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2017年8月29日 投稿者:社会保険労務士 内海 正人
おはようございます、社会保険労務士の内海です。
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では、今日は「期間途中で退職した社員への賞与支払いについて」
を解説します。
給与支払いの期間の途中で退職した社員への給与は、日割り計算
を行い、働いた分だけ支払う事となっています。
この場合、計算する際にどのような方法で計算するのか、ご質問を
受けるケースがありますが、これは賃金規定で計算式を明記しておく
ことをおすすめします。
例えば、以下が1つの例となります。
----------------------------------------------------------------------
(欠勤等の扱い)
第○条 欠勤、遅刻、早退及び私用外出をした場合の時間については、
原則として1日又は1時間当たりの賃金額に欠勤、遅刻、早退及び私用
外出の合計時間数を乗じた額を差し引くものとする。
ただし、賃金計算期間の全部を休業した場合は、賃金月額のすべてを支給
しないものとする。
(中略)
欠勤控除
基本給÷1ヵ月平均所定労働日数×不就労日数
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このように明確にしておけば、問題が生じる余地がなくなります。
しかし、賃金支払いのルールがアバウトであったり、賃金規程
そのものが無かったりと、中小企業はかっちり運用できていない
ケースも散見されるのです。
さらに、賞与等の場合はいかがでしょうか?
賞与の場合、給与と異なり、金額も大きく、また、支給そのものが
必ず払われる性格ではない場合もあるので、ご相談を受けるケースが
多くあります。
賞与の支給について、査定等の期間が半年等と長期にかかる場合が
あるので、その間に退職をする社員が発生することがあります。
この場合、既経過分についての支払いの扱いをどのようにするのかが
問題となるケースがあります。
これに関する最高裁の判断があるのでみてみましょう。
<大和銀行事件 最高裁 昭和57年10月7日>
〇 銀行は年2回賞与を支給していた。
→ 毎年2回、6月と12月に賞与を支給
〇 行員が銀行を退職したのですが、賞与は従来から、その支給日に
在籍している従業員に対してのみ支給してきたため不支給となった。
〇 行員が退職する前に、銀行は労働組合の要請を受けて、慣行を明文化
するために、就業規則を改訂した。
→ 賞与は支給日に在籍している者に対して支給することを定め、
全行員に周知した
○ 行員は、賞与の支給対象期間に勤務していたので、賞与は支払われる
べきだと主張し、賞与の支払いを求めて銀行を訴えた。
そして、最高裁は以下の判断を下したのです。
〇 銀行は就業規則を改訂する前から、年2回の決算期の中間時点を
支給日と定めて、その日の在籍している者に対してのみ、賞与が
支給されるという慣行があった。
○ 支給日に在籍していることを要件として定めた就業規則の改訂は、
労働組合の要請によって慣行を明文化したものである。
〇 内容については合理性がある。
○ 行員は退職した以降の賞与について、受給権はない。
この裁判を詳しくみていきましょう。
銀行は就業規則を改訂する前から、支給日に在籍していない行員には
賞与を支給していませんでした。
そして、これは慣行として存在していたと判断されたのです。
さらに、労働組合の要請で明文化され、「賞与支給日に在籍しない行員に、
賞与は不支給」と明らかになったのです。
なお、他の会社においては、慣行が存在していたと認められるかどうか
という問題になりますが、就業規則に支給日在籍要件を明確に定めて
おけば、ここは問題にはなりません。
もちろん、既に退職した従業員にも賞与を支給するという会社については、
支給日在籍要件の記載は不要です。
なお、賞与は、支給対象期間中の会社の業績や勤務成績等を評価して、
支給額を決定している会社が一般的です。
賞与をこのように「後払いの賃金」と位置付けると、支給日に退職している
かどうかに関係なく支給対象期間に在籍していれば、支給義務があると
考えられます。
しかし、賞与は、「将来の勤務を期待して支給する」という意味合いも
大きいのです。
また、労働基準法等により、賞与は支給が義務付けられているもの
ではありませんので、差別的な取扱いでない限り、会社が自由に決定する
ことができます。
ただし、決算賞与を支給する場合、もしくは年1回の賞与支給が
決算賞与の性質として税務上処理されている場合、賃金規定に賞与の
支払いを明記する場合に注意が必要となります。
まず、決算賞与を未払金として計上し、今期の経費にするためには、
下記の3つの要件を満たす必要があります。
1、決算賞与をもらう従業員ごとに、かつ、同時期に決算賞与を
もらう従業員の全員にその賞与の額を期末までに知らせていること
2、翌期1ヶ月以内に実際に支払うこと
3、その決算賞与の額を経費として処理していること(仮払金などは×)
ただし、法人税基本通達9-2-43に
--------------------------------------------------------------------
支給日に在職する従業員のみに賞与を支給することとしている場合、
上記1の要件を満たすことにならない
--------------------------------------------------------------------
と書いてあるのです。
また、結果として、期末までに決算賞与額を通知した従業員で、
支給日までに退職した人は誰もいなかったとしても否認されてしまいます。
つまり、全員が上記の3要件を満たし、決算賞与を支給して
要件が満たされ、決算対策となるのです。
→ 決算賞与を未払金に計上し、節税する
なぜならば、上記1にあるように
--------------------------------------------------------------------
決算賞与をもらう従業員ごとに、かつ、同時期に決算賞与をもらう
従業員の全員にその賞与の額を期末までに知らせていること
--------------------------------------------------------------------
が要件だからです。
もし、通知日以後、支給日までに退職する社員がいた場合、
支給日に在職していないと決算賞与をもらえないことになるので、
この要件を満たさなくなってしまうのです。
そこで、「賞与の支給は支給日に在職」という要件があったとしても、
決算賞与を未払金に計上できる対策は以下となります。
それは、「賞与(決算賞与を除く)は 支給日に在職している社員に支給」
と記載しておくことです。
つまり、「支給日の在職要件は決算賞与以外の賞与に適用」
ということです。
こうしておけば、決算賞与には支給日の在職要件が無いので、
決算対策となるのです。
このように、賞与の支給する性質により、支給の要件が異なること
があるので、通り一遍の条文では対応できないことがあるのです。
また、就業規則はあるものの法改正に対応できておらず古いまま
であったり、会社のリスクに配慮した形式になっていないことは
よくあります。
この1文さえ就業規則にあれば、会社を守ることができたのに・・・。
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■編集後記
先週の月曜日(8/21)ですが、時事通信から気になる記事が
上がっていました。
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残業時間の上限が月平均で60時間に規制されると、残業代は最大で
年8兆5000億円減少する―。
大和総研は、政府が掲げる働き方改革で国民の所得が大きく減る
可能性があるとの試算をまとめた。
個人消費の逆風となりかねないだけに、賃金上昇につながる労働生産性
の向上が不可欠となりそうだ。
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働き方改革で、残業規制等が強化されたら、「多く働きたい人は
どうなるの?」、「働かない改革?」などと言う話が現場から聞こえ
始めていました。
一言で「生産性向上」と言っても効率的に付加価値をあげる事は
至難の業でしょう。
このような記事がでると、「所得減」、「所得も制限される」などの
話が出てくるのではないでしょうか?
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