇 会社ではサービス残業が常態化していた。

 

 

〇 「時間外及び休日勤務指示書」は形骸化しており、

 

  実質的には機能していなかったと認定した。

 

 

〇 残業手当(約54万円)と付加金※(35万円)の支払いを命じた。

 

→ 会社側敗訴

 

 

※ 労働基準法において、解雇予告手当、休業手当、割増賃金等を

 

  支払わない会社に対し、裁判所が従業員の請求に基づき、

 

  未払金に加えて、支払いを命ずる金銭のこと。

 

 

しかし、第2審(東京高裁 平成25年11月21日)の判断は

 

以下となったのです。

 

 

〇 ICカードは施設管理のためのものであり、その履歴は会社構内に

 

  おける滞留時間を示すものに過ぎない。

 

→ 履歴上の滞留時間をもって直ちに従業員が時間外労働をしたと

 

  認めることはできない。

 

 

〇 残業手当、付加金の支払いは認めない。

 

→ 会社側が「完全勝訴」となった。  

 

 

それでは、第2審の判断を詳しくみていきましょう。

 

 

〇 社員は「日報を詳細に記載するよう義務付けられていた」と

 

  主張するが、そのような義務があったことは認められない。

 

 

〇 会社が社員に対し、日報作成のために残業を命じたことを

 

  裏付ける証拠はない。

 

 

〇 社員は「新人は率先して電話を取るように指導を受けていた」と

 

  主張するが、上司等が電話応対のために残業を命じたことはない。

 

 

〇 社員は「自己啓発の時間も労働時間」と主張するが、

 

  参加に強制力はなく、労働時間ではない。

 

 

〇 「社員の手帳に記録された実際の退社時刻により、残業を認定すべき」

 

  とする主張に対しても、次の理由で認められない。

 

・ 社員の手帳の記載は曖昧。

 

・ 全ての日についての記載がある訳でもない。

 

・ 結果として、信用できない。

 

 

〇 早朝出勤して掃除をしていたこと、着替えや朝礼、朝のラジオ体操への

 

  参加に対する残業手当の請求は次の理由で認められない。

 

・ ラジオ体操や朝礼への参加は任意であり、社員の主張する着替えや

 

  掃除が義務付けられていたことを認めるだけの証拠はない。

 

 

このように、具体的な主張に対して細かく検証したのです。

 

 

 

 

もちろん、タイムカードやICカードの記録時刻で労働時間を

 

判断している裁判も沢山あります。

 

 

一例を挙げれば、下記のものがあります。

 

 

〇 デンタルリーチ社事件 (東京地裁 平成22年9月7日)

 

〇 PE&HR事件(東京地裁 平成18年11月10日)

 

 

しかし、今回のオリエンタルモーター事件の第2審では、

 

「ICカードは施設管理のためのものであり、その履歴は【会社構内に

 

おける滞留時間】を示すものに過ぎない」と判断されています。

 

 

これは社員が主張する労働時間の検証を細かく実施した結果、

 

1審と2審の判断が逆となったと考えられます。

 

 

また、この会社は「時間外及び休日勤務指示書」で残業等を管理しており、

 

自己啓発等の時間の考え方もクリアとなっていたため、逆転の判断が

 

下されたと考えらえます。

 

 

しかし、単にタイムカードやICカード「のみ」の時間管理であれば、

 

過去の多くの裁判のように「タイムカードの打刻時間=労働時間」と

 

みなされてしまう可能性が高いのです。

 

 

だから、「打刻時間」と「実際の労働時間」のかい離がある場合、

 

「別の証拠」が必要となり、会社側がこれを用意しないといけないのです。

 

 

例えば、会社が「業務に関係のないネットサーフィンをしている」と

 

主張することがあります。

 

 

ただし、この場合は社員が業務と関係のないWEBサイトにアクセス

 

している記録が必要になります。

 

 

これはサーバーの設定などにより、閲覧履歴を残すことは可能です。

 

 

また、他の社員とおしゃべりしているということであれば、

 

その状況を写真等で記録するなどの対策が必要となるでしょう。

 

 

この対応は労働法に強い弁護士から教えてもらいました。

 

 

さらに、勉強会や研修会は業務ではないならば、

 

参加を強制していないことを証明しなければなりません。

 

 

このため、出欠等を記録し、欠席であることを追及するなどの行為は

 

NGとなるのです。

 

 

結果として、トラブルになる前に、

 

〇 残業の事前承認制

 

〇 時間外労働の承認申請書

 

などのルールを明確にし、運用することが重要な点です。

 

 

会社によっては、「着替え等もできるだけゆっくりやり、会社内にいれば、

 

タイムカードの退社時刻が遅くなり、少しでも残業代が増やせる」

 

という文化になってしまっている会社もあります。

 

 

これは極端な例であっても、多くの会社で厳密に言えば、

 

「実際の労働時間 < タイムカードの時間」となっています。

 

 

このような場合にタイムカードの時間で労働時間の主張をされないよう、

 

会社には「主張できる制度、運用、証拠」が必要なのです。

 

 

 

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ご注意ください。

 

 

 

■編集後記

 

 

中国人技能実習生に賃金を適切に支払わず、労基署の調査も妨害したとして、

 

岐阜労働基準監督署は22日、最低賃金法と労働基準法違反容疑で、2人

 

を逮捕した(3月22日の時事通信より)。

 

 

このニュースの注目すべき点は、逮捕をしたのは警察ではなく、

 

労働基準監督署ということです。

 

 

労働基準法違反について、労基署は逮捕する権限を与えられていますが、

 

実際に行うことはほとんどなかったのですが・・・。

 

 

最近、労働基準監督署は本気ですね!


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