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社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所
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2016年8月18日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
◆「月刊 労務対策」
旬な労務の情報(DVD、CD、冊子)を毎月お届けします。
◆平成28年8月号(Vol.21)の内容
○ 内部告発した社員は解雇できない?
○ 飲み会後の事故は労災か?
○ 出向者が起こした問題に対する損害責任は出向元?、出向先?
○ 長時間の残業で、社員が倒れたらp>
○ 労働基準監督署の調査について
今日は「プロジェクト終了で社員を降格させることは可能か?」を解説します。
最近、会社は柔軟な組織体系を組むことがあります。
例えば、部や課に縛られず、人員を各部や課から出してプロジェクトを
組むことが行われています。
そして、その企画に関するプロジェクトリーダーを決め、
その社員を中心に色々と業務などを動かしているのです。
企業規模を問わず、新企画を立ち上げる場合、
このような形式を取ることは普通にあります。
ただし、この形式の場合、プロジェクトが終わり、
チームを解散する時にトラブルが発生しやすくなります。
なぜならば、プロジェクトリーダーを降格させ、
一般社員に戻すことが問題となることが多くあるからです。
同じポジションに空きがあれば、そこに異動させることも可能ですが、
タイミングが合わない場合もあり、一般社員に戻すこともよくあるのです。
具体的には、
〇 プロジェクト進行中
リーダーを管理職と位置付け、役職手当を払っていた
〇 プロジェクト終了後
一般社員に戻し、役職手当をカット
という問題です。
そして、社員から「一方的に管理職を解かれ、給料減額は違法では?」と
苦情が入ったという相談を何度も受けたことがあります。
確かに、給料等の労働条件を下げることは「労働条件の不利益変更」になり、
法律で禁止されています。
では、このケースは不利益変更に該当するのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<L産業事件 東京地裁 平成27年10月30日>
〇 社員は新薬開発のプロジェクトのチームリーダー(管理職)として
プロジェクトを動かしていた。
○ 会社は職務等級制度の人事給与制度を導入しており、
社員はグレードE(管理職)の等級であった。
〇 プロジェクトが解散し、社員は一般の業務に配属となり、
それに伴い、一般社員のグレードに変更(降格)となった。
〇 社員は「この措置は無効」と主張し、「降級前の等級」と
「差額の給与」と「精神的苦痛を被ったとしての損害賠償金等」の
支払いを求めて、裁判を起こした。
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
〇 チームの解散により、社員がチームのリーダーの職務が無くなった。
〇 社員をリーダーの地位から外すことには業務上の必要性あり。
〇 社員が異動により就いた職務は、人員が足りないので、
そこに配属された経緯があるから、業務上の必要性が認められる。
〇 社員の配属に対し、不当な動機、目的で行われたものではない。
→ 人事権の濫用には該当しない
〇 減額は年60万円ぐらいの減額(年収の6%)で少なくないが、
我慢できる範囲となっている。
〇 社員の請求を棄却した(会社側が勝訴)。
では、この裁判のポイントをみてみましょう。
まず、異動に伴う格下げの必要性をチェックしています。
異動が不当な動機、目的(例:気に入らないから飛ばす)でない限り、
人事権の濫用ではないと判断しています。
今回は異動の目的も「人員不足」による配置転換であり、
その他の不正な目的も見当たらなかったので、法的には有効な異動です。
また、金額の減収も具体的な金額(60万円ぐらい)や
割合(6%)で判断しています。
さらに、就業規則に降格の規定もあり、会社は人事給与制度についての
ガイドブックを作成し、その中で「異動に伴い、職種やグレード変更
となる場合の基本給変更についての説明」が記載されていたのです。
これにより、より厳格な運用が実施されている裏付けとなったのです。
今回の裁判から皆さんに覚えておいて頂きたいことは
以下のことです。
〇 就業規則等の整備
→ 降格を実施する場合、必ず降格に関する条文が必要
〇 職務と等級(給与)との対応関係を明確にする
→ ガイドブック等を作成し、社員に周知する
→ 例外のない厳格な運用をすること
〇 減額等の額が大きい場合などの軽減策についても事前に決めておく
→ 急激に給与等が下がらないように期間限定で調整給の導入など
プロジェクトの終了に限りませんが、仕事の内容が変わり、
それに伴い給与が下がる場合は、事前にルールを社員に周知して、
理解しておいてもらうことが重要です。
さらに、会社としては厳格な運用が「必須条件」となります。
「Aさんの時はこうだったのに、Bさんの時は別だった」となれば、
社内に不公平感が出るだけでなく、法的な問題にもなり得ます。
人事異動は、最高裁も特別な理由(育児、介護等)が無い限り、
有効としています(例:東亜ペイント事件 最高裁 昭和61年7月14日)。
結果として、会社のルールによる異動等で業務、責任が変わり、
降格や給与の減額は法的にも有効なのです。
まずは、就業規則の整備をしてください。
そして、給与制度と人事考課制度の関係も明確にし、
社員に周知徹底させ、理解させ、例外なき運用をするのです。
例外のある運用をすれば、例外が例外を作ってしまい、
原則が壊れることにも発展し得ます。
三ちゃん経営の同族会社ではあまり無いかもしれませんが、
一般的な中小企業以上になれば、「新企画の立ち上げ」は
よくある話です。
しかし、その企画の終了などにより、降格や異動が発生する場合もあります。
このような場合でも、これらの点を守れば、
トラブルが発生するリスクはかなり軽減されるのです。
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■編集後記
まだまだ暑い日が続きます。
体調など崩されてないでしょうか?
エアコンの効いた部屋と炎天下の外の温度差で身体が悲鳴を上げています。
ところで、エアコンはまめにつけたり消したりしなければいけないと
思っていましたが、つけっぱなしのほうが電気代が安いという話を
聞いたことがありますか?
ネットの記事にありましたが、果たして事実なのでしょうか?
どなたか試してみてはいかがでしょうか!
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