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2017年8月 8日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
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○ 社員の持病も会社のリスクとなります
○ 休職期間を誤ると大変なことに・・・
○ 労災なのか?持病なのか?判断が微妙ですが・・・
○ 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
では、今日は「会社が休業した場合、賃金をいくら支払うのでしょうか?」
を解説します。
会社は、設備の故障、材料の調達不足、指導による営業停止など、
理由は様々ですが何らかの事情が発生し休業を余儀なくされること
があります。
このような休業が発生した場合、そこで働く社員の人達も働くことが
できなくなります。
会社が休業することは、社員側からすれば何の責任のない休みなので、
休業が発生し働く機会を奪われてしまった社員に対して賃金が支払われ
ないのはおかしいです。
会社側の都合で休業が発生した場合にその休業期間中の賃金の請求が
できるか、という点が問題となりますが、
会社都合の休業の場合には、社員等に対して賃金の「全額を負担
しなければならないのか?」それとも「賃金の6割を支払えば良い
のか?」どうしたらよいのでしょうか?
賃金全額を負担しなければならない場合と6割で良い場合の
違いについてみてみましょう。
● 賃金全額を負担しなければならない場合
→ 民法536条2項(債務者の危険負担等)
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債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなく
なったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。
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分かりやすく言えば「会社の責任で労働者が労務を提供できない場合
には、労働者は実際に働いていないとしても会社から賃金をもらう
権利がある」ということです。
そこで、「会社の責任とは具体的にどのような場合をいうのか?」と
いうことです。
これは「故意、過失または信義則上これと同視すべき事由」がある場合
ということになります。
具体的にどんな場合を想定しているのか?というと「会社の経営陣が
不正を行ったために行政上の営業停止処分を 喰らって休業せざるを
得ない」ときなどです。
逆に使用者の責めに帰さない場合には次のような場合です。
〇 天災事変、どうにもならないような経営情勢などの不可抗力
〇 労働者に責任がある場合
つまり、休業と言ってもいろいろな理由があるというわけで、
多くのケースでは、結局のところ、会社の経営責任を問われて
賃金の全額の支払いを求められる可能性があるかもしれません。
それなら、ほとんどの場合、賃金全額を支払わなくてはならない
ということじゃないか?と考えられますが、賃金の6割を支払えば
良いとはどういう場合でしょうか?
● 賃金の6割を支払えば良い場合
→ 労働基準法26条
----------------------------------------------------------------------
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、
休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当
を支払わなければならない。
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以上のようになっています。
どこが違うかというと、「使用者の責め」の「程度」が異なるという
ことです。
これに関する裁判があります。
<ノース・ウェスト航空事件 最高裁 昭和62年7月17日>
〇 労働組合が、要求の貫徹を目指してストライキを決行しました。
〇 ストライキにより、会社は業務の一部を停止せざるを得ない状態
になり、一部の従業員の就労が不要になったため、その労働組合に
所属していない従業員に休業を命じました。
〇 その後、会社は休業した期間に対して賃金を支払いませんでした。
〇 休業を命じられた従業員が、会社の責任で休業したものと主張して、
民法第536条第2項に基づいて、賃金の支払いを請求しました。
〇 また、賃金の全額の支払いが認められないとしても、労働基準法
第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当するものとして、
休業手当の支払いを求めて、会社を提訴しました。
そして、最高裁は以下の判断をしたのです。
〇 ストライキは民法536条2項の「債権者の責め帰すべき理由」には
当たらない。
〇 労基法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」にもあたらない。
〇 ストライキに参加しなかった従業員が休業せざるを得なかった
としても、使用者に責任があるとはいえず、労働者の賃金請求権、
休業手当ともに労働者の請求権が有るとはいえない。
〇 会社は賃金も休業手当も支払う必要なし
→ ストライキは、労働組合の主体的判断とその責任に基づいて
行われたものとして、会社に起因するものではない
そして、この裁判は次の考え方を示しています。
「本条(労基法26条)の休業手当の制度は、労働者の生活保障という
観点から設けられたものであることを考えると、本条の使用者の責に
帰すべき事由とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる
観点を踏まえた概念というべきであって、民法536条2項の債権者の
責に帰すべき事由よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害
を含むものと解される。」
これは判決文のままですが、言い換えると以下となります。
労働基準法で支払うように命じている休業手当とは、民法の使用者の
責よりも程度をゆるく設定していて、労働者の生活保障という目的に
あります。
仮に、経済状況が悪化していることが直接の理由で休業したと
しましょう。
確かにこの場合、民法でいうところの「故意、過失それに類する事案」
とまでは言えないでしょう。
だから、会社の責任であるととらえて、労働者に対して少なくとも
平均賃金の6割の支払うように求めているのです。
すなわち、「会社に故意や過失があったとまでは言えないけれど、
経営に関する障害が生じたことは確か」なのです。
従って、「労働者に対して、労基法での最低限の補償をしてください。」
ということなのです。
さらに、就業規則を作成するときに、休業に関する規定を盛り込むこと
が重要です。
参考条文を載せておきました。
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会社の責に帰すべき休業により就業できなかった場合には、
平均賃金の6割を支払う
----------------------------------------------------------------------
会社の都合で休職となった場合の賃金が「全額なのか?」「60%なのか?」
法的な判断はケースバイケースとなるでしょう。
しかし、事前に規定に記載しておけば、誤解の余地が減り、トラブルの
リスクが下がっていくのです。
皆さんの会社の就業規則はどのような記載となっていますか?
これを機に見直してみて下さい。
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■編集後記
私が小学生だったころ、近所に珠算塾があり、そろばんを習いに
通っていました。
しかし、どんなそろばんの計算をしたのかは全く覚えていないのですが、
8月8日が「そろばんの日」と言うのは今でも覚えています。
8月8日は「パチパチ」でそろばんをはじく音から、この日が
そろばんの日となったと記憶していますが、インターネットで調べたら、
これ以外にも沢山の日でした。
屋根の日、ヒゲの日、ヒョウタンの日、 タコの日、笑いの日・・・。
今日は、いろいろな「記念日」なのですね(笑)。
休憩時間は労働時間では無いはずですが・・・ | 事業所を閉鎖しても解雇はできないのですか?
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