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2016年12月20日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
いつもありがとうございます。
◆「月刊 労務対策」
旬な労務の情報(DVD、CD、冊子)を毎月お届けします。
◆平成28年12月号(Vol.25)の内容
○ 仮眠の時間も労働時間ですか?
○ 安全教育が大事ということがよくわかります
○ このプロセスを踏まないと解雇はできません
○ 元社員が会社と競業する仕事を始めたら
○ 精神疾患と休職の関係について
○ 60歳定年後の賃金について
では、今日は「これがないと残業手当として認められません」を解説します。
「当社の給与は年俸制なので、残業の支払いはありません」
「営業手当が残業代としてカウントしています」
今でもこのような意見を多々耳にすることがありますが、
上記の内容だと残業手当に関する考え方が間違っている可能性が高いです。
年俸制でも残業手当の支払いが免除されているということはありませんし、
営業手当が残業代として支払われている場合は、いくつかの要件を揃えない
と残業代として支払ったことにならないのです。
また、「定額の残業代を支払っている」「固定残業制度を採用している」と
いう会社も多いでしょうが、定額支給の残業手当も要件をクリアしないと
法的に残業手当とは認めてくれないのです。
これに関する裁判があります。
<アクティリンク事件 東京地裁 平成24年8月28日>
〇 社員Aは主にアルバイト等のシフト管理業務を行っていた。
〇 Aの給料は基本給と営業手当が支給されていて、営業手当は「残業手当
月30時間分に相当する」と賃金規定に規定されていた。
〇 Aは懲戒解雇されたのを機に未払い賃金の請求(残業代の請求)を
裁判所に訴えた。
→ 懲戒解雇についての争いはない
そして、裁判所の判断は以下となったのです。
〇 営業手当は営業実績として支払っているため、残業手当の見合い分では
無い。
〇 30時間を超える残業時間の時に差額を清算していた実態が無い。
〇 営業手当は残業見合い分の手当ではない。
→ 会社側が敗訴となった
なぜこの結果になったのか詳細をみてみましょう。
会社は賃金規定に「営業手当は残業時間30時間見合い」と規定してあった
ので、Aに支払った賃金のうち、営業手当は30時間分の固定残業代である
から、残業代の基礎となる手当ではないと主張しました。
しかし、裁判では勤怠管理等が詳細に調査され、会社で管理していた社員A
の出勤日数、出勤時間等の記載が実際の労働時間が反映されていたものでは
なかったのです。
そして、裁判所の判断は
〇 会社は労働時間の管理を行った様子がない
〇 月30時間を超える時間外労働に対し、残業代の支払いを行って
いない
→ オーバー分の残業代の支払う意思が無いと考えられる
〇 営業手当は営業成績に応じて減給する旨の記載がある
→ 営業手当の性質が残業の対価としての性格を有していない
として、営業手当は残業手当見合いではないとしたのです。
以上のように、就業規則や賃金規定に「定額支給の残業手当」を記載しても
実際の細かな運用で否認されることがあるのです。
では、定額の残業手当(固定残業手当)を支払っている会社はどのような
対応を行えばよいのでしょうか?
定額の残業手当(固残業手当)の支給が認められる要件として、
次の3つは必須項目となっています。
〇 一定時間の残業手当を算入される旨が雇用契約上で明確である
〇 支給時に支給対象の時間数と残業手当の額が労働者に明示されること
〇 残業手当に対応する残業時間を超えて残業が行われる場合は別途上乗せ
して残業手当を支給する旨があらかじめ明らかにされていなければ
ならない
この項目を雇用契約上明記し、また就業規則(賃金規定)で定めて、
忠実に運用しない限り、定額の残業手当(固定残業手当)は法的に
認められないのです。
定額の残業手当(固定残業手当)の制度を採用する会社の実情として、
定額の残業手当(固定残業手当)に対する時間を超えた残業に対する
適正な時間外手当の支払いがなされていないケースが多いです。
この場合、定額の残業手当(固定残業手当)の性質が否定されてしまい、
この分の手当が残業手当に充当されず、かつ、割増賃金の算定基礎に
算入されてしまうのです。
こうなると、甚大な影響が生じる可能性が高くなるのです。
だから、定額の残業手当(固定残業手当)制度を運用するのであれば、
慎重な取扱いが必須となってくるのです。
また、定額の残業制度を運用するにあたって、月額の時間設定についての
お問い合わせが多いです。
具体的な時間は36協定で定めた時間内に設定することがおすすめです。
たとえば、月30時間等とすることが良いでしょう。
仮に、月80時間とした場合、行政の調査等で「過重労働の恐れがある」
と判断されてしまう可能性が高く、調査のリスクもぐっと上がってくる
のです。
最近の労働行政は「残業時間の抑制」「過重労働の撲滅」に力を
入れています。
この春から秋に置いて、私が立ち会った労働基準監督署の調査も
この点が重点的に見られていました。
数年前までは、残業に対し、未払い残業手当の有無が問題となって
いましたが、今は月の残業時間についても厳しくチェックされていました。
調査の頻度も上がっているようなので、もう一度、残業に対する運用の
見直しを行うことをおすすめします。
このような労務関連の情報を「メルマガよりも深く」解説し、
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「月刊 労務対策」(講師:内海正人)です。
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また、この内容は掲載日現在の法令や通達などに基づいておりますので、
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■編集後記
朝日新聞 12月13日より気になる記事がありました。
以下
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厚生労働省は、実際とは異なる虚偽の賃金や待遇を示して求人をした企業に
対する罰則を強化する方針を決めた。
好条件に見せかけて求人する手口への規制も強める。
13日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の職業安定分科会でこうした
方針が了承された。
職業安定法の改正案を来年の通常国会に提出する方針だ。
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ここまで
求人に対する規制強化も始まりそうですね。
また、メルマガの記事に記載させていただいた固定残業代についても
求人の時に「厳しくチェック」されるそうです。
ブラック企業、ブラック求人は生き残れない時代が到来したのです。
そんな中、まだまだ意識を変えられずに「残業がなくなったら会社が
つぶれる・・・」というお話も聞きます。
ここは社長が知恵を出して、乗り切るしかないですね。
日本全体でも生産性の向上が叫ばれています。
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